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黄昏の箱庭  作者: 天音凛
第一章・蛍~忘れること無かれ、君との思ひ出~
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転‐5.再来

お待たせいたしました。(汗)

 槐はヒナタを横抱きにして、森の中を素早く移動していた。

 時おり後ろを気にするように振り返りながら、器用に木の枝を飛び移っている。


 さすがにそろそろ四人に気付かれそうだけど……。


「槐君大丈夫?」

「……待って」


 そう言うと槐は地面に降り立ち、横抱きにしていたヒナタをそっと腕から降ろした。

 何かを探るように館の方角を見ている。


「何か、嫌な予感するし急ぐよ」

「ん? 嫌な予感? ――って! ま、待って槐君!」


 ヒナタを待たずに、スタスタ歩いて行ってしまう槐を慌てて追いかける。


 うぅっ、槐君速いんだから……こうなったら!


 ヒナタは槐の手に狙いを定め、駆け寄り――――


「えいっ!」

「…………何で、僕の手握ってるわけ?」


 あれ……驚かない? “うわぁ!”とか言わないんだ。

 ちょっと、がっかり。


「残念そうな顔しないでくれる? さっきより全然マシなんだから、驚かないし」

「そっか、慣れたんだね!」

「……何か、嬉しくない」


 槐君は優しいなぁ~納得いってないみたいだけど、しっかりと手を握ってくれてる。

 嬉しくて手を軽く揺らすと、“子供みたいなことしないで”とか言われたけど、手は繋いだままでいてくれた。


「槐君、後どのくらいで着くのかな?」

「後、半分くらい。さっきみたいにアンタを運んだらすぐだけど……」

「そっか! じゃあ――」


 ヒナタが話している途中、突然“キーン”と、か細い音が辺りに響く。


「槐君、変な音がする」


 槐にもその音は聞こえるようで、辺りを警戒し始める。

 不思議な音はしだいに大きくなり、ノイズのような音まで響き始めた。


 ノイズ……まさか……この音――。


 ヒナタは顔を真っ青にしながら、ゆっくり自分達の真上を見上げる。

 ――――その先に、音の原因があった。

 空間を歪める黒い、何かが。


「え、んじゅ、く、ん……」


 オレンジ色の空間に線が入り始め、ゆっくり左右に裂けていった。

 槐は素早くヒナタを抱えて後ろに下がり、そのまま来た道を一直線に駆け戻って行く。


「槐君!? そっちに戻るの!?」

「……っ多分、逃げ切れない!」


 槐が叫んだ瞬間、何かが割れる音と共に、辺り一面が灰色に染まった。

 全てがスローモーションのように時間が流れる。


 嘘……あれってもしかして、煌君達が逃げられた――――。


 空間を割って侵入したのは、黒い塊。

 そこから“人の腕の形をしたもの二本”と“脚の形をしたもの二本”を生やすと、獣のように四本で上体を起こした。

 “ジジッ……ガガガ……”とノイズが鳴ると、黒い塊に人面が浮かび、逃げるヒナタ達を見つめてニィッと笑った。


「あの時の堕ち人っ!」

「ちょっ、声出すとかありえない!」

「もうこっち見てたから!」

「グ……ギャ……ァァァアアアアアアアアアッ!!」


 まるで咆哮のように叫ぶと、地面を激しく抉りながらヒナタ達に向かって突進していく。

 バキバキと木をなぎ倒し、四本の腕と脚はバラバラに激しく動いている。


「槐君! 何とかならない!?」

「何とかならないから逃げてるんだよ! 堕ち人は奈落の民が操ってるわけじゃないから!」

「そっか……」

「ちょっ! しっかり掴まってよ! 落ちても回収しないから!」


 もしかして私が居なかったら……槐君だけなら逃げられるんじゃないかな。


 槐のヒナタを抱き締める力が強くなる。


「槐君?」

「馬鹿な事、考えないでよ。何のためにわざわざこっちに来たと思ってんの?」


 ――――もしかして……。


「流石にそろそろアイツらと合流するはずだし。取りあえず堕ち人を何とかするために、今は(・・)だよっ!」

「ひゃっ!?」


 話の途中で槐は勢いよく真横に飛びのき、ヒナタを抱えたままクルリと着地する。

 ヒナタが顔を上げ辺りを見渡すと、槐達が元居たその場所の木が一瞬でなぎ倒され、砂埃が舞っていた。

 槐はヒナタを支えながらゆっくり立ち上がる。


「ガガッ……アガァ!」


 四本の腕と脚で空気を裂きながら、砂埃から堕ち人が姿を現した。

 人面は相変わらずニィッと笑い、ヒナタを凝視している。

 その視線からヒナタを隠すように槐が前に出た。


「ホントお前、邪魔」


 槐は手を仮面にかざす。

 すると白い仮面に蔓の模様が浮かび上がり、槐の手に一本の黄緑色の蔓が収まった。

 そのまま挑発するかのように、その手を堕ち人に向ける。


「消えてもらうよ」

「ガアアアアアアアアアアアアァァァアァァアアァッッ!!」


 辺り一面に空気を震わす叫びが響き渡った。



次は蛍ターン予定です、はい。


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