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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第四部  作者: マスター


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第八十五話「セルドの山で、竜が待っていた」

八十五話目です。


セルドに着きます。ガロン山に向かいます。


百年間、卵を守ってきた竜が、待っていました。


では、どうぞ。

セルドに着いたのは、出発から四日後だった。


都の門をくぐると、オルトが待っていた。


「来てくれましたね」とオルトは言った。


「来ました。卵の状態はどうですか」


「変化が出ています。急いだ方がいいです」


「どんな変化ですか」


「卵が、光り始めました」


「光り始めた」


「そうです。三日前から、卵が内側から光っています。竜が、ずっとそばを離れないです」


「孵化が近いですか」


「近いと思います。デルも、そう言っています」


「デルが、どうして分かるんですか」


「竜の言い伝えを持っていた方ですね。昔の記録に、孵化の前に卵が光る、と書いてあったそうです」


「記録が、役に立っていますね」


「そうです。では、急ぎましょう」



ガロン山への道を、急いだ。


オルトと、護衛二人と、私とシロ。


山の入口まで、半日かかった。


山に入ると、空気が変わった。


「感じますか」とオルトが聞いた。


「感じます。何かが、違います」


「何が違いますか」


「山全体が、静かです。動物の気配が少ないです。山が、息をひそめているような感じです」


「竜が近くにいるからですか」


「そうかもしれないです。竜が強く存在しているとき、周りが静まることがあります」


「それは、怖い意味ですか」


「怖い意味ではないです。大きな存在がいると、周りが感じ取って、静かになることがあります」


「生き物の礼儀みたいなものですか」とオルトは言った。


「そういう言い方が、合っているかもしれないですね」



竜がいた場所に着いた。


前回来たときと、同じ場所だった。


岩が重なった、広い空間だった。


竜が、卵のそばにいた。


前回より、大きく見えた。


いや、大きくなったのではなく、存在が濃くなった感じだった。


「来たか」


竜が、言った。


人間の言葉ではなかった。


でも、意味が分かった。


「来ました」と私は言った。


「待っていた」


「卵が、光っていますね」


「そうだ。もうすぐだ」


「もうすぐ、孵化しますか」


「孵化する。今日か、明日か、分からない。でも、もうすぐだ」


「百年間、守ってきましたね」


竜が、少し動いた。


卵を、より近くに引き寄せるように動いた。


「百年間、待った。これが終われば、また川を穏やかにできる。また、嵐を起こさなくていい」


「嵐を、起こさなくなりますか」


「起こす理由がなくなる。卵を守る必要がなくなる。嵐は、守るためだった」


「そうでしたね」


「お前が来て、卵の場所が安全になった。それから、嵐が減った」


「川が戻ってきていますね、セルドの」


「戻ってきている。それも、お前のおかげだ」


「竜が、水脈を一緒に押してくれたおかげです」


竜が、また少し動いた。


「お前は、いつも誰かのおかげと言う」


「本当のことなので」


「受け取れ」と竜は言った。


「ガレス王と同じことを言いますね」


「ガレスは、正しいことを言う」


「受け取ります」


シロが、卵を見ていた。


「シロも、来ましたよ」


竜が、シロを見た。


「あの小さい獣か」


「シロは、ラグル族です。大きいですよ」


「竜から見れば、小さい」


「そうですね」


シロが、少し背を低くした。


竜の前では、そうなるらしかった。


「怖くないですよ、シロ」


シロが、少しだけ背を戻した。


「怖い」とシロが言えるわけはなかったが、そういう顔をしていた。



オルトが、テントを張った。


「泊まる準備をします」


「泊まるんですか」と私は言った。


「いつ孵化するか分からないので、山で待ちます。ガレス王の指示です」


「ガレス王も来ますか」


「明日、来ます。孵化が近いと分かって、来ることにしたそうです」


「ガレス王が、山に来ますか」


「珍しいことですが、来ます。百年に一度のことだから、と言っていました」


「そうですね」


夜になった。


竜が、卵のそばで眠っていなかった。


ずっと、起きていた。


「眠らないんですか」と竜に聞いた。


「眠れない。もうすぐだから」


「緊張していますか」


「緊張、という言葉が合うかどうか分からないが、落ち着かない」


「そうですね。百年間待ったものが、もうすぐ始まるから」


「始まる」と竜は言った。「終わりが、始まりになる」


「ガルさんと同じことを言いますね」


「ガルというのは」


「集落の長です。終わりと始まりはつながっている、と言っていました」


「そうだな」と竜は言った。「つながっている」


「全部がつながっていますね」


「そうだ」


「竜も、そう思いますか」


「川も、山も、卵も、お前たちも、全部つながっている。だから、卵が孵化すれば、全部が少し変わる」


「全部が、変わるんですか」


「少しずつ、変わる。竜が生まれれば、山の空気が変わる。山の空気が変われば、川が変わる。川が変われば、農地が変わる。全部がつながっているから、一つが変われば、全部が少し変わる」


