第25話 デートに誘われた?
詰め寄る私に真紘は静かに口を開いた。
「莉奈、週末時間あるかな?」
「え?」
私と職員たちの声が重なった。
「一緒に出かけない?」
私は目を見開き固まった。
真紘は穏やかに微笑んでいた。
そして職員たちは、時が止まったかのようだった。
昼休みに私はいつものようにメガネちゃんと食堂に来ていた。
「莉奈さん、莉奈さん」
「え?」
「注文しないと」
「あ、そうだね。親子丼、ご飯中盛りで。小盛りにして下さい」
「はいよ、中盛りで小盛り……え!?」
食堂のおばちゃんがこっちを見た。
「何か?」
私は首を傾げた。
「莉奈さん、保食さん困ってますよ」
「保食さん?」
「食堂のおばちゃんです」
「あ、すみません。
ご飯はお餅に変更で」
「はい?」
「?」
保食さんとメガネちゃんが、何故か首を傾げながら私を見ていた。
親子丼を受け取り、メガネちゃんと共に席についた。
「莉奈さん、どうしたんですか?」
「何が?
……え? 何この親子丼。
何でお餅なの?」
「……何かあったんですか?」
「何もないよ?
午前中は先輩たちと書類整理して、真紘が会議から戻ってきて、週末二人で出かけることになって……」
「完全にそれですね」
「どれですね?」
「それ、デートですよね?」
「デート!?
あ、日付ね! Dateね」
「意味がわからないです」
「私も」
「つまり、莉奈さんは審査部統括官からデートに誘われたんですよね?」
「え!? 違うよ!」
「では、仕事ですか?」
「……違うかも」
私は俯いた。
「デートですね」
「で、でも何か別の目的とか……」
「まぁ、男女で出かけたからって、デートとは限りませんしね」
「そうだよ!」
私は社宅に帰って来て、クローゼットを開けた。
「真紘はどこ連れて行くつもりなんだろ?」
クローゼットの中を眺めながら、真紘が行きそうな場所を考えた。
「万……いや、億が一、デート……いや遊びに行くんだとしても、真紘の事だから映画とかじゃなさそう。
例えば、能や歌舞伎とか……ありえる!」
ベッドの上に先日メガネちゃんと買い物に行った際に購入した服を次々置いていく。
「それなら花柄ワンピは浮くのかな……」
「別に、気合い入れてる訳じゃないし!
ただ、買ったばかりだから着たいだけだし……」
もっとも、パジャマ以外の服は全て、先日こちらで買ったばかりなのだが。
「もーどこ行くねん?
段々腹立ってきた。
中学の時の学校指定のジャージで行ってやろうかな」
私は散乱し始めているベッドを眺めながら、少し冷静になった。
「……いや、待てよ?」
私は待ち合わせの場面を脳内でシミュレーションした。
「もし、私が中学ジャージで行ったら」
待ち合わせ場所で、壁に寄りかかり腕を組んでいる真紘。
それを眺める女子たち。
「ねー。あの人一人かな?」
「えーどうする? 声かけてみる?」
そこで私が真紘に近づく。
「何だ。女連れじゃん」
「えっ? 待ち合わせしたのあの女なんだ(笑)。何あのジャージ、ダサっ」
「……ってなるやつやん!
まぁ、中学ジャージ持ってへんねんけど」
当日。
私は待ち合わせ場所へ向かうため、家を出た。
社宅の裏手側を歩いていく。
広い道の中央には木々が植えられ、その両脇にも並木が続いていた。
風に揺れる木々の葉が、さらさらと音を立てていた。
空を見上げると、珍しく青空と太陽が垣間見えた気がした。
ショッピングモールを通り抜け、奥の出口へ向かった。
以前メガネちゃんと来た時は、正面入口から入っただけで、こちら側に出たことはなかった。
ショッピングモールのその先に何があるのか、この時の私はまだ、知らなかった。
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