表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏の箱庭  作者: 天音凛
第一章・蛍~忘れること無かれ、君との思ひ出~
23/133

転‐4.誘い

やっぱり、このキャラ好きだな……。

「ねぇ、聞いてる?」

「はっ!」


 目の前に居る人物が現実なのか分からず、ボーッとしちゃった。

 え、本物?  本物の――――。


「槐君ーーーー!」

「は?」


 感動のあまり本能のまま、槐君目掛けて走り寄る。

 槐君が呆気に取られたような声を出したけど、全然気にしない。

 何だか凄く会いたかった気がしたからだ。

 そのままギュッと――――!


 “バシッ”といい音がした。


 あれ、前に進めない? と言いますか、痛い。


「何、しようとしてるわけ?」

「イタタ……」


 槐は抱き着こうとしたヒナタの頭を片手で押さえ、ギリギリと握る。


「ちょっ、加減して……痛い」

「アンタが馬鹿な事しないならね」

「分かったから! もうしないから! ついでに仮面の下も見えないかな~とかも、画策しないから!」

「……」


 余計に“ギリギリ”と手に力が込められた。

 何で!?


「はぁ、もういいよ。とにかく、抱き着かないで」

「うん、ごめん」


 ヒナタが答えると、頭から手が離れていく。


 怒られたけど、やっぱり落ち着くな~。


「アンタ何なの? ニヤニヤして気持ち悪い。それにいきなり抱き着こうとか、頭おかしくなった?」

「久しぶりに会ったのに槐君酷い。異世界初出会いに免じて許してくれてもいいのに」

「アンタやっぱりおかしいよ」


 間を置く事なく槐君にズバッと言われて、私の心が傷付いた。


 ヒナタがしょんぼりしていると、槐が居心地悪そうにソワソワし始めた。


「な、何? アンタ、僕が奈落の民って知ってるでしょ? だから、その僕に抱き着こうとしたのがおかしいって言ったんだよ! ……別に、アンタの全部が変って言ってないんだからな!?」


 ……槐君の手足がプルプルしてる。

 何か、赤い?


「槐君?」

「アンタがらしくないからでしょ! 変な事言わせないでくれる!?」

「あぁ、デレだね~」

「――ムカつく」


 そう言って槐の手がまた、ヒナタの頭に狙いを定めたかのように動く。

 それに気付きヒナタは笑いながら避けた。


「ちょっ、バカみたい! 遊んでるみたいじゃん」

「ごめんって、槐君。……でも、ありがとう。何だか元気でたよ」

「――――何? 何かあったわけ?」


 槐がヒナタを追いかけるのをやめ、気遣うように尋ねる。


「ううん、何でもない」

「ふーん……僕からみたら窓全開で不用心、だけど扱いは軽ーく軟禁みたいに見えるけど? 馴染んでないみたいだし」


 いや、窓はさっきそこから出たからなんだけどね?

 まぁ、言わないでいいか。


「確かに歓迎されてないけど、しょうがないよ。私が封印を壊す存在かもって思われてるから」

「……あぁ、あのバカのこと?」

「――えっと……誰?」

「赤髪」


 あぁ、煌君か……バカって、槐君も煌君もどことなく似てるんだけどね。

 言ったら怒るだろうけど。


「さっき、バカに最低な事言われてたしね。てっきりそれで落ち込んでるかと思ってたけど」


 そういえば、最後は聞こえなかったんだよね。


「“殺っときゃよかった”とか、あり得ないんだけど」

「――へ?」


 え? 煌君が言ったのってそれ?


