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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第四部  作者: マスター


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第八十四話「気になることは、意外なところから来た」

八十四話目です。


第五部の動きが始まります。気になることが、どこから来たか。


今回は、遠くからではなく、意外と近くから来ました。


では、どうぞ。

毎朝、ルナと一緒に集落を歩いた。


ルナが感じ取り、私が確認する。


そういう朝が続いていた。


「今日は、南側の水の流れが少し速い気がします」とルナが言った。


手を当てた。


「そうですね。昨日より少し速いです。雨の影響かもしれないですね」


「問題ですか」


「問題ではないですが、確認した方がいいです」


「どこを確認しますか」


「南の沢の入口を見てきます。何かが詰まっていると、流れが変わることがあります」


「一緒に行きます」とルナは言った。


「どうぞ」



南の沢に向かった。


ルナとシロと一緒だった。


沢の入口に着いた。


見た。


「木の枝が、落ちていますね」


枝が、沢をまたぐように落ちていた。


太い枝だった。


「これが原因ですか」とルナが聞いた。


「これが詰まりを作っていますね。水が、この枝の周りを迂回しているので、流れが少し変わっています」


「動かせますか」


「動かせます。ただし、一人では重いです」


「私も手伝います」


「ルナが手伝ってくれますか」


「手伝います。二人でやりましょう」


二人で、枝を持った。


重かった。


「せーので、向こうに動かします。せー」


「の」とルナが言った。


枝が、少し動いた。


「もう一度。せー」


「の」


また動いた。


「もう一度。せー」


「の」


枝が、沢の外に出た。


水が、元の流れに戻った。


「戻りましたね」


「戻りました」とルナは言った。息が少し上がっていた。「こういうことも、やるんですね」


「気になることは、大きいことも小さいことも、あります」


「枝を動かすのも、岩を動かすのも、同じですね」


「同じです。大きさが違うだけです」


「なんか、そう考えると、難しくないですね」


「そうですね」


ルナが、沢を見た。


「水が、また元気になりましたね」


「そうですね」


「感じ取ったから、気づけました」


「そうです。感じ取らなければ、気づかなかったかもしれないです」


「毎朝やっていて、良かったです」


「そうですね」



集落に戻った昼過ぎ、ガルが来た。


「凪様、手紙が来ました」


「どこからですか」


「アルドからです。カナ様からです」


「カナさんから」


「そうです。ミア様からの追伸もあります」


受け取って、開いた。


「凪さんへ。カナです。アルドに戻りました。国際調査の記録まとめが、始まっています。ベルクさんと一緒に動いています。それと、一つ報告があります。エン山の採掘が、先月から始まりました。場所は、北西の斜面です。条件付きで認可した場所です。今のところ、農地への影響は出ていないです。水脈の変化は、記録を続けて確認しています。定期的に報告します。もう一つ。ダロさんが、鉱山局の中で少し立場が良くなってきています。内部から変えようとしているようです。頑張っているみたいです。また手紙を書きます。カナより」


「追伸もありますか」とガルが言った。


「追伸があります」


読んだ。


「凪さんへ。ミアです。精霊の記録帳、ルナさんが続けてくれているか、気になっています。続けてくれていれば、嬉しいです。私は、国際調査の記録をまとめながら、別の記録帳を作り始めました。今まで凪さんが動いてきた場所の記録を、まとめたいと思っています。森の集落から始まって、ゴルの山、セルド、アルド、エルド。全部の場所の変化を、一つの記録帳にまとめます。凪さんが動いたことが、全部つながって見えるようにしたいです。ミアより」


「ミアさんが、全部の記録をまとめているんですね」とガルは言った。


「そうです。全部の場所の変化を、一つにまとめたいそうです」


「残りますね、全部が」


「残ります」


ルナが、横で聞いていた。


「ミアさんらしいですね」


「そうですね」


「私の精霊の記録帳も、いつかそこに入れてもらえますか」


「入れてもらえると思います。ミアさんに、手紙で伝えましょう」


「書きます」とルナは言った。すぐに言った。



その夜、ベルクから別の手紙が届いた。


カナの手紙と同じラグル族が、両方持ってきていたらしかった。


「凪へ。ベルクだ。エン山採掘が始まった。条件通りの場所で、今のところ問題ない。カナが監視を続けている。それと、一つ別件がある。セルドのガレス王から連絡が来た。竜の卵が、そろそろ孵化するかもしれないとのことだ。オルトが観察していて、変化が出ているらしい。ガレスが、お前に知らせてほしいと言っていた。お前が来られるなら、来てほしいそうだ。私からは、無理にとは言わない。ただ、知らせる。ベルクより」


