表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏の箱庭  作者: 天音凛
序章・黄昏の番人
5/133

2話.異世界

ツンデレ君(笑)

 真っ暗な視界の中で目覚めた。

 ゆっくり立ち上がって辺りを見回してみたが、漆黒の世界は静まり返っている。


「誰か居ませんか?」


 ――ヒナタの声だけが響いた。


 ここは何処なんだろう?

 あまり不用意に動かない方が良いかもしれないけど、長くここに居る訳には――え?


 どうしようか悩んでいると、後ろに気配を感じた。

 慌てて振り返ると、そこには仮面を着けた人物が静かに立っている。

 暗くて性別などは分からないが、背は私より少し高いようだ。


「あの、すみません」

「……」

「ここが何処なのか知ってますか?」

「……」

「……」


 勇気を振り絞って声をかけたが、その人物は喋らないどころかピクリとも動かなかった。

 暗い視界の中で冷たく光る白い仮面だけが、そこにあるようにも感じる。


 喋ってくれない……聞こえてると思うんだけど、どうすればいいんだろう……挨拶からとか?


 また声をかけようか迷っていると、その人物は歩きだし、横を通りすぎて行こうとした。


「待って下さい!」


 慌てて腕を掴んで引き留める。

 この暗い世界で自分以外の人物はこの人だけだ。

 置いて行かれるのだけは、阻止しないといけなかった。


 腕を掴まれた人物は振り返り、ヒナタの手を掴んで引き剥がした。


「案内するように言われているし、そんなに必死にならなくても置いて行かないけど」


 淡々とその人物は言った……喋れるようだ。

 少しだけ、最初から喋って欲しかったとか思う。


「えっと、誰に言われたんですか?」

「どうでもいい」


 私の質問には答えず、スタスタと歩き出してしまった。

 どうやら性格はあまりよろしくないらしい。

 もしかして、これが世に聞くツンデレの気質――デレはまったく無いけど……。


「何その顔。今、失礼な事考えたでしょ?」

「えっ? そんな……まさか」


 考えていません、と言い訳しても相手の機嫌は悪くなったみたいだ。

 “あんた嘘つきだね。置いてく”と足早に歩き始めたその人物を慌てて追いかける。


 声は中性的だけど、長い髪を後で三つ編みにしているし、女の子かな……年齢も近いかもしれない。


「……あんたさ、顔によく出るよね」

「えっ、女の子とか思ってませんよ?」

「思ってたのかよ!」

「あ」


 墓穴をほってしまった……

 失敗、失敗。


「じゃあ、男性なんですね。あの、ちなみに名前は何ですか? 私は、青葉ヒナタっていいます。今日で17歳になりました」

「あんたの情報はいらないんだけど。さっきまでの不安な顔は何処にいったわけ?」

「独りではなくなったので、大丈夫です」


 そう言って笑えば嫌そうにされた。

 仮面を着けていて表情は分からないが、渋い顔をしているのかもしれない。


 私の質問は相変わらずスルーして足早に歩く仮面の人物に必死に付いていく。

 ちなみに、男性だと勝手に思うことにした。


「仮面君、後どれくらいで到着しますか?」

「やめろ」


 素早いツッコミが入る。


「でも仮面君、名前がないと呼びづらいですし……」

「……」

「だから、仮面君でいいかなって……」

「……っ」

「いいあだ名だと思いますよ? 仮面君」


 仮面君と呼ぶたび彼の身体がピクピクした。

 あれ? 怒ってる……?


 盛大な溜め息が聞こえた。


「――えんじゅ

「えっ?」


 彼はそれだけ言うと、暗がりの中に浮かぶ何かに触れた。

 ――槐。

 もしかして、名前?

 もう一度確認しようと彼に近付くと、暗い空間に淡いオレンジ色の光が現れた。


「綺麗……」


 光は数を増やし、ヒナタの身体を中心に回り始める。


「――ここがあの人の始まり」

「あの人?」

「じゃ、俺が案内出来るのはここまでだから、後は自分で何とかしてよ」


 またまた質問はスルーである。

 光は強く輝きながらヒナタの身体を包み込み始めた。


「えっ? 待って! 仮面君は?」

「――はぁ……せっかく教えたのに、覚える気ないでしょ」

「あぁ、やっぱり名前だったんだね」


 仮面君……槐君は呆れたように頭を軽く振った。

 おそらく、小馬鹿にしているような表情をしているに違いない。


「それしかないでしょ。ちなみに、一緒には行かないから」

「待っ……!」


 “せいぜい頑張ってよ”――槐君の言葉を最後に、私の視界はあっという間に光に包まれた。



 ***



 強く何処かに引っ張られる感覚の後に、私はオレンジ色の世界に放り出される。


 美しく橙色に染まる空。

 ヒナタの身体もこの世界の色に照らされている。

 ゆっくりと落ちていく感覚の中、何故か懐かしさで一杯だった。


「黄昏」


 ――お帰り……ヒナタ。

 風に紛れて囁きが聞こえた気がした――。














ツンデレな槐君です。

ヒナタと出来るだけ絡ませたい……。

私的に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