「……何その“初めて聞きました”みたいな」

「だって、風で聞こえなかったから!」


 凄く、悲しい。

 歓迎されてないって分かってたけど、そこまでとは思わなかった。


 俯いて動かないヒナタに、槐は近付き顔を覗き込む。


「まさか、泣いてる?」

「――泣いてないよ。ショックなだけ」

「ウソつき! そんな泣きそうな顔してさ! 調子狂うでしょ!?」


 な、何だか槐君の方が大変そうだけど……。

 “どうする? どうしたらいいわけ?”とか、ブツブツ言ってるし――あぁ、やっぱりどんな顔をしているか見たいなぁ~。


「……いいよ」

「いいの!? 顔見て!」

「ばっ!? そっちじゃない!」


 ――なんだ、一瞬私の心が読めたかと思ったよ……ん? “そっち”って、何?


「そっち?」

「ここをか、貸してあげるって言ってんの! やりたかったんでしょ? さっきはダメって言ったけど、今なら――今だけだから!」


 “ここ”と槐が手を置いたのは胸であった。


 ――つまり、“胸を貸す”は“抱き着いていいよ”って事!?


「え、槐君ーーーー!」

「う、うわぁっっ! やっぱ、やめ――――!」


 槐君の言葉を遮り胸に飛び込む。

 突然だったから、槐君を押し倒すかと思ったけど、いざ抱き着くと何とか踏みとどまったようだ。

 ――女の子みたいに華奢だと思ったけど、男の子なんだな……。


「――っ! 今、失礼な事考えてたでしょ!?」

「……槐君、エスパーさんだったんだね~」

「何それ。そうやって……甘く見てると、痛い目みるよ――僕だって、男なんだ」


 槐は抱き着かれてさまよっていた両手を、ヒナタの背中にぎこちなく回す。


「ふふっ、分かってるよ。槐君ありがとう、とっても暖かいよ」

「全然分かってないし……僕ばっかり暑いし!」

「え、離れる?」


 “暑い”と言う槐にヒナタが離れようとすると、槐は背中に回した腕に力を込めた。


「槐君?」

「……ねぇ、今もあいつら僕がここに居る事気付いてないよ」

「分かるの?」


 “コクリ”と頷く槐君の動きを感じる。

 私の部屋に注意を向ける事がないからね……。

 私から何処かに行くとは思ってないだろうし、そもそも昴さんは近付くなって言うし、朔さんも昴さんと同意見。

 煌君は消えろって感じだし……。

 別に居なくなっても……あ、ちょっと悲しくなってきた。

 蛍は……封印を解いてから、笑顔が黒い。

 私を何故かかなり大事にしてくれるけど、笑顔が黒い。

 大事な事だから二回言う。

 あぁ、だからかな……槐君の胸は癒しかもしれない。


「――――ない?」

「え?」


 槐君の声が聞こえて、勢いよく顔を上げる。

 考え事に夢中で、槐君の言葉を聞いてなかった。


「何キョトンとした顔してるわけ?」

「ごめん、槐君の胸が凄く安心出来て全然聞いてなかった!」

「ちょっ、バカじゃないの!?」


 槐君は慌てたように、私の身体から手を放す。

 “男として、どうなのそれ”とか言ってるけど、槐君独り言多いんだね。


「あぁ、もう! “僕の所に来ない?”って言ったの! 色々あるけど、ここよりマシでしょ!? 荻と椿は、近付けなきゃいいし――――」


 え? 槐君と一緒に? 

 確かに、ここよりは……でも、全部が悲しい事ばかりじゃないし……。

 それに万が一出て行ったら……鬼のような四人の顔が浮かぶ。


 ヒナタが頭を抱えて悩んでいると、槐がヒナタに手を伸ばし、ふわりと抱き寄せる。


「槐君、あのね」

「いいよ、黙って。アンタは何も考えなくていいから――――このまま、攫われて」


 そう言った槐君の身体はかなり暖かい。

 槐君……悩む私の為に、言ってくれたんだね。

 でも、耳元で囁かれるように言われて――――。


「槐君」

「何?」

「何だかすっごく、ドキドキするよ」

「……今、それ、無しだから!!」


 槐君は仮面で見えない顔を隠すかのように、私を強く抱きしめていた。


 

次回、来ます。

――――闇夜で光る、蛍が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