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黄昏の箱庭  作者: 天音凛
第一章・蛍~忘れること無かれ、君との思ひ出~
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承‐1.穢れ

本日、二話目ですね!

「頭の思考が残念なようで」


 着いて早々、朔さんに言われた言葉だ。

 玄関ホールの階段横にある、朔さんの執務室に駆け込み事情を説明した。

 すぐさま冷めた瞳で嫌味たっぷりに“残念な頭”発言。


 つまり、“貴女バカですね”である。


「いくら神に呼ばれたかもしれない貴女でも、堕ち人になる可能性はあります。だからこそ、蛍が止めたのです」

「はい」

「しかし、私達守護者も穢れを受けます。人間ですから、浄化も必要なんです」

「……はい」

「ですが、蛍は力が出せないのを知ってますよね? 睡蓮がお話を、し・ま・し・た・よ・ね?」

「はいぃぃっ! すみませんっ!」


 朔の怒涛の攻撃が見事に決まった!

 ヒナタは縮こまり、ひたすら頭を下げる。

 蛍は首をかしげ、微笑む。

 そんなカオスな中に声がかかる。


「お前達、何をしているかと思えば……騒がしいぞ」


 呆れた様子の昴が、開け放たれたドアに寄りかかり、腕を組んでこちらを見ていた。


「申し訳ありません、昴様」


 朔は優雅に頭を下げる。


「蛍の浄化は後だ。煌が堕ちかけを見つけた。行くぞ」

「はい、承知いたしました」


 もう一度昴に頭を下げると、朔は準備の為に足早に部屋を出ていった。

 残された昴はチラリと二人を見ると、付いてこいと言わんばかりに指先を胸の前で動かした。


 ……昴さん、まるで“かかってこい”と言われているみたいなんですが。

 しかも、俺に関わるなと言ってませんでしたか?


 ヒナタの苦笑いを気にする事無く、昴も足早に部屋を出ていく。


「蛍さん、身体は大丈夫ですか? ごめんなさい、穢れの事をもっと早く気付ければ……」

「大丈夫」


 ヒナタの言葉に蛍は首をゆっくり振り、微笑む。

 蛍の手を見れば、すでに黒い灰で汚れてはおらず、何事も無かったように綺麗になっていた。


 穢れがどんなものか私には分からない。

 でも、真っ黒だった手が綺麗になってるのは異常だと分かる。

 落ち人の件も気になるし、急いだ方がいいかも。


 薄く微笑む蛍さんの手を握る。

 とても冷たく、生きている感じがしない。


「ヒナタ、放した方がいい」

「いいえ、大丈夫です! 行きましょう!」


 ヒナタは力強い瞳で蛍を見つめ、もう一度握り直す。


「ヒナタ」

「はい!」

「…………痛い」

「へ?」


 少しの沈黙の後に、握る力を弱める。

 煌君がいたら“怪力女”と言われている所である。

 気を取り直して、部屋を出る。


「ヒナタ」

「え? 痛いですか!?」


 ビックリして蛍を見る。

 また、力強く握っちゃった!?


 ヒナタは少し焦ったが、蛍はサラリと別の言葉を放った。


「そっちじゃない」


 固まるヒナタに、いつもと違うような微笑みを見せた。


 あれ? 何だろう……?


 首をかしげるヒナタを蛍はゆっくり誘導していく。


「こっち、皆は外」

「あっ……」


 蛍が玄関の扉を開け放ち、黄昏の逆光の中を導かれる。


 もしかして私、前にも体験した――――?


 蛍の背を見つめ、ヒナタは何かを思い出しそうであった。




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