第15話:ゲート周辺のお節介シールド
第15話をお届けします!
ついに始まった地上最悪の大氾濫。
東京が壊滅すると世界中が大騒ぎする中、ミリアの仕掛けたバリアに触れた巨大怪獣たちが、パチン、パチンとマヌケな音を立てて次々と青いエネルギー結晶(電気)に変えられていく、前代未聞の「資源回収ざまぁ」をではでは、お楽しみください!
「ブレイクまで、あと十秒! ……五、四、三、二、一――新宿ダンジョン、完全崩壊発生ッ!!」
防衛省地下作戦室のオペレーターが、悲鳴に似た叫び声を上げた。
その瞬間、日本国内のテレビ地上波、ネット配信、そして衛星放送を通じて全世界へ同時生中継されていた新宿駅前周辺の映像が、文字通り劇的に変貌した。
地鳴りではない。地球の裏側まで響き渡るような、大地そのものが引き裂かれる轟音。
新宿駅東口の広大なアスファルトが、内側から爆発するように粉々に吹き飛び、巨大な漆黒の「大穴」が口を開けた。そこから噴き出したのは、あまりにも濃密で、視界を赤黒く染め上げる魔素の奔流。
そして――。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』
地球上のどの生物とも異なる、鼓膜を直接破壊するような、凶悪極まる数万頭の魔獣の咆哮が、東京の空を支配した。
大穴の奥から津波のように湧き出してきたのは、体長数十メートルを超え、全身を戦車の装甲以上の超振動鱗で覆われたドラゴン級の飛行魔獣。地表を埋め尽くすのは、近代兵器のミサイルすら弾き返す岩石の皮膚を持った巨大怪獣、ベヒモスの群れ。
その、一頭だけでも近代国家を壊滅させかねない怪物の大軍勢が、地響きを立てて地上へと一斉に噴き出したのだ。
世界中の衛星テレビ画面の向こうでは、海外のキャスターたちが絶叫していた。
『出た!
出ました!
地上最悪の大氾濫です!
見てください、
あの圧倒的な怪物の数を! 東京は一瞬で地図から消滅するでしょう!
日本の終わりです、人類の敗北だ!』
A国やC国の軍事司令部では、将軍たちが
「今すぐ日本全土に核ミサイルを撃ち込め! 化け物が海を渡る前に、日本列島ごと消滅させるんだ!」
と、狂ったように発射ボタンへ手をかけていた。世界中が、恐怖と、ある種の残虐な興奮で完全に理性を失っていた。
しかし
その大氾濫の怪物の群れが、新宿の地上に「一歩」踏み出そうとした、まさにその瞬間。
――パチィィィィン。
それは、夏の夜、誰もが一度は耳にしたことがある、あのあまりにもマヌケで聞き馴染みのある音だった。
そう
庭先に吊るされた「電撃殺虫器」に、小さな羽虫が触れて弾けたときの、あの軽快で、どこか哀愁漂う破裂音。
新宿駅前の大穴の周囲、地上わずか数メートルの空間。
そこには、先ほどミリアが設置した、出力わずか1%の『全自動エネルギークラッキングシールド』――淡い黄金色に輝く、まるでシャボン玉のような薄い光の膜が、お椀をひっくり返したように綺麗に展開されていた。
大穴から真っ先に飛び出してきた、体長五十メートルを超える、ビルをも一撃でへし折る巨体を誇るベヒモス級の超巨大怪獣。
その怪獣が、全力の突進の勢いのまま、黄金の膜へと正面から衝突した。
通常であれば、凄まじい衝撃波で周囲のビルが吹き飛ぶはずだった。
しかし、その巨大怪獣は、黄金のシールドに鼻先が触れた――まさにその一瞬で。
何の一撃も加えることなく、何の血を流すこともなく
まるで、最初からそこに幻影でも浮かんでいたかのように、
パチン!
というマヌケな音と共に、きらきらとした綺麗な光の粒子へと完全に分解され、その巨体が空間から「一瞬」で掻き消えてしまったのだ。
「……え?」
新宿の最前線で銃を構えていた自衛隊員たちの口から、間抜けな声が漏れた。
今、何が起きたんだ?
