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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第四部  作者: マスター


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第七十七話「二日で、帰ってきた」

七十七話目です。


シロと一緒に、二日で帰ってきました。


今回は、帰ってくる場面と、帰ってきてから気づくことの話です。離れていた間に、集落が確かに変わっていた。それを、帰ってきてから発見する話です。


では、どうぞ。

シロが、本当に二日で帰ってくれた。


山を越えて、平原を走って、森に入った。


二日間、ほとんど走り続けた。


休んだのは、夜の数時間だけだった。


「速いですね、シロ」


シロが、振り返らなかった。


まだ走れる、という後ろ姿だった。


「私は、少し限界です」


シロが、少し速度を落とした。


「ありがとうございます」


森の中に入ったとき、空気が変わった。


湿った、深い匂い。


「帰ってきましたね」


シロが、尻尾を振った。


「シロも、感じますか」


また振った。


「帰ってきた感じ、というのは、どこにいても変わらないですね」


また振った。



集落の手前で、シロが止まった。


「どうしましたか」


シロが、前を向いた。


耳を立てた。


「誰か来ますか」


シロが尻尾を振った。


知っている存在、という振り方だった。


「ルナですか」


シロが、また振った。


「また、集落の外まで来ていますか」


シロが、耳を動かした。


違う、という感じだった。


「集落の中にいますか」


シロが、また耳を動かした。


でも、動きが止まった。


「どういう意味ですか」


シロが、前を向いた。


行けば分かる、という顔だった。


「分かりました、行きましょう」



集落に着いた。


ルナが、広場にいた。


カナとミアと、一緒に何かを見ていた。


三人が、記録帳を広げていた。


「ルナ」と声をかけた。


ルナが、顔を上げた。


「あ、帰ってきた」と言った。


あっさりと言った。


「あっさりしていますね」


「だって、来ると思っていたから」


「そうですか」


「手紙に、帰ります、って書いてあったから」


「そうですね」


ルナが、また記録帳を見た。


「ちょっと待って、今いいところだから」


「そうですか」


カナが、顔を上げた。


「帰ってきましたね」


「帰ってきました。何を見ているんですか」


「ルナの記録帳と、ミアの精霊記録帳を、合わせています」


「合わせる、というのは」


「ルナの集落の記録と、ミアの精霊の記録を、日付で照らし合わせています。集落の状態と、精霊の状態が、どうつながっているか、見ようとしています」


「面白いですね」


「面白いです」とカナは言った。「気づいたことがあって、三人で確認しています」


「何に気づきましたか」


「後で話します。まず、終わらせます」


「分かりました」


シロが、ルナの横に来た。


ルナが、シロを撫でた。


撫でながら、記録帳を見ていた。


「器用ですね」


「シロが来てくれているのは分かるから」とルナは言った。「両方できる」


シロが尻尾を振った。



しばらくして、三人が顔を上げた。


「分かりました」とカナが言った。


「何が分かったんですか」


「凪さんが集落にいる日と、いない日で、精霊の状態に違いがあります」


「違い、というのは」


「凪さんがいる日は、アオとルミが水面に出る回数が多いです。いない日は、少ないです」


「精霊が、私に反応しているということですか」


「そう思います」とミアが言った。記録帳を見ながら言った。「ルナが毎日来ることで、精霊が出てくるようになりました。でも、凪さんが来た日は、さらに出てくる回数が増えています」


