第9話 九年後のジオン軍
ソロモン。
ティアンム艦隊の敗走から数時間。
戦場の整理が始まる一方、ドズルは別のことが気になって仕方がなかった。
ドズル「ハマーン」
ハマーン「何でしょう」
ドズル「お前たちの軍を全部見せろ」
ハマーン「全部?」
ドズル「全部だ」
ハマーン「目的を聞いても?」
ドズル「決まってるだろ」
ドズルは格納庫の向こうに立つザクIII改を見る。
ドズル「あれだけの戦力を見せられて、軍人が気にならねえわけがねえ!」
ハマーン「なるほど」
ドズル「名前だけじゃ駄目だぞ」
ハマーン「……」
ドズル「出力、推力、装甲、武装、航続能力、センサー、運用方法」
ハマーン「かなり細かいですね」
ドズル「余すところなく全部だ!」
ハマーン「軍事機密ですが」
ドズル「お前までそれ言うのか!」
マシュマー「ハマーン様!」
ドズル「お前は黙ってろ!」
## サダラーン
ハマーンはドズルを連れて、まずネオ・ジオン艦隊旗艦へ向かった。
連絡艇の窓から巨大な艦影が見える。
ドズル「……でけえな」
ハマーン「サダラーンです」
ドズル「戦艦か?」
ハマーン「機動戦艦。艦隊旗艦であり、MS母艦でもあります」
ドズル「全長は?」
ハマーン「約五百八十メートル」
ドズル「五百八十!?」
ハマーン「はい」
ドズル「グワジンよりでかいじゃねえか!」
ハマーン「九年後ですから」
ドズル「便利だな、その言葉」
ハマーン「実際そうです」
サダラーン内部。
ドズルは艦橋を見る。
ドズル「広いな」
ハマーン「艦隊指揮を前提としています」
ドズル「MSは?」
ハマーン「多数運用可能です。格納庫、整備設備、補給設備を備えています」
ドズル「火力は?」
ハマーン「大型メガ粒子砲を中心に、複数のメガ粒子砲、対空火器、ミサイル兵装」
ドズル「メガ粒子砲が当たり前か」
ハマーン「はい」
ドズル「俺たちの時代じゃ、戦艦の主砲だぞ」
ハマーン「九年後でも戦艦の主砲です」
ドズル「そういう意味じゃねえ!」
## グワンバン級
次に映し出されたのは、巨大戦艦。
ドズル「こいつもでかい」
ハマーン