小話. 蛍3~悲哀の記憶~
小さな頃からずっと一緒だった女の子。
大事で、大事で――大好きで……。
不思議な世界で出会った男の子。
儚くて、掴んでないと――消えそうで……。
三人で毎日笑って――幸せで、幸せで……。
――アイツが、攫いに来るまでは。
「逃げて、お願い……捕まっちゃう」
「どうして? あの人、悪い人じゃないよ」
女の子が悲しげな表情をする。
「駄目だ……あれは、人間じゃないんだ。ここに居たら、もう俺と蛍に会えなくなる」
「急いで」
嫌がる女の子を空間に開けた穴に押しやる。
「これで会えなくなる訳じゃないから……記憶がなくなっても、きっと……また、会えるよ」
「――だから、逃げるんだ」
女の子の姿が完全に消えると、男の子は素早く穴を塞ぐ。
その様子を見届け、僕は地面にしゃがみこんだ。
「……きっと、僕達の事忘れちゃう」
「――泣くな、蛍。たぶん、お前も記憶が消えるかもしれない……でも、俺は二人を忘れないから」
「それ、寂しくないの……独りだよ」
僕の言葉を聞き、普段笑い方が下手な男の子が、穏やかに微笑んだ。
「大丈夫だ。二人が笑っているなら、俺も笑える。――ずっと、見てるから。だから、笑え」
僕の瞳に男の子の微笑みが焼き付く。
「うん……僕、その顔忘れない。もう、行って。アイツが……来る」
「あぁ、またな――――蛍」
男の子の姿が煙のように消え、その場に僕は独り佇んでいた。
心の中で、寂しさと哀しさが入り交じっていると、僕の背中越しに現れたそれは、ゆっくり僕に近付く。
「――あの娘を何処に、やった? お前の罪は重いぞ……」
暗い声と共に、僕の頭は鷲掴みにされ、端からガラスが割れるように何かが消えていく。
「だ、いじょうぶ……また――――会える」
僕の頬を涙が伝う。
それでも微笑みは残ったままだ。
――笑え、笑え。
いつかまた三人で笑い合える日が来るまで。
僕、ずっと、笑っているよ――――。




