転‐6.激昂なる時間-1
蛍初戦闘!
槐はチラリとヒナタを見て、左手で後ろに下がるように合図を送る。
ヒナタは急いで木の影に身を潜めた。
槐君、一人で大丈夫かな? 三人でも大変なのに……。それに堕ち人の体がスライムみたいだから、槐君の武器とは相性が悪いかも……。
ヒナタが心配して見ていると、槐は蔓を鞭のようにしならせ、堕ち人に素早く打ち付ける。
一回、二回、と回りの木々を利用しながら、的確に当てていく。
堕ち人の攻撃は先程と同じく荒く、腕を滅茶苦茶に槐に向かって振り下ろした。
それをバク転して軽々かわしている。
「オォオオオッ! ギガガアッ!」
「ほら、どうしたわけ? その程度?」
槐の素早い動きに、堕ち人の攻撃はますます激しくなっていき、違う触手のような物まで出して攻撃していた。
挑発して私に注意がいかないように引き付けてくれてるんだね……。
――――ん?
ヒナタの目の前を一枚の葉がヒラヒラ落ちる。
風も吹いてないのに――――
ゆっくりヒナタが上を見上げると、赤い髪が揺れるのが見えた。
「騒がしいとか思ったら、アイツかよ」
「煌君!?」
木の枝に煌が立っており、槐と堕ち人の戦いを見つめていた。
「やっと、見付けた……ヒナタっ」
「えっ!?」
上を見上げていたヒナタは、突然後ろに強く引かれて抱き締められる。
その腕は僅かに震えていた。
「ほ、蛍!?」
「ヒナタごめん、傍に居なくて……ごめんね」
うっ……攫われた時、抵抗してないから、すごい罪悪感がヒシヒシだよー!
別の意味でヒナタが顔を青ざめさせていると、横に昴と朔が近付いてくる。
「足止めするとは、堕ち人も役に立つじゃないか」
「左様でございますね、昴様。……ヒナタさんも相当運が良いようですね」
「こんなに顔を青くして、恐いんだね。すぐに、“君を攫ったヤツごと”堕ち人を始末して帰ろう」
蛍はヒナタの肩に手を置き、極上の優しい笑顔を向ける。
……物騒な事言ってるのに、キラキラ笑顔すぎるっっ! しかも、手! 力入り過ぎ!
朔さん、私はとてつもなく――運が悪いんです!
そんなヒナタの思いも虚しく、朔は眼鏡を軽く直しながら小首を傾げる。
「貴女に対して怒ってないですから、大丈夫ですよ。蛍は貴女をとても大事に思ってますから」
と、言いつつもあからさまな溜め息をついて、“ヒナタさんの扱い方を考えないと、蛍が怒って大変ですね。”と呟いていた。
「まぁ、いい。今は先に堕ち人だ。蛍、力を見せろ」
昴がスラリと刀を抜き、堕ち人に向かって行く。
それを合図に、木の枝に居た煌も素早く飛び降りて昴に続き、朔も走り出す。
「ここに居てね」
蛍はヒナタに微笑むと、手を前にかざす。
蛍の手から光が現れて集まり、一つの形に成形された。
これって……この形は――――。
光が収まり蛍の手に握られた一本の長い棒。
その長さは、蛍の背より長い。
先端から横にカーブしてのびる、鋭利な刃が見えた。
底冷えする輝きが、蛍の顔を美しく照らす。
「この鎌が僕の相棒だよ。……じゃ、行ってきます」
蛍は鎌を振り上げながら高く跳ぶと、そのまま堕ち人に向かって振り下ろした。
――当然、槐ごと切り裂かんばかりに。
それに気付いた槐は、蛍の鎌を軽々避けて距離をとる。
「やってくれるじゃん……」
「残念、一石二鳥だったのに……ふふっ」
ほ、蛍……槐君は殺らないで!
――なんて言えない……口が裂けてもっっ!
ヒナタは震えながら、槐めがけて鎌を振るう蛍を見ているしかできなかった。
蛍編も終盤ですねぇ……




