第十八話「面影」
依頼を受領したティエスたちは、冒険者ギルドの建物から外へ出た。
早朝の、新鮮な空気に、ティエスは大きく伸びをして深呼吸した。
ギルドの正面から横へ横へと視線をずらすと、駐車区間でジルがぽけーっとしている。
ティエスたちは、そちらへ歩みを進めた。
最後尾のサキは、わずかに顔を引き攣らせた。
「お待たせ」
ティエスが片手をあげて声をかけると、ジルが顔を向けた。
「依頼はありましたか?」
ジルは、無表情で返事した。
「メメント森の調査だって。森行く装備、あったっけ?」
「いくらでもあると思います」
ジルは頷くと、見慣れない人影に視線を向けた。
「ああ、パーティ組んだ。一緒に行く」
ティエスは、サキに手のひらを差し向けた。
「──はじめましてぇ。サキっていいますぅ」
サキは、笑みを作って、ぺこりと一礼した。
「はい。お嬢様のメイドです」
ジルは簡潔に返した。
「鉈。背嚢。着替え。長袖のやつね。長靴も」
ティエスが貨物室に向かおうとすると、ジルが手で制止した。
「邪魔なので客室で待っててください。トーリも。サキは、こっち」
ジルは、サキを御者台に座るよう促した。
「なんで?」
ティエスは小首を傾げた。
「王子殿下と、素性の知れない者を同席させるのはどうかと思いました」
「そういえばそうだった」
ジルの返答に、ティエスは頷いた。
「いやいや、君も貴族だからね」
トーリは苦笑を浮かべた。
「そういえばそうだった」
ティエスは頷いた。
ジルは、貨物室に入った。
サキは、ちょこんと御者台に座った。
ティエスは客室に乗り込んだ。
「着替えるんだよね?終わったら教えて」
トーリは苦笑を浮かべた。
・・・・・・
サキは御者台に座って、顔を前に向けていた。
景色は見ていない。
後ろから近付く気配を感じた。
一陣の風が吹き抜け、サキの髪を揺らした。
「さて」
声がかけられて、ジルが御者台に乗り込んだ。
「戦争は終わりました。見逃してあげます。妙な真似をしないのであれば」
サキは、ジルに視線を向けた。
ジルの横顔を見た。
「バレちゃいましたか。あたしの擬態、甘かったですか?"蛮──」
「カラミティには及びませんね」
ジルは、サキの容貌を見て、言った。
サキは言葉を止めた。
「…………そうですか」
サキは、寂しそうに笑った。
ジルは、手綱をゆらりと揺らした。
騎獣は、のっそりと立ち上がった。
騎車が動き始めた。




