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第14話 三途の川の渡し場

 白く霞んだ空だった。

 どこからともなく霧が流れていた。


 その向こうに、静かな川がある。

 本来なら、静寂という言葉が似合う場所だっただろう。


 ただ――人、人、人。


「人口密度!!」


 莉奈は思わず足を止めた。


「満月だったからですかね?」


 鈴木が辺りを見渡しながら呟いた。


「関係あるんですか?」


「さぁ?」


「何やねん!?」


 莉奈は呆れながら、もう一度川に目を向けた。


「あれ? 三途の川って花畑にあるんじゃないの?」


「そこは通常ルートの渡河地点だよ」


 真紘が落ち着いた声で答えた。


「ここも同じ川?」


「同じだよ」


 莉奈は改めて河原を見渡した。

 どこを見ても、人ばかりだった。


「……おじいちゃん、大丈夫?」


「フン、これくらいどうという事もない」


 三人は、先ほど迎えに行った対象者とともに、三途の川までやって来ていた。


 鈴木は胸に手を当てた。


「それでは我々はこちらで失礼いたします。


 この度は当局のサービスをご利用いただき、誠にありがとうございました。


 担当はこの私、鈴木がお送りいたしました」


 その顔は無駄に決まっていた。


「何のエンディングやねん!」


 おじいさんは舟に乗った。


「ご武運を」


 鈴木は神妙な面持ちで、深々と頭を下げた。


「何と戦うねん!」


 鈴木は首から下げていた通行許可証を、ベストのポケットから取り出した。


「忙しいんで、次行きましょう」


 莉奈は鈴木の通行許可証に目が釘付けになった。


 鈴木の通行許可証は、莉奈や真紘のものとは違い、社員証のような長方形のカード型をしていた。


「あれ? カードだ」


 目の前には既に領域間連絡門が現れていた。


 鈴木が先に乗り込む。


 書類を見ながら、鈴木がカード型の通行許可証を操作し始めた。


「あの、見せてもらってもいいですか?」


 一通り操作が終わったのを見届けて、莉奈が鈴木に声をかけた。


 鈴木は首に下げたまま、通行許可証を莉奈に見せた。


「カードなんですね」


「通常はカードですけど」


「え!?」


 莉奈は鈴木を見上げた。

 何故か鈴木は顔をしかめた。


(近いなーこの子。

 いや、いいんだよ別に。この子の後ろの統括官さえいなければ)


「真紘? なんで私のはカードじゃないの?」


 莉奈は真紘を振り返る。


(あれ? 俺余計な事言ってないよな?)


「莉奈は天国のお母さんに会いたいだろ?

 通常の通行許可証では天国には行けないよ」


「あ、そうなんだ」


「え? 俺行けますけど」


「?」


 莉奈は不思議そうに再び鈴木を見た。

 

(ヤバい。絶対余計な事言ったよな。俺)


「………」


「………」


 莉奈の頭の上で、鈴木と真紘が視線を交わしていた。


(何で男同士見つめ合ってんねん)


 先に口を開いたのは真紘だった。


「等級と部署によるだろ。審査部は送魂部より厳しいのかもな」


「え? 安住領域への送魂も行うのに?」


「………」


 真紘が再び黙った。

 

(あ、きっと俺また余計な事言った)


「安住……何?」 


 莉奈は首を傾げ、真紘を見上げた。


「今は気にしなくていい」


 真紘の声が一段低くなる。

 その目は鋭かった。


(あ!! そう言えば統括官も奥山さんの名前を呼び捨てしてんじゃん!!


 何なんだこの二人!? もうマジで二人でサイコポンプってくれよ!!)


 


お読みいただきありがとうございます。

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