「竜の卵が、孵化するかもしれない」


シロが、私を見た。


「セルドの竜の卵です。百年間、守られていた卵です」


シロが尻尾を振った。


「気になりますね」


また振った。


「気になります」


シロが、もっと振った。


「行きたいですか、シロも」


シロが、腰を低くした。


乗れ、という姿勢だった。


「今夜は、まだ出発しないですよ」


シロが立ち上がった。


分かった、という顔だった。


でも、まだ期待している目をしていた。



ルナに、手紙の内容を話した。


「竜の卵が孵化するかもしれないのですか」とルナは言った。


「そうです」


「見てみたいです」


「そうですね」


「ナギは、行きますか」


「気になります」


「言い切りましたね、気になります、と」


「気になることは、言い切れます」


「じゃあ、行くんですね」


「行くと思います。ただ、いつ孵化するか分からないです。早いかもしれないし、遅いかもしれないです」


「いつ出発しますか」


「できるだけ早く行きたいです。孵化の瞬間を、見たいので」


「孵化の瞬間を見たいんですか」


「見たいです。百年間、守られていた卵が、孵化する瞬間は、一度しかないです」


「一度しかない、か」とルナは言った。「だから、気になるんですね」


「そうです」


「じゃあ、行ってください。早く」


「ルナは、怒らないんですか」


「怒らないです。竜の卵が孵化する瞬間を、逃してほしくないから」


「ありがとうございます」


「でも、石を渡してから行ってください」


「渡してください」


ルナが、ゴルの石を出した。


重くて、硬い石だった。


「行ってらっしゃい」


「行ってきます」


「帰ってきたら、全部話してください」


「話します」


「竜が生まれる瞬間を、ちゃんと見てきてください」


「見てきます」


「言い切りましたね」


「見てきます、それは言い切れます」


ルナが、少し笑った。


「分かりました。行ってきてください」



出発は、翌朝にした。


夜、ガルと話した。


「セルドに行きます」


「竜の卵のことですか」


「そうです」


「孵化が、近いんですか」


「近いかもしれないです。ただ、竜の卵が孵化するのに、どのくらいかかるか、誰も知らないです」


「百年間、守られてきた卵ですね」


「そうです。百年前に産まれて、百年間、竜が守ってきた」


「孵化すれば、百年越しのことが、一つ終わります」


「そうですね」


「でも、終わりは始まりでもあります」とガルは言った。


「そうですね。生まれれば、また新しい命が始まります」


「集落も、そうでした」とガルは言った。「凪様が来て、一度終わりかけていたものが、また始まりました。終わりと始まりは、つながっています」


「そうですね」


「竜も、きっとそうです」


「そうだといいですね」


「凪様、気をつけていってください」


「気をつけます」


「集落は、任せてください」


「お願いします」


「ルナが、感じ取ってくれます。私が、記録します。クロとキョロが、見回ります」


「全員で、守ってくれますね」


「守ります」とガルは言った。「凪様が帰ってくる場所を、守ります」


「ありがとうございます」


「礼はいいです。これが、私の気になることなので」


「ガルさんも、気になることに向かっていますね」


「凪様から、うつりました」とガルは言った。静かに言った。



翌朝、出発した。


ルナが、入口で待っていた。


「行ってらっしゃい」


「行ってきます」


「竜が生まれたら、名前をつけてきてください」


「名前を、ですか」


「ルミに、私が名前をつけたみたいに。竜にも、名前があった方がいいと思います」


「竜に、名前をつけてくれますか」


「私がつけたら、おかしいですか」


「おかしくないですが、竜の親が決めることかもしれないです」


「じゃあ、親の竜に、提案してきてください。ルナが名前を考えているから、と」


「考えているんですか」


「考えます。帰ってくるまでに、考えておきます」


「分かりました。親の竜に、伝えます」


「よし」とルナは言った。


シロが、先を歩いていた。


「急いでいますね、シロが」


「竜が生まれる瞬間を、シロも見たいんだと思います」


「シロも、気になっているんですね」


「そうです」


「全員、気になることに向かっています」とルナは言った。


「そうですね」


「行ってきてください」


「行ってきます」


「早く帰ってきてください」


「帰ります」


「条件なし」


「条件なしで、帰ります」


ルナが、手を振った。


今日は、少し大きく振った。


「竜が生まれる日だから、大きく振りましたか」


「そうです。特別な日には、大きく振ります」


「そうですか」


「行ってきてください」


「行ってきます」


シロが、もっと速くなった。


「シロ、急ぎますね」


シロが振り返らなかった。


「分かりました、急ぎましょう」


セルドへの道を、走り始めた。


竜の卵が、百年ぶりに孵化するかもしれない。


その瞬間を見に行く。


「気になりますね」と空に向かって言った。


シロが尻尾を振った。


「急ぎましょう」


また振った。


「一緒に、急ぎましょう」


春から夏、夏から秋へ。


季節が変わっていた。


でも、気になることがある限り、動き続けた。


それだけだった。

八十四話目、書きました。


「気になることが、意外と近くから来た」というタイトルの通り、枝が沢を詰まらせていた、という小さな問題から始まりました。岩を動かすのも、枝を動かすのも、大きさが違うだけで同じこと。ルナがそれを言った場面が、この話の序盤の核でした。


ミアが「全部の場所の変化を一つの記録帳にまとめたい」と書いてきた場面。凪が動いてきた全部の場所が、一つの記録帳で見えるようになる。これは、この物語全体の地図になる記録です。


ベルクからの手紙で、竜の卵の孵化が近いという知らせ。第二部で竜に会って、卵を助けた。その卵が孵化する。第二部のことが、第五部で実を結ぶ形になります。


「ルミに名前をつけたみたいに、竜にも名前を考えておく」というルナの申し出。ルナが、自分から関わろうとしている。集落にいながら、遠くの出来事にも関わっていこうとする姿が、ルナの成長でした。


「特別な日には、大きく振ります」というルナの見送り。小さな日と特別な日を、ちゃんと区別しているルナでした。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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