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黄昏の箱庭  作者: 天音凛
第一章・蛍~忘れること無かれ、君との思ひ出~
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小話. 蛍3~悲哀の記憶~

 小さな頃からずっと一緒だった女の子。

 大事で、大事で――大好きで……。


 不思議な世界で出会った男の子。

 儚くて、掴んでないと――消えそうで……。


 三人で毎日笑って――幸せで、幸せで……。


 ――アイツが、攫いに来るまでは。


「逃げて、お願い……捕まっちゃう」

「どうして? あの人、悪い人じゃないよ」


 女の子が悲しげな表情をする。


「駄目だ……あれは、人間じゃないんだ。ここに居たら、もう俺と蛍に会えなくなる」

「急いで」


 嫌がる女の子を空間に開けた穴に押しやる。


「これで会えなくなる訳じゃないから……記憶がなくなっても、きっと……また、会えるよ」

「――だから、逃げるんだ」


 女の子の姿が完全に消えると、男の子は素早く穴を塞ぐ。

 その様子を見届け、僕は地面にしゃがみこんだ。


「……きっと、僕達の事忘れちゃう」

「――泣くな、蛍。たぶん、お前も記憶が消えるかもしれない……でも、俺は二人を忘れないから」

「それ、寂しくないの……独りだよ」


 僕の言葉を聞き、普段笑い方が下手な男の子が、穏やかに微笑んだ。


「大丈夫だ。二人が笑っているなら、俺も笑える。――ずっと、見てるから。だから、笑え」


 僕の瞳に男の子の微笑みが焼き付く。


「うん……僕、その顔忘れない。もう、行って。アイツが……来る」

「あぁ、またな――――蛍」


 男の子の姿が煙のように消え、その場に僕は独り佇んでいた。

 心の中で、寂しさと哀しさが入り交じっていると、僕の背中越しに現れたそれは、ゆっくり僕に近付く。


「――あの娘を何処に、やった? お前の罪は重いぞ……」


 暗い声と共に、僕の頭は鷲掴みにされ、端からガラスが割れるように何かが消えていく。


「だ、いじょうぶ……また――――会える」


 僕の頬を涙が伝う。

 それでも微笑みは残ったままだ。


 ――笑え、笑え。

 いつかまた三人で笑い合える日が来るまで。

 僕、ずっと、笑っているよ――――。


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