「私が、精霊を呼んでいるということですか」


「呼んでいるというより、感じ取れるから、精霊も感じ取っているのかもしれないです」


「精霊が、感じ取れる存在に反応する」


「そうだと思います」


ルナが、口を開いた。


「ナギが来た日は、ルミがずっと水面近くにいます。来ない日は、水草の間にいることが多いです。前から、そう感じていましたが、記録で確かめました」


「記録で、確かめたんですね」


「そうです。感じているだけじゃ、気のせいかもしれない。でも、記録があれば、確かめられます」


「ルナが、記録の使い方を覚えましたね」


「カナさんに教わりました」


「私が教えたより、ルナが自分で気づいた部分の方が多いですよ」とカナは言った。


「カナさんが言いそうなことを言いますね」と私は言った。


「凪さんに、影響されました」



ガルが出てきた。


「お帰りなさい、凪様。二日で帰ってきましたね」


「帰ってきました。シロが走ってくれました」


「シロ様が」


シロが胸を張った。


「どうぞ、食事をしてください。少し豪華にしました」


「帰ってきたから、ですか」


「そうです」


「定番になりましたね」


「定番にしました」とガルは言った。「帰ってきたとき、豪華にする。それが、この集落の習慣です」


「良い習慣ですね」


「凪様が来てから、できた習慣です」


「きっかけを作っただけですが」


「受け取っています、凪様も」とガルは言った。


「受け取ります」


ガルが、少し微笑んだ。


「今日は、素直に受け取りましたね」


「練習しているので」



食事の後、ルナと池に行った。


カナとミアも来た。


池に着いたとき、アオがすぐに水面に出てきた。


「早いですね」


「凪さんが来たから」とルナは言った。


「そうですか」


「記録の通りです」


ルミが、次に出てきた。


前より、高い位置にいた。


水面から、ほんの少し、顔が出ていた。


「出ていますね」


「出ています」とルナは言った。嬉しそうに言った。「前に手紙で書いたやつ」


「書いてくれましたね。水面から顔を出した、と」


「見て、どう思いますか」


「少し、大きくなりましたね」


「そうです。毎日来ているから、変化が分かります」


「そうですね」


ミアが、記録帳に書いた。


「何を書いていますか」とルナが聞いた。


「凪さんが帰ってきた日の、ルミの状態を書いています」


「どう書きましたか」


「凪さんが帰ってきた後、水面からさらに高く出てきた、と書きました」


「さらに高く、ですか」とカナが言った。


「そうです。凪さんが来る前より、来た後の方が、高く出ていました」


全員で、ルミを見た。


確かに、さっきより、少し高く出ていた。


「記録が追いついていますね」と私は言った。


「そうです」とミアは言った。「変化が速いので、すぐ書かないと追いつかないです」


「ルミが、ちゃんと成長しています」とルナは言った。


「そうですね」


「毎日来ていたから、成長できたんだと思います」


「どういう意味ですか」


「私が毎日来ることで、池が元気になる。池が元気だから、ルミが元気に育てる。だから、毎日来ることが大事だと思います」


「ルナが、そう感じているんですね」


「そう感じています。記録で確かめたわけではないですが」


「でも、感じることが、最初の一歩ですね」


「記録で確かめるのが、次の一歩ですか」


「そうです」


「じゃあ、確かめます」とルナは言った。


「どうやって確かめますか」


「一週間、来ない日を作ってみる。それで、ルミの状態が変わるか、見ます」


カナが、少し目を細めた。


「実験ですね」


「実験、というんですか」とルナが言った。


「仮説を立てて、試して、確かめる。それを、実験といいます」


「実験か」とルナは言った。「やってみます」


「来ない日を作れますか」とミアが聞いた。


ルナが、少し考えた。


「難しいです。来たくなってしまいます」


「来たくなっても、来ない、が実験です」


「それは、つらいな」


「実験は、つらいことがあります」


ルナが、また考えた。


「分かりました。やります。ただし、三日だけです」


「三日で、分かりますか」


「分からないかもしれないですが、やってみます」


「やってみます、という言い方が、ナギに似てきましたね」とカナが言った。


ルナが、少し照れた。


「影響されました」


「良い影響ですね」


「そうですか」


「そうです」



夜、ルナと二人になった。


「帰ってきて、どうだった、エルド」とルナが言った。


「川が、暴れていました」


「暴れていた」


「三年間、上がったり下がったりしていました。農民が困っていました」


「解決しましたか」


「しました。岩が原因でした。ゴルさんと一緒に、動かしました」


「ゴルが来てくれたんだ」


「来てくれました。手紙を書いたら、三日で来てくれました」


「岩が気になったから、来てくれたんだよね」


「そうです。ゴルさんも、気になることに向かう人です」


「ナギと同じだね」


「似ていると、ゴルさんも言っていました」


ルナが、少し笑った。


「ゴルとナギが、似ている」


「岩と、気になることに向かう人間が、似ていると言われました」


「同じだ」とルナは言った。「私も、気になることに向かいます。実験するって言ったの、それです」


「そうですね」


「ナギから、うつりました」


「気になることに向かうのは、ルナが元々そうだと思いますが」


「元々あったかもしれないけど、名前をつけてもらった感じ。気になることに向かう、という言葉をもらった」


「言葉があると、意識できますね」


「そうです。言葉があると、自分がやっていることが分かります」


「ルナも、良いことを言いますね」


「カナさんから、うつりました」とルナは言った。あっさりと言った。


「カナさんから」


「カナさんが、言葉を使うのが上手いから。私も、ちゃんと言葉で言いたいと思うようになりました」


「つながっていますね」


「全部つながってる」


今日何度目か分からなかった。


でも、毎回、本当のことだった。


ルナが、石を出した。


「返す」


「ありがとうございます」


「次に行くとき、また渡す」


「そうしてください」


ルナが、池の方を見た。


夜の池は、暗かった。


「ルミ、元気かな」


「元気ですよ。さっき会いましたね」


「夜も、元気かな」


「元気だと思います」


「夜の精霊を、見てみたいな」


「夜も光っているかもしれないですが、暗くて見えにくいですね」


「今度、夜に池に行ってみよう」


「寒くないですか」


「夏だから、寒くないです」


「そうですね」


「ナギも来る?」


「来ます」


「じゃあ、今度、夜に行こう」


「そうしましょう」


ルナが、また空を見た。


夏の星が、出ていた。


「帰ってきてくれて、良かった」とルナは言った。


「帰ってきました」


「条件なし、だったね」


「条件なしで、帰りました」


「よし」とルナは言った。


満足した顔だった。


シロが、いつの間にか横にいた。


「いましたか」


シロが尻尾を振った。


「ずっといましたか」


また振った。


「ありがとうございます」


三人で、夜空を見た。


帰ってきた夜だった。

七十七話目、書きました。


「ルナがあっさりしていた」という場面から始めました。手紙に帰ります、と書いてあったから、来ると思っていた。信頼が深まると、迎え方が変わります。走ってきて抱きついてくるのではなく、記録帳を見ていた。それが今のルナの形でした。


「凪さんがいる日は、精霊が水面に出る回数が多い」という発見。感じていたことを、記録で確かめた。ルナが記録の使い方を覚えた場面でした。感じる、記録する、確かめる、という順番を、自然にやり始めていました。


「来ない日を作る実験」というルナの提案。自分の仮説を、自分で試す。これは、研究者の発想です。「難しいですが、やります。三日だけ」という現実的な制約をつけたのも、ルナらしかった。


「言葉があると、意識できる。言葉があると、自分がやっていることが分かる」というルナの言葉。これが、この物語を通じた一つのテーマでもあります。記録することで、感じたことが言葉になる。言葉になると、次の人に伝わる。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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