「そうですね」


「お前が来たときも、そうだった」


「私が来たとき、ですか」


「お前が来て、竜の事情を聞いてくれた。卵を助けてくれた。それで、嵐が減った。川が戻った。農地が良くなった。全部がつながって、変わった」


「ありがとうございます」


「お前が、礼を言う必要はない。つながっていることが、理由だ。お前が来なくても、いつかは変わっていたかもしれない。ただ、お前が来たから、早く変わった」


「そうですね」


竜が、卵を見た。


「この子が生まれれば、また変わる。今度は、もっと大きく」


「どのくらい大きく変わりますか」


「分からない。でも、新しい竜が生まれれば、山に新しい力が来る。その力が、どう広がるか」


「楽しみですね」


「そうだな」と竜は言った。「百年間、楽しみにしていた」



夜中、卵の光が強くなった。


「光が強くなっています」


「そうだ」と竜は言った。「もうすぐだ」


「今夜ですか」


「今夜かもしれない」


オルトが、起きてきた。


「光が強くなりましたね」


「そうです」


「記録します」とオルトは言った。記録帳を出した。


「夜中に、書けますか」


「小さな明かりがあります。ミアさんのやり方を真似しました」


「オルトさんも、記録するようになったんですね」


「ガレスに言われました。大事な場面は、残しておけ、と」


「ガレス王が、そう言ったんですか」


「そうです。凪さんの話を聞いてから、記録の大切さを、ガレスが言うようになりました。影響が、ガレスにも来ています」


「全部つながっていますね」


「つながっていますね」


シロが、卵を見ていた。


眠らなかった。


「シロ、眠れますか」


シロが、首を振った。


眠れない、という意味だった。


「気になっていますか」


また首を振った。


「眠れないのは、気になっているからですか」


シロが、卵を向いた。


気になっている、という顔だった。


「竜も、私も、シロも、眠れない夜ですね」


竜が、少し動いた。


卵が、また光を強くした。


「また強くなりました」


「そうだ」と竜は言った。「来る」


「今ですか」


「もうすぐだ」


オルトが、書き続けた。


卵の光が、さらに強くなった。


岩の影に、光が届いた。


夜の山が、昼のように明るくなっていった。


「明るいですね」


「百年分の光だ」と竜は言った。


「百年分」


「百年間、この卵が持っていた力が、外に出ようとしている」


「そうですか」


「もうすぐ、出てくる」


光が、最大になった。


山全体が、光った。


シロが、目を細めた。


私も、目を細めた。


オルトが、片手で顔を覆いながら、もう片手で書き続けた。


竜が、卵に鼻を当てた。


光の中で、竜が静かにしていた。


百年間、そこにいた竜が、静かにしていた。


何かが、割れる音がした。


小さな音だった。


でも、山全体に響いた。

八十五話目、書きました。


卵が割れる音で、終わりにしました。次話で、生まれる場面を書きます。この話は、その前夜と前の瞬間の話でした。


「竜から見れば、シロは小さい」という場面。シロが背を低くした。普段は堂々としているシロが、竜の前では少し小さくなった。竜の大きさが、シロの反応で伝わりました。


竜の「全部がつながっている」という言葉。山の精霊でも、岩人でも、竜でも、同じことを感じ取っている。凪だけが言う言葉ではなく、自然の中にいるものが共通して感じていることだった。


「オルトも記録するようになった」という場面。ガレスが「大事な場面は残しておけ」と言うようになった。記録の文化が、セルドにも広がっていた。


「百年分の光」という竜の言葉。百年間、卵が持っていた力が外に出ようとしている。長い時間が、一瞬で形になる場面への準備でした。


オルトが「片手で顔を覆いながら、もう片手で書き続けた」場面。記録係の本能が出た場面でした。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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