↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/27

第10話 実録! 天国の裏側

 メガネちゃんとのランチを終え、私は審査部統括官室に戻って来た。


 真紘は、ずっと仕事をしていたのか、自分の席で書類に目を通していた。


(この人は仕事をしていないと、死んでしまう神様なのかな?)


「食堂行った?」


 真紘が顔を上げた。


「はい、総務の女の子と」


「もう友達できたの?」


 真紘が軽く目を見開いた。


「メガネちゃん」


「誰?」


「メガネの神様」


「……ああ、眼鏡さん」 


「お前も普通に知っとるんかい!」


「うん。随分昔だけど、彼女のお兄さんに仕事で眼鏡を用意してもらった事があってね」


「仕事で、眼鏡……?」


 その二つが結びつかなかった私は怪訝な顔をする。


 真紘が一瞬、黙った。


「何の眼鏡?」


 真紘は目を逸らした。


「……モノクル」


「……コスプレ?」


「違うよ」


「モノクル掛けなきゃいけない仕事って何やねん」


「……そんな時代だったんだよ」


「お前一体何歳やねん?」


「神格の中では若い方だよ」


「何、若者アピールしとんねん」


「事実だよ」


「どこ基準やねん」


「神基準だよ」


「ムキになってる?」


「なってないよ」


 いつの間にか、私が仕分けした案件は真紘の机の上に移動していた。


「莉奈が仕分けしたやつ見ておいたよ」


「でも、合っていたのかどうか……」


「まずは合ってるやつを確認していこうか」


「え? 間違ってるやつじゃなくて?」


「うん。合っているのを確実にしよう。

 正解でも迷いながら選んだのもあるだろうしね」


 私は、自分の席につき、何故こう思ったかを真紘に説明していく。


 真紘は机の横に立ち、共に書類を見ながら補足を足していく。


 今日のまぐれの判断が確実になるように。 


 私は真紘を横目で見上げた。


 人の死を軽々しく扱ってはいけない、間違った死を許してはならない、本来あるべき場所に魂を送らなければ。


 ただ、そのあるべきはずの場所、すら疑うべきだ。


 優しく微笑んでいるはずの真紘の目は、何故かそう言っているように見えた。


「後は現場を見て感覚も身につけていこうか」


「現場?」


 首を傾げながら、私は真紘と共に審査部を出た。


 昨日と同じく領域間連絡門のエレベーターに乗り、天国に来た。


 空は変わらず綺麗に晴れ渡っている。


 しかし、辺りは妙に騒がしかった。


 昨日と時間帯が違うのだろうか?


 お母さんがいる場所と違うからだろうか?


 何だか、天使が叫んでいた。


「身内の方がお亡くなりになりましたー。

 お迎えお願いできますかー?」


「俺、先月ばあちゃん迎えに行った」


 どうやら、兄弟の兄らしい。


「私も嫌だよ」


 妹らしい。


「じゃんけんで決めようぜ」


 弟のようだ。


「……天国、思ってたのと違う」


 私は顔が引きつった。


「何を期待してたの?」


「だって、イメージは急にお花畑にいて、自分を大事に思ってた人が迎えに来る、とか……」


「もちろん、そういう人たちもいるよ。

 じゃんけんもよくあるだけで」


「あるんかい!」


「こちらもお願いしますー!」


 後ろの天使も身内と思しき人に声を掛けていた。


「あー……今回はサイコポンプで!」


「指示しとる!!」


「ああ、あれもよくあるね」


「仕分けの意味!」


「ね、本当だね」


 真紘は穏やかに微笑んだ。


「……あれ? ってか何で天使いるの?」


 当たり前のように見ていたが、よく考えたらおかしい。


 白い服に、背中には翼。


 絵に描いたような天使たちが、忙しなく動き回っていた。


「通常ルートの窓口は天使がやってるよ。

 あと、三途の川を渡ってきた人の案内とかね」


「宗教ごちゃ混ぜやん」


「空の上に国境はないから」


「領空は?」


「ない」


「領土は?」


「ないって」


「EEZは?」


「海の話になってるよ」


 忙しなく動き、声をかける天使たち。


 たまにだが、何故か渋るお迎え側。


 その光景をしばらく眺めていた。


「……感動の再会は? 涙のハグは?」


「ある所にはあるよ」


「ない所もあるんかい!」


 天国に長くいれば、この世界の仕組みにも慣れていくのだろう。


 お迎えする側にとっては、これが日常らしい。


(……知りたくなかった。天国の実情)


 私は遠い目をした。


 ただ、通常ルートに関する仕分けだけは、もう間違えることはなくなった。

お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。