第6話:暴かれた『平和の使者』たちの正体
第6話をお届けします。
嘘を暴かれ、日本中が怒りに沸く中で逆上した神条たち野党議員。
彼らが醜く言い逃れをしようと暴れる中、ルシードが「健気な日本を騙していた売国奴」の正体を完全に認識し、静かに怒りを燃え上がらせるエピソードです。
ザーランド王国の圧倒的な威圧感と、逃げ場のない絶望に追い詰められる悪役の姿を臨場感たっぷりに描写しました。
どうぞお楽しみください。
「偽物だ!
こんなものは、現政権が仕組んだ卑劣な捏造映像だぁぁぁ~~っ!」
静まり返った国会本会議場に、割れた金属を擦り合わせるような、神条の狂った絶叫が鼓膜を引き裂く。
壇上の神条は、額に青筋を何本も浮かべ、高級な仕立てのスーツの襟元を自ら毟り取るようにして暴れていた。
彼の頭上に浮かび上がる巨大な光のスクリーン――ザーランド王国の魔道具『真実の天秤』が投影するホログラムには、未だに鮮明すぎる映像がループ再生されている。
薄暗い料亭の個室。差し出されるアタッシュケース。その中に敷き詰められた、海外の大国(C国)の刻印が入った莫大な額の裏金。それを受け取り、下卑た笑みを浮かべて「日本の防衛力など、我が私腹を肥やすための道具に過ぎん」と言い放つ神条自身の姿が、一言一句、息遣いまで完璧に再現されていた。
「直ちに上映を中止しろ! 議長、何をしている!
これは我が党に対する重大な人権侵害であり、民主主義の破壊だ!」
「そうだ! 悪質なハッキング行為だ! 騙されるな! 映像の男はAIで作られた偽物だ!」
神条に同調していた野党議員たちが、まるで一斉に熱湯を浴びせられた蟻の群れのように、議席から飛び出して叫び声を上げた。彼らは机を激しく叩き、書類を宙に放り投げ、カメラに向かってプラカードを掲げて必死にその場を攪乱しようとする。
議場は怒号と罵声、言い逃れの悲鳴が乱反射する、醜悪極まる地獄絵図と化していた。
しかし、その欺瞞の叫びが大きくなればなるほど、日本中の「地上」は別の意味で大爆発を起こしていた。
国会中継をリアルタイムで放送していたテレビ局のスタジオでは、番組の進行役やコメンテーターたちが、台本を握りしめたまま完全に硬直していた。
「え……あ、あの、ただいま、国会から信じられない映像が……」
アナウンサーの声は完全に震え、次の言葉を紡げない。
ディレクターたちの怒号が飛び交う副調整室では、放送事故の切り替えスイッチに手をかけながらも、あまりの異常事態に誰もが指を動かせずにいた。
インターネット上は、もはやサーバーが物理的に悲鳴を上げるほどの超大炎上を記録していた。
『おい嘘だろ、神条マジで国を売ってたのかよ!?』
『平和とか対話とか言ってたのは全部裏金のためのポーズだったのか!』
『隣のC国のロゴがはっきり映ってて言い逃れ不可能じゃん!』
『異世界人のあのカメラ、解像度がヤバすぎる。毛穴まで見えてるぞ』
『売国奴ども全員消え失せろ!!!』
SNSのタイムラインは毎秒数万件の怒りの投稿で埋め尽くされ、トレンドワードの上位は「神条」「裏金」「売国奴」「真実の天秤」といった単語で埋め尽くされた。
日本国民の怒りと衝撃は、新宿のゲートが出現したとき以上の熱量で膨れ上がっていた。
だが、そんな地球側の凄まじい動揺など、ザーランド王国の絶対的なテクノロジーの前には、水面に広がる微細な波紋にすら満たなかった。
神条は、顔を真っ赤に染め、口端から汚らしい泡を飛ばしながら、傍聴席の最前列に座るルシードを真っ直ぐに指差した。
「おい、そこの宇宙人! 一体どんな卑劣な手品を使った!?