突撃してきた最大最悪の怪獣が、バリアに触れた瞬間、何の手応えもなく消滅した。
いや、消滅したのではない。
怪獣が弾け飛んだ黄金の膜の直下、アスファルトの上。
そこには、先ほどルシードたちが新宿ダンジョンの地下でお掃除したときと同じ、親指ほどの大きさをした、青く美しく輝く四角い「エネルギー結晶」が、コンクリートの床の上にポロン……ポロン……と、マヌケな音を立てて転がっていた。
「ギャオッ――パチン!」
「グルル――パチン!」
「オオオ――パチン! パチン! パチン!」
大洪水のように大穴から無限に噴き出し続ける、数万頭の凶悪なモンスターの軍勢。
しかし、
彼らは地上に出た瞬間、ミリアが仕掛けた「全自動ゴミ箱バリア」に頭から突っ込み、一頭残らず、ただの一歩も街へ踏み出せないまま、パチン、パチン、パチン! と連続でマヌケに弾け飛び、一瞬でただの綺麗な四角い青色結晶へと変換されていく。
それはもはや、戦争でも、災害でも、パニック映画でもなかった。
それは、
最先端の超ハイテク工場で、ベルトコンベアの上を流れる不良品が、全自動のセンサーによって次々と四角い資材へとスクラップリサイクルされていく、あまりにも整然とした、シュール極まる「資源回収イベント」そのものだった。
ミリアが事前に設置しておいた、大型トラックの荷台ほどの大きさの「エネルギー回収コンテナ」の中には、上空や地表からパチンと弾けた結晶が、ジャラジャラジャラジャラ……! と、まるでパチンコ屋の大当たりか、あるいは収穫期の小豆のように、ものすごい勢いで溜まっていく。
「わあ、すごいですルシード様!
向こうから勝手に飛び込んできて、勝手にクラッキングされてコンテナの中に収まってくれます! 地球の生ゴミさんは、本当に自立心が強くてお利口さんですね!」
防衛省地下作戦室のモニターを見つめながら、ミリアはパチパチと嬉しそうに手を叩いて大はしゃぎしていた。
「そうだね、ミリア。これほど効率の良い自動分別回収は、我が国の王都でもなかなか見られないよ。地球のゴミは、本当に優秀な資源であるのだ」
ルシードも満足そうに頷き、お気に入りの和食のレシピ本をめくりながら、優雅にコーヒーを口に運んでいる。
一方、その中継映像を、人類滅亡の特番として世界中に大絶賛で生放送していた海外のテレビ局。
そして、日本を核で焼き払おうと、発射ボタンに指をかけていた大国の大統領や将軍たちは――。
「…………は?」
ホワイトハウスの作戦室で、ペンタゴンの最高司令官が、手に持っていたホットコーヒーを、自身の最高級のスラックスの上にドボドボとこぼしながら、完全に石化していた。
「バ、バカな……。
我が国の最新鋭ステルス戦闘機でも傷一つ付けられなかった、あのドラゴンの群れが……あの、蚊取り線香にかかったハエみたいに、パチンパチン消えてるだと……!?」
C国の最高指導部にいたっては、あまりの衝撃と現実の崩壊に、数人の幹部が脳溢血を起こしてその場で椅子から転げ落ちていた。
地球を滅ぼしかねない絶望のスタンピード。
世界中が日本を見捨て、嘲笑していたその最大最悪の災害が。
異世界の、お節介な少年少女が設置した「出力1%のゴミ箱バリア」の前に、ただの効率的な「電力の大量収穫イベント」へと、その概念を完全に、無慈悲に粉砕されてしまったのだ。
「す、凄い……。コンテナに溜まっていくあの結晶、全部合わせたら、日本の電気代が永久にタダになるどころか、世界中に電気を売って大儲けできるぞ……」
天野一尉が、モニターに映る「ジャラジャラと積み上がる青い宝石の山」を見つめながら、もはや乾いた笑い声を上げていた。
世界が絶句し、地球の軍事・エネルギーの常識が完全に崩壊する中、新宿駅前の「未曾有のゴミ拾い」は、誰一人傷つくことなく、あまりにも平和的に、そしてマヌケに進行していくのだった。
第15話をお読みいただき、ありがとうございました!
地球の全軍隊が絶望した怪獣の群れが、ただの「蚊取り線香にかかった羽虫」のように自動で分別リサイクルされ、コンテナにジャラジャラと溜まっていく圧倒的な格差描写、楽しんでいただけましたでしょうか。
テレビの前でコーヒーをこぼして硬直する大国たちの描写で、カタルシスが最高潮に達しています。
次回、第16話では、この数万頭の魔物が一頭も地上に出られないまま、わずか数十分で「全回収」が完了します。
新宿の街には傷一つついていないという異次元の結末に、世界中の軍事専門家たちが絶叫。そしてルシードたちは、このダンジョンをさらに便利に使うため、ゲートの真上に「あるもの」を建設し始めます!
もし今回の圧倒的なゴミ箱バリア無双が面白い、スカッとしたと感じていただけましたら、ぜひ感想の書き込みや作品への評価(ブックマーク・応援)をぜひぜひ、よろしくお願いいたします!




