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出会い

「まぁ、お互いまた生きて会おうぜ」


マギさんはそう言い残して、他の商人達と共に去っていった。

別れ際まで本気の勧誘は続き、最後は少し残念そうだった。


私はカイと共に灰のアジトがある五の村に向かった。


この辺りは、堕星の日にできた巨大なクレーターの中にある。そこにはあの時計塔のある街があり、その周囲には時計の文字盤のように十二の村が点在しているという。

もっとも、時計塔はクレーターの正確な中央にはなく、村の配置も文字盤を大まかになぞった程度だという。十二の村のほかにも、小さな村がいくつかあるとカイは言う。


この地に来て、初めて知った。

ここに星が落ち、そしてここから世界が変わったと。

こんな形なのも、昔の人が何かの願いを込めたのかもしれない。


こうやってカイの後を歩いていると、ミノアからナラへ向かったときのことを思い出す。

ほんの数ヶ月前のことのようなのに、もう十年が過ぎている。


「見えてきたぞ」


カイのその言葉に顔を上げると、荒野の先の高台に大きな灰色の塔が見えた。その麓には、古びた石造りの家々が立ち並んでいる。


灰。

正直あまりわかってない。

それがどういう組織なのか。

何を目的にしているのか。


私は黙ってカイの後を歩いた。


村に入ってから、しばらく大通りを歩いた。

夕日が差し込む通りは、人影もまばらで、どこか寂しく感じた。

やがて、細い裏通りを進む。

一人だと確実に迷子だ。

カイは、周囲の建物に紛れるように建つ、一軒の石造りの家の前で足を止めた。


周りを警戒するように見渡した後、静かにその扉を開けて中へ入った。

私も後に続いた。


室内は外から見たよりも広かった。

住居というよりは倉庫のようで、いくつもの木箱が置かれていた。

カイはその一つをどかした。

そして、更にその下にあった一枚の木の板を持ち上げた。


うわ。

何かで見たような。

地下へと続く隠し梯子が現れた。


古典的でありきたりだけど、案外これが確実なのかもしれない。


カイはその梯子を降りていく。

足をかけるたび、木の軋む音が響いた。

下に辿り着くと、こちらを見上げて手招きした。早く来いということだろう。


私は恐る恐る降りていく。

ふと見上げると、既に入口がずいぶん小さく見えた。

流石、謎の組織のアジトだ。


ようやく、足元に固い地面を感じた。

カイは既に少し奥にいた。

白い魔石のようなものが、ぼんやりと空間を照らしていた。

たしか、ミタの村でも見た光魔石だ。


前を歩くカイは、複雑な道を知り尽くしているかのように、迷いなく進んでいく。

地下の洞窟のような空間に足音だけが響く。

もう帰り道すらわからない。


しばらくすると、夕日のオレンジ色の光が見えてきた。

カイの後を追い、洞窟を抜けた瞬間、眩しさに思わず目を閉じた。

ゆっくりと目を開けると、そこには見覚えのある建物があった。

それは、村の奥に聳え立っていた石造りの塔だった。

振り返ると、村が眼下に広がっていた。

いつの間にこんな高いところまで来たんだろう。


再び塔に目をやる。

目立つ建物ではあるが、根元は岩山と一体になっており、守備力は高そうだ。

周囲の岩肌には、来た道と同じような洞窟の出口がいくつか見えた。

地上から来る道は見当たらない。


「ここがゴール?」

「ゴール? ああ、ここが隠れ家だ」


カイの視線は、眼下に広がる村へと向けられていた。


「かつて、この地にあった国の空の騎士達が使っていた施設だと聞いている」


なるほど。こちらから聞くまでもなく、カイが説明してくれた。

空の騎士?飛んだのか?


「行くぞ」


私の疑問を遮るように、カイは塔へと進んでいった。

気になる。

灰色の石でできたそれは、近づいてみると思っていた以上に大きい。

カイが扉を開け、その中へ入っていく。


塔の中まで迷路のようになっていた。

そろそろ疲れた。

文句が口から出そうになった頃に少し広い部屋に出た。

中では十人ほどの人が、大きな机を囲んで何やら話し合っていた。


「カイ!無事だったか?」


あれ。この声、どこかで……。

声の方へ視線を向けると、見知った赤い髪の女性がいた。


「トワ!本当に生きていた」


ライラさん。

彼女は驚いたように目を丸くしていた。


そして、彼女は静かに近づいてきて、私を抱きしめた。

細い腕なのに、抱きしめる力は強かった。

そこには、あのときと同じ温かさがあった。


「本当によかったよ」

「ライラさん、あのとき助けてくれてありがとう」

「何言ってんだよ。私がこうして生きてるのは、あんたのおかげだよ」


彼女はあの後、ワイバーンに連れ去られた私を必死に探してくれたらしい。

だけど、結局私は見つからなかった。


でも、またこうやって再会できた。


「やはり北剣の協力は得られなかったのか?」


カイに声をかけたのは、少し大柄な黒髪の男だった。


「ああ、だが、不死鳥の巫女が我々に協力してくれる」


その言葉に、歓声が沸き起こった。


「アリアを焼いた伝説の不死鳥が我々に味方してくださるなら、カサの復興も成せる!」


一人が声を上げた。

だけど、それだけじゃない。

じっと私を品定めするような目。

明らかに歓迎していない視線。

誰もが私を喜んで迎えているわけではないらしい。


それでも、ライラさんやカイには恩がある。

私にできることがあるなら、力になりたい。


「私、何をすれば?」

「そうね。まずは……ヒルマ、モメリア様をお連れして」


若い細身の男が一人、ライラさんの指示を受けて部屋を出た。


モメリア、誰だろう?

その人が来るまで、私は質問攻めにあった。

アリアのこと、ミタのこと。

私は大した答えを返せなかった。

それでも、みんなの目はキラキラしていた。


再びドアが開いた。

ヒルマが入ってくる。

その後に、一人の少女がゆっくりと姿を現した。

見たところ、私と同じくらいの歳だ。


彼女と一瞬、目が合った。


少し眠たげな、けれど吸い込まれそうなほど澄んだ青い瞳。

緩やかに波打つ長い金髪が、白いローブをまとった肩にかかっていた。

メルルのキャラデザを初めて見たとき以来の衝撃だ。


本物の美少女。


青い瞳が、再びこちらを向いた。

私は何故か、クレオパトラと出会ったカエサルの気持ちを想像していた。

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