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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 流山 ヱリク(旧:神田川 秋人)
第4章 世界樹奪還作戦

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第75話 世界樹




そのまま、リヴィアたち警備隊と一緒に飛竜で北西の方角に飛び続けていると、だんだんと巨大な樹木が見えるようになった。


他の木よりも圧倒的に大きく、10倍以上の大きさはある。

周囲の木々から推定した目算にはなるが、最低でも高さ200mは下らないだろう。

当然、そんな木が自然に生えてくる訳がない。


いま、目の前に見えている樹木こそ、エルフが神聖視し、母としてあがめる存在。


エルフの伝説によると、この世界が出来上がる()()()、すでに存在していたと伝わる大樹。


決して枯れず、決して傷つかず、決して燃えない。


永久不滅にして、森羅万象しんらばんしょうを見守る聖木せいぼく






すなわち、エルフにとっての絶対存在――世界樹であった。






世界樹に近づくと、人族の占領部隊を壊滅させた陸軍が建物の復旧作業を行っていた。


かつての祖国時代の建物は木造のため、約150年の時をて、そのほとんどが土へと還っていた。

しかし、つい最近まで人族が住んでいた建物は別で、石造りのそれらの建物は、世界樹のふもとのあちこちに点在している。


空軍と陸軍が世界樹を占領する人族の部隊を攻撃した際、焼夷弾しょういだんは一切使わず、風爆ふうばくの使用も最小限に留めたのは、人族が残した建物を復旧して再利用するためだ。


そのおかげもあって、半分ほどの建物はほぼ無傷で、そのまま使用できる状態となっていた。

残りの半分も復旧工事が完了次第、使えるようになるはずだ。






私とリヴィアたち警備隊は、陸軍が建設した仮設の飛行場に着陸する。


飛行場と言っても、風魔法で木を切り倒して、一角獣ユニコーンの馬力で切り株を引っこ抜いて整地しただけの、簡素な場所だが……。


それでも、小部隊が離発着するには十分だ。




「ねえ、リヒト。これが、あの世界樹なんだね……」


リヴィアが隣に近づいて来て、小声で話しかけてくる。


「ああ、やはり想像と現物はだいぶ異なる。とても巨大で存在感があるし、それに何より――」

「――不思議な力を感じる?」


私の言葉を引き取ったリヴィアに無言で頷いた。


言語化するのが難しいのだが、世界樹が視認できる距離に近づいてからというもの、不思議な安心感を感じるようになった。


例えるならば、1人で寝ている子供が悪夢を見た際、不安を抱えて枕を引きずりながら両親のベッドに潜り込み、その両腕で優しく抱き締められ、安らかな眠りを得る――そんな感覚に近かった。


私は数日後に、世界樹の()()()()を使う予定だが、その機能の存在も、この不思議な力を考えると心から信じられる気がした。


「後で少し、世界樹の幹に触れてみないか?世界樹に触ってはならない、という戒律かいりつは無かったはずだ。」

「確かに、私も触ってみたいかも……。その時はリヒト、一緒に触ろうね!」


そんな訳で、後でリヴィアと一緒に世界樹に触ってみることにした。






「リヒトさま!」


飛行場から人族が残した建物の方へと歩くと、前から筆頭秘書官であるセリカが駆け寄ってきた。


世界樹奪還作戦に際し、すぐに祖国の復興作業に移れるよう、セリカには事務官や職人たちの一部をウルスタインから世界樹に移住させる仕事を任せていた。


「セリカ、移住は順調か?」

「はい、既に第1陣は到着しており、明日には第2陣も到着予定です。協力してくれた陸軍には感謝ですね。」


河川を移動できる一角獣ユニコーンは運搬能力も優秀だ。

ウルスタインを建設する際、今の立地を選んだのは、世界樹とウルスタインが河川で繋がっているという理由も大きい。

もちろん、全てはこの日のためである。


「建国宣言のための会場準備も支障ないか?」

「そちらについてもとどこおりなく。現在、人族が建てた総督府そうとくふを改修しており、遅くとも5日後には利用可能です。」


どうやら全て順調らしい。


5日後、私はこの世界樹の麓で祖国の再興――すなわち、新生エルフ国の建国を宣言する予定だ。


これは、エルフたちに世界樹を奪還したことを強く印象付けると共に、今後の人族との戦争において、種族内を一致団結させる効果も狙っている。


今は総裁という、私個人の力によってまとまっているエルフだが、今後はそれに国家が加わることで、より一層強力な社会ができあがる。


また、国家という入れ物を作ることで、建国宣言後に予定している、()()()()の効果も大きくなる。


「ありがとう、セリカ。()()()()にも、5日後の建国宣言にはご出席いただけるよう、移動の手配を頼む。」

「承知しております。この場の陸軍を指揮しているライゼン副将補ふくしょうほに要請し、迎えの部隊を派遣してもらう予定です。」


ライゼン副将補とは、陸将のクオン、副将のレオナに次ぐ陸軍のNo.3である。

正確には、副将補は複数いるため、No.3の内の1人と言える。

ライゼン副将補は、ジンに負けないくらいの立派な体躯たいくの男で、文武両道に優れた人物である。


クオンとレオナが領都レスターの占領に忙しいため、彼にはこの場の指揮を任せていた。


「ライゼン副将補には、私からも直接挨拶しておこう。セリカ、案内を頼む。リヴィアたちもついてきてくれ。」

「承知しました。ご案内します。」


こうして、私は世界樹の麓に滞在し、5日後に迫る建国宣言の準備を進めるのだった。




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