第十七話「値踏み」
ティエスとトーリは、サキをパーティに加えた。
トーリの見立てでは、サキの不満の表明はパフォーマンス。試しに言ってみただけ。
上位の冒険者のパーティに拾われたら御の字、とでも踏んでいたのだろう。
サキは、興味深そうにティエスを観察している。
「おねーさん、強いんですかぁ?」
「私?弱いけど?」
「ですよねぇ……?」
ティエスは、ぺち、と手刀を叩きつけた。
背の低いサキの頭は、ちょうど手が届く高さにあった。
「ほんとに、ざこざこですねぇ」
サキは、おどけて受けた。
トーリは、女性陣の戯れを横目に、軽く肩をすくめた。
──言っても、聞かないだろうしねえ。
トーリは苦笑を浮かべて、受付に話しかけた。
「やあ。ご覧の通りだよ。依頼は、ある?」
「"凍獄"……、いや、助かります。私どもとしても、問題だとは認識しておりました」
オーカーは、疲れたような笑みを浮かべた。
ギルドは、下位の依頼がなくなっていることを把握している。
闇ギルドに流れる冒険者が増えていることも。
だからといって、回せる依頼がなかった。
パーティを組めば解決する。
理屈の上では、そうだ。
実際は、下位の冒険者が上位に混ざったとて、荷物持ちと使い潰されるのが関の山。
報酬も、ほとんど割り振られない。
能力の高さは、人格の良さと必ずしも関係しない。
「上位の方にお願いしたい依頼は、山ほどあるのですが──」
オーカーは、机の引き出しから数枚の書類を取り出した。
さっ、と紙を流し見ていく。
「メメント森の調査。こちらを受領していただけると助かります」
・・・・・・
メメント森。
王国が管理している、資源エリアである。
資源エリアとは。
豊富な魔素に恵まれた土地は、豊かな恵みをもたらす。
資源がよく採れるが、徘徊する魔獣も相応に手強い。したがって、一般人は立ち入り禁止となっている。
メメント森では、森や動植物由来の資源が取れた。
しかしながら、王都の薬草不足の長期化、それに伴う過剰な資源の採取。
薬草は、採れば減る。採り尽くせば、来季の生産に響く。
乱獲が問題視されており、現在は冒険者であっても立ち入りが制限されていた。
そして、もう一つ。
一週間ほど前に、このエリアに立ち入った冒険者パーティが、消息を絶っている。
・・・・・・
「Cランクの冒険者をリーダーとするパーティが、森で消息を絶っています。よって、B相当、もしくはそれ以上の脅威がメメント森に発生したものと推定しております」
オーカーは、淡々と説明を続けた。
受付の卓上に、似顔絵を三枚、並べる。
似顔絵と、名前と、ランク。
ティエスには、どれも見覚えのない顔であった。
「"凍獄"の実力に疑いの余地はありませんが──」
オーカーは、女性陣に視線を向けた。
「あたしはぁ、索敵も戦闘もぉ、できますよぉ」
サキは、にっこりと笑みを浮かべて宣言した。
「私は戦力外だな。できる範囲で協力する」
ティエスは、口元に手を当てつつ、答えた。
「おねーさん、何ができるんですかぁ?」
サキは、ティエスに顔を向けた。
「んー。荷物持ち、とか?」
ティエスは、小首を傾げた。
「あはっ♪お荷物はおねーさんの方じゃ──」
サキは口を噤んだ。両手を軽く挙げた。
殺気が駆け抜けた。
凍てつく殺意が、サキの肌を刺す。
余波を受けたオーカーが、冷や汗を流す。
「かもしれないけどさあ。戦闘の方は、トーリがなんとかしてくれるし。な?」
ティエスは、トーリに顔を向けた。
アイスブルーの瞳が、ティエスの視線に気付いて細まる。
「もちろん」
トーリは、いつも通りの笑みを浮かべて言った。
「……なるほど」
サキは呟いた。
なんか、寒いな。
ティエスは、無意識に二の腕をさすった。