我が党の清廉潔白な平和主義をおとしめ、日本を軍国主義に逆戻りさせようとする現政権の罠だな!? 騙されるな、国民諸君! これこそ異世界人と政府が結託した陰謀だ!
我々は被害者だ、不当な介入を断固として拒否する!」
必死の形相で叫ぶ神条。
しかし、ルシードの掌の上で静かに浮かぶ『真実の天秤』は、彼らが「嘘」を重ね、欺瞞の言葉を吐き出すたびに、その中心核から不快な赤黒い光の脈動をドクドクと増幅させていった。
それは、彼らの魂の根源が限界まで濁り、腐り果てているという、宇宙の物理法則に基づいた絶対的な罪の証明だった。
「……なるほど。これが『嘘』。そして、我が国の歴史書にのみ記されていた『欺瞞』というものですか」
ルシードの声が、議場に響いた。
それは、決して声を張り上げたわけではなかった。囁くような、しかしどこか鈴の音のように澄んだ、あまりにも美しい声。
だが、銀河最高峰の魔法科学によって空間の音響そのものを調律されたその声は、数百人の議員たちが放つ汚らしい怒号や机を叩く音を、まるで巨大な防音壁で遮断したかのように一瞬でかき消した。
声そのものが物理的な質量を持ったかのように、全員の鼓膜へ直接、冷徹に染み渡っていく。
神条は、突如として自分の声が周囲に響かなくなったことに気づき、引きつった顔で言葉を失った。
傍聴席のルシードの顔から、先ほどまでの純粋無垢な、聖者のような笑顔は完全に消え去っていた。
そこにあるのは、絶対的な強者、あるいは冷徹な裁判官だけが宿すことを許される、底知れない失望と冷徹の眼差しだった。
その碧色の瞳は、まるで極低温の氷河のように、壇上の神条を静かに射抜いている。
「ル、ルシード様……。あの人たち、あんなに綺麗な言葉で平和を叫びながら、裏ではこの脆くて、今にも壊れそうな健気な日本という国を、他国に切り売りしようとしていたのですね……?」
隣に座る聖騎士のミリアが、怒りと深い悲しみで小さな肩を小刻みに震わせながら、ルシードを見上げた。彼女の手にあるハンカチは、裏切られた悔しさから真っ白な指で固く握りしめられている。
「ええ、そのようです、ミリア。
私は、彼らが環境結界すら持たない過酷な地球という環境で、いつ死ぬかもわからない生身の命を賭けて、それでも『非戦』という高潔な理想を貫こうとする、我が国に劣らぬ志士なのだと、心から尊敬していました。
……ですが、違いましたね。
彼らは、周囲の強国に怯えながらも必死に、健気に生きる同胞――日本国民の背中を、後ろから容赦なく刺そうとしていた『本物の裏切り者』だ」
ルシードの唇から、その冷徹な事実が告げられた、その瞬間だった。
彼の全身から、目に見えない凄まじい「魔力圧」が、津波のように解き放たれた。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!
