第7話:異世界流・平和的『国外追給(強制デトックス)』
第7話をお届けします。今回は、ついに異世界流の「平和的排除(国外追放)」が発動するエピソードです。
ご要望いただいた通り、裏切り者は野党だけにとどまらず、ザーランド王国の絶対的な『真実の天秤』は、腹黒く立ち回ろうとしていた与党議員や閣僚大臣、そして他ならぬ総理大臣の「真っ黒な本音」までをも容赦なくそして痛快にロックオンします。
政治界が大崩壊し、誰もいなくなった議場でキョトンとするルシードたちのコミカルな結末をお楽しみください。
「暴力は振るわないと言ったな!? ならば我々を拘束することはできないはずだ! 法治国家たる日本において、令状もない拘束は不当逮捕だ! 即座にこの重圧を解除しろぉぉぉーーーっ!」
議場の壇上に無様にへたり込み、冷たい汗と涙で顔をグショグショに濡らしながらも、神条は往生際悪く叫び続けていた。
彼の背後で這いつくばる野党議員たちも、
「そうだ、我々には不逮捕特権がある!」
「国際問題にしてやるぞ!」
と、まるで絞め殺される間際の鶏のような耳障りな悲鳴を上げ、必死に机の脚や椅子の背もたれにしがみついている。
だが、傍聴席から彼らを見下ろすルシードの、神秘的な碧色の瞳に宿る冷徹な光は、神条たちの浅薄で醜悪な言い逃れなど、疾うの昔に置き去りにしていた。
「ええ、我が国は『戦争の放棄』を至高の憲法に掲げた、絶対的な平和主義国家です。あなた方に肉体的な苦痛を与える暴力や拘束など、我が国の法において一切行いません。
……ただ、我が国の都市環境を維持する『絶対専守防衛システム』には――防衛対象の領域を蝕む有害な汚染物質、悪意ある不純物を検知した際、それらを領域外へと自動で排除する機能が備わっているだけです。
これは攻撃ではなく、単なる清掃ですよ」
ルシードは、まるで自宅の庭の雑草を毟るかのような、あるいは空気清浄機のフィルターを交換するかのような、あまりにも平穏で穏やかな手つきのまま、静かに右手を一振りした。
その瞬間、彼の掌の上で黄金の脈動を繰り返していた『真実の天秤』の核が、カッと眩い閃光を放った。そこから放たれた黄金の光の波紋は、津波のように、いや、押し寄せる光の濁流となって、国会本会議場の床、壁、天井のすべてを飲み込みながら猛烈な速度で広がっていく。
「――ザーランド王国絶対専守防衛システム、不純物排除プロセス(フェーズ3)を開始」
――パシィィィィン!!!
それは、極限まで張り詰めた空間の膜が、一瞬で爆発的に弾けたかのような、乾いた、しかし脳髄の奥まで響き渡るような超常の破裂音だった。
次の瞬間、壇上で泡を吹いていた神条、そして周囲で書類を撒き散らしながら騒ぎ立てていた野党議員たち総勢百数十名の姿が、まるで最初からこの世界に存在していなかったかのように、きらきらとした光の粒子となって「一瞬」でその場から掻き消えた。
衣服はおろか、彼らが懐に大事に仕舞い込んでいた分厚い裏金の封筒、スマートフォン、身分証にいたるまで、彼らを構成するすべての物質が空間ごと消失したのだ。
「消え……た……!? おい、神条!? どこへ行ったんだ!?」
与党側の議席に残された議員たちが、恐怖と驚愕のあまり、引きつった目を限界まで見開いて周囲を見回した。
先ほどまで怒号に満ちていた野党席は、主を失った衣服の残骸すら残さず、ただ静まり返った無人の座席だけが整然と並んでいる。
その頃、彼らが転移させられたのは、まさに地球の真裏側――。
神条たちが「話し合いで平和が保てる」と大絶賛し、裏金をヘラヘラと受け取って心から愛してやまなかった資金援助元の国(C国)の、遮るもののない極寒の荒野であった。
高度数千メートルの山脈から吹き下ろす、摂氏マイナス三十度の凍てつく暴風。そこに、高級スーツの糸一本すら残されず、文字通り「全裸同然の生身」で放り出された神条たちは、今頃、自分たちがどのような地獄に叩き落とされたかを理解し、紫色の顔をして絶叫していることだろう。
もちろん、周囲には対話をするためのテーブルも、彼らを保護してくれる法律も存在しない。
あるのは、凍えた人間を容赦なく死に至らしめる、圧倒的な大自然の暴力だけだった。
「おお……! 素晴らしい! なんという奇跡だ!」
本会議場に残された与党の閣僚大臣たちが、一瞬の静寂の後、まるで極上のマジックショーでも見たかのように、一斉に立ち上がって手を叩き、歓声を上げた。
「素晴らしいぞ! 売国奴どもが一瞬にして消え去った! 議場がこれほどクリーンになるとは!」
「さすがは銀河最高峰の超魔法科学テクノロジーだ! これで我が国の防衛を脅かす邪魔者は完全に消えた。総理、これで我が国の外交は安泰ですな! 異世界の力を借りて、我が国は新時代を迎えるぞ!」
肥え太った腹を揺らし、これみよがしにルシードへ向かって拍手を送る政治家たち。
内閣総理大臣もまた、その顔に満面の、そしてこれ以上ないほど腹黒い外交的微笑を浮かべ、傍聴席のルシードへ向かって恭しく一礼し、感謝の言葉を述べようと口を開いた。
「ルシード殿! まさかこれほどの力を……感謝いたします。これで我が日本国は、真の平和主義のもとで、貴国との末永い友好関係を――」
だが、総理の言葉は最後まで続かなかった。
ルシードの掌の上で静かに浮かぶ天秤は――未だに、不気味で濃厚な、禍々しいほどの赤黒い光を消していなかった。それどころか、その天秤の天皿は、今度は野党席ではなく、歓声を上げている「与党席・閣僚席」へと、カチリと冷たい音を立ててその照準を向けたのだ。
「え……?」
総理の顔から、営業用の笑顔が完全に凍りついた。
『真実の天秤』から放たれた赤黒いスキャン光線が、拍手をしていた与党議員たちの全身を滑るように透過していく。
その瞬間、彼らの頭上にも、野党のときとは比較にならないほどの数の、ドス黒いホログラフィック・マルチウィンドウが容赦なく一斉展開された。
そこに映し出されたのは、今まさに歓声を上げている彼らの、脳内の「真っ黒な本音」の精神波動だった。
『ククク、あのうるさい野党のバカどもが消えたのは最高に都合がいい。これで邪魔者はいなくなった。異世界人のアホどもを「平和主義の同志」と持ち上げて騙し、あの超技術の兵器やバリアを我が党で独占してやろう』
『あいつらのズレた同情心と「戦争放棄」の甘さを利用すれば、日本の防衛予算を極限まで削れるな。浮いた何兆円もの予算を、俺たちの身内の利権企業へ流してキックバックを受け取れば、一生遊んで暮らせるぞ』
『この素晴らしいバリア技術を、裏でアメリカや他の大国に高く売りつければ、俺の政治生命は世界規模で永久に安泰だ。日本国民がどうなろうと知ったことか、俺が世界の覇権を握るのだからな!』
「な……ななな、何だこれはぁぁぁーーーっ!?」
「個人のプライバシーの侵害だ! 消せ! 今すぐその不快なホログラムを消去しろ!」
さっきまで手を叩いていた閣僚大臣たちが、一瞬にして顔面を蒼白に変え、ガタガタと膝を震わせながら叫んだ。
画面には、彼らが裏で特定の利権団体と交わした秘密契約書の内容や、スイスの秘密口座の正確な残高数値、そして数々の汚職の証拠映像までもが、日本全国のテレビの前の国民、そしてネット上の何千万人という視聴者の前に、言い逃れ不可能な形で大暴露されていた。
日本国民は、怒りを通り越して唖然としていた。
他国に国を売ろうとしていた野党が「本物の悪党」なら、目の前で「平和と友好」を歌っていた与党の大半は、異世界の善意を踏みにじり、国民の安全を餌にして私腹を肥やそうとする「希代の詐欺師」だったのだ。
この国を愛し、過酷な環境で健気に生きる一般国民のことなど、彼らの頭の中には最初から微塵も存在していなかった。
「……なるほど。こちらの席の皆様も、言葉では我が国との友好を語り、憲法九条を称えながら、その魂は私利私欲の泥に塗れていたのですね」
ルシードの冷ややかな声が、極低温の刃のように議場に突き刺さる。
「ま、待ってくれ! ルシード殿、これは誤解だ! 地球の政治、外交における『高度な駆け引き』というものであって、決して貴国を騙そうとしたわけでは――!」
総理が必死に傍聴席へ向けて手を伸ばし、汗を飛び散らせながら弁明しようとした、その瞬間だった。
――パシィィィィン!!!
先ほどよりも、遥かに巨大で重厚な空間の破裂音が、国会議事堂の建物を激しく揺るがした。
黄金と赤黒い光の波紋が、与党席と閣僚席の全体を完全に飲み込む。
次の瞬間、
自分の保身のために叫んでいた閣僚大臣たち、
そして、ルシードのピュアな善意と勘違いを最大限に利用して世界を欺こうと腹黒い笑みを浮かべていた内閣総理大臣までもが、
一切の例外なく、光の粒子となって一斉にその場から掻き消えた。
彼らが送り飛ばされたのは、日本の遙か彼方、絶海の孤島や、人跡未踏の極寒の北極圏。
私利私欲のために国家の安全を売り払おうとした政治家たちにとっては、文字通りの精神的・肉体的デトックスとなる、一切の人工物のない過酷な未開の地であった。
彼らが大好きな高級料亭も、利権を貪るためのペンも、そこには何一つ存在しない。
凄まじい静寂が、国会本会議場を支配した。
数百人もの利権政治家と売国奴で埋め尽くされていたはずの日本の最高意志決定機関が、文字通り「ほぼ全員」消滅してしまったのだ。
広い議場にかろうじて残されたのは、汚職にも裏切りにも関与していなかった、本当に純粋に国を憂いていた数人の若手議員と、そして傍聴席の最前列で、あまりの衝撃に全身を完全に石化させている自衛隊の天野晴斗一尉だけだった。
「……あれ?」
議席がガランとした完全なもぬけの殻になった光景を見つめ、ルシードは、まるで手品に失敗した子供のように、ポカンとした顔でキョトンと端正な小首を傾げた。
「ミリア……。日本の政治指導者の皆さんは、いったいどこへ行ってしまったのでしょう? 私は、日本の平和と、あの美しい『戦争放棄の憲法』を脅かす『悪意の不純物』だけを自動排除したつもりだったのですが……」
「わかりませ~ん、ルシード様……」
ミリアもまた、大きな瞳をこれ以上ないほど丸くして、キョトンとしたまま、誰もいなくなった寂しい議場を見下ろしていた。
「まさか、この国の政府の上層部、その大半が『不純物』だったということでしょうか……? 地球の政治というのは、私たちが想像するよりも遥かに、おぞましい泥沼の魔境のようです……。天野さん、あなた方地球人は、本当にこんな恐ろしい環境で、今まで生身で耐えてこられたのであるのですね……!」
「いや、俺に言われても……」
天野一尉は、ガチガチと震える顎を押さえながら、乾いた声を絞り出すのが精一杯だった。
テレビの向こうの日本国民が
「全員いなくなっちゃった……」
と大パニックになり、同時に
「でも全員クズだったからこれでいいのか……?」
と前代未聞の困惑に包まれる中、日本の政界は、善意100%の異世界人によって、完全に、そして物理的に「リセット」されたのだった
第7話をお読みいただき、ありがとうございました!
野党だけでなく、腹黒く立ち回ろうとしていた与党や総理大臣までもが、ザーランド王国の絶対的な天秤によって一斉に国外追放(強制デトックス)されるという、怒涛の超展開を描かせていただきました。
誰もいなくなった議場で「あれ?」とキョトンとするルシードたちの無自覚っぷりが、最高に爽快なカタルシスを生み出しています。
もし今回の政界一斉デトックス展開が最高に面白かった、スカッとしたと感じていただけましたら、ぜひ感想の書き込みや作品への評価(ブックマーク・応援)を、ぜひぜひ、よろしくお願いいたします!




