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黄昏の箱庭  作者: 天音凛
第二章・朔~秘めたる大華、君に捧ぐ~
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転-4.二度目の揺らぎ

何ヵ月ぶりの投稿です……

 廊下を見渡しても朔さんは見かけないから、無事に部屋には行ったみたい。

 それにしても、部屋が遠いんだよね。

 朔さんの事だから、いつでも駆け付けられる位置に居たいと思ったのに……何故か昴さんの部屋から一番遠い位置にあるような気がする。


 色々考えていると、廊下の一番端の部屋にたどり着く。

 軽くノックをしたが中から音はなく、扉が開く気配は全く無かった。


 困ったな……とりあえず、部屋の中に居ることぐらいは確認しないと駄目だよね。

 ――あれ、鍵が開いてる。


 ヒナタが試しにドアノブを回すと、簡単に扉が開いていく。

 ゆっくりと確認しながら中に入り辺りを見回すと、朔らしいシンプルな部屋がひろがった。

 小さめの机と椅子が端にあり、その横にタンスが置かれている。

 奥にも1つ部屋がありそうだが、おそらくシャワー室のような感じで、全体的に最低限の事をするための部屋であった。


 えっと……朔さんは――って、朔さんうつ伏せになってる!


 ヒナタが窓際のベットに近付くと、朔がうつ伏せの状態で倒れ込んでいて、やっとのことでベットにたどり着いた状態のようだった。


 とりあえず、仰向けにして……うわっ! 朔さんの体熱い!

 汗もかなりかいてるし、着替えが必要かも……。

 今、蛍達は忙しいし――……いや、恥ずかしがる事ないよ!

 えっと、体を拭くものを用意しなきゃ。

 ひとまず、上だけ……下は蛍達に頼もう。


 ヒナタは一人、呪文を唱えるように“看病”と言いながら、朔の服を上だけ脱がし、濡れたタオルで軽く体を拭いた。

 じっくり見るつもりはなかったが、以外にもバランスよく引き締まった体が視界に入り、ヒナタは顔を真っ赤にしながらも何とか服を着せる。

 全てが終わり、朔をベットに寝かせて頭に冷えたタオルをのせる頃には、ヒナタの方が熱で倒れそうであった。


 終わった……顔、多分真っ赤だよ……。

 あぁ、目を閉じれば、何故だか煌君と槐君が揃って何か言ってる……え、何? 聞こえない――――。


『変態』


 ちよっ、違うよ二人とも!


「……ヒナタさん、何をして……」

「!」


 ヒナタが顔を真っ赤にして必死に否定していると、怪しむ声が聞こえてきた。

 慌てて目を開けば、呆れ顔の朔がこちらを見つめている。


「朔さんっ、お、起きてたんですか?」

「騒がしくする方がいましたからね」

「……」

「……」


 騒がしい人……私、だよね……あはは、は、は。

 ――でも、よかった……だいぶ顔色が良くなってる。


 ヒナタがほっとしながら、ベットの横にあった小さな椅子に座り直すと、その様子を朔はじっと見つめ、それから自分の上半身に視線を移した。


「貴女が着替えさせてくれたんですか?」

「あ、はい。すみません……汗で体が冷えてしまいそうだったので……」

「ヒナタさんに助けられる日がくるとは思いもよりませんでした……ただ、貴女も倒れたのですから無理はしないで下さい」

「大丈夫です! 昴さんのご迷惑になるような事はしませんので、安心してください! 今はなんともないので、掃除の続きもお夕飯も出来ます」


 力強いヒナタの言葉に、朔は一瞬呆気にとられたように動かなくなったが、ゆっくりと首を横に振る。


「いえ、そうではありません。私は後少ししたら回復します。貴女は体調がまた悪くなる可能性もありますから、今日はゆっくりして下さい」

「ちょっ、朔さん!?」


 起き上がり、ベットから出ようとした朔を、ヒナタは腕にしがみつく形で慌てて止める。


「離して下さい。状況確認をしておきたいのです」


 状況……確認……はっ! まだ、昴さんが転がされていたら、凄く大惨事になるっ!

 ――――煌君と蛍が!


 ヒナタは全力で朔の腕にすがり付く。


「ダメですよ! まだ熱があります!」

「……」


 そう、さっき昴さんに言ったんだ。

 戦力が無い私でもやれる事……朔さんの力になる事をやろう。


 ヒナタは真っ直ぐ、真剣な表情で向き合う。

 その様子に朔はゆっくりと力を抜くと、引き寄せられるようにヒナタの瞳を見つめた。


「ちょっと強引ですけど、昴さんに宣言しました。朔さんが昴さんを守るなら、私が朔さんの助けになります」

「……」

「確かに、私が出来る事は少ないと思いますが、今が役立てる時です。守るっていうのは、力だけじゃないって思いますから」


 ニッコリと朔に笑いかけると、朔は目を見開いた後すぐに困惑したような表情をうかべる。


「……――貴女も、ですか」

「朔さん?」


 朔は困ったような顔をしながら、ヒナタのしがみついていた腕を優しく解き、そのまま両手を包み込むように触れた。


「本当に困った人に出会ったものです。――貴女のような女性は……嫌いじゃないですけどね」

「!」


 ヒナタの瞳に、優しげな笑みをうかべる朔が映る。


 朔さんがこんな優しい笑みを見せてくれるなんて、前じゃ考えられなかったな……。

 凄く暖かくて、懐かしいような笑顔だ。

 ――――皆が出来るだけ笑える時間を作ろう……やっと、この世界で私が出来る事が見つかった気がする。


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