国会議事堂の、大理石でできた重厚な壁と天井が、まるで巨大な巨人に握り潰されそうになっているかのような、微細で不気味な悲鳴を上げて軋み始めた。
議場内の空気が、一瞬にして何十倍もの重力を持ったかのように重く、粘質に変化する。
「がっ……あ、あ、な、んだこれ……っ!?」
「い、息が……空気が、吸えな……っ」
先ほどまで怒号を上げていた野党議員たちが、突如として胸を抑え、喉を掻きむしりながら、自らの議席へとガタガタと崩れ落ちていった。
心臓を直接、巨大な鉄の万力で鷲掴みにされたかのような、圧倒的な生物的恐怖。
床に這いつくばり、過呼吸のように口を開けても、肺が酸素を拒絶する。脳が「ここにいては死ぬ」という原初の防衛本能の警報を大音量で鳴らし、議員たちの顔は瞬く間に土気色へと変わっていった。
この凄まじい重圧は、ルシード一人の力によるものではなかった。
東京の上空数千メートル、日本の自衛隊機を優しく弾き返した「絶対防衛シールド」の遥か奥――光学迷彩によって完全に姿を隠していた、ザーランド王国の超魔法科学宇宙艦隊が、全艦、主砲の照準を国会議事堂へと固定し、臨戦態勢(フェーズ2)に入ったことによる空間の歪みだった。
ザーランド王国のテクノロジーは、その気になれば、地球という惑星の構造原子をすべてバラバラに分解し、宇宙の塵へと変えることすら容易い。
そんな、人類の歴史が逆立ちしても到達できない「絶対的な力」のほんの数%の残滓が、魔力圧として永田町を押し潰していた。
神条は、自分が戦いを挑もうとしていた存在の、あまりの巨大さにようやく気づいた。彼が誇っていた政治的権力や、大国の後ろ盾など、この圧倒的な暴力の前には羽毛ほどの価値もない。
「ひっ……あ、ああ、あああ……っ!」
神条は操り人形の糸が完全に切れたかのように、壇上にへたり込み、涙と鼻水で顔を汚しながらガチガチと歯を鳴らした。
あまりの恐怖に股間から温かいものが溢れ、絨毯を汚していくが、それを気にする余裕すら彼にはなかった。
与党席で、辛うじてその圧力を耐え忍んでいた首相は、全身に鳥肌を立て、額から滝のような冷汗を流しながら、心の中でただ確信していた。
(終わったな、神条……。お前はただの政敵ではない。この銀河で最も怒らせてはならない、圧倒的な力を持った『お人好し』を、その私欲で本気で激怒させたのだ。
地球上のどんな法律も、どんな軍隊も、もうお前を救うことはできない……!)
ルシードは、まるでゴミを見るかのような冷たい冷徹な瞳で、壇上で這いつくばる神条を見下ろした。
そして、静かに、しかし議場全体の空間を拒絶するように断固とした口調で、最後通牒を告げた。
「我が国は、平和を愛し、戦争を放棄した国家です。どのような理由があろうとも、私たちがあなた方に暴力を振るい、その身体を傷つけることはありません。
我が国の高潔な不戦の憲法は、あなた方のような浅薄な悪党に対しても、等しく守られるべきものですから」
その言葉に、神条は一瞬だけ「助かった」と、浅ましい安堵の表情を浮かべようとした。
しかし、ルシードの次の言葉が、その僅かな希望を奈落の底へと突き落とす。
「……ですが、勘違いしないでいただきたい。
我が国の『専守防衛』の定義には――防衛対象の領域を蝕む悪意ある不純物を、領域内から『完全排除』することも含まれているのです。
あなた方は、この美しい日本国にとって、存在してはならない猛毒だ」
ルシードが、その美しい白い手袋に包まれた指を、静かにパチンと鳴らした。
その音を合図に、彼の掌の上で明滅していた『真実の天秤』から、目も眩むような黄金の幾何学的な魔法陣が、議場の床一面へと一爆発的に広がっていく。
言い逃れの余地を完全に断たれ、その醜悪な本心を日本中に晒された売国奴たちに、異世界最強の国家による、平和的かつ絶対的な「裁き」の幕が上がろうとしていた。
第6話をお読みいただき、ありがとうございました!
神条たちの醜い言い逃れがルシードの静かな怒りによって完全にへし折られ、ザーランド王国の圧倒的な軍事力の一端(魔力圧)に国会全体が震え上がるシーンを描かせていただきました。
悪役が完全に絶望したここから、いよいよ次回、プロットにある「お花畑議員の一斉国外追放(強制デトックス)」が炸裂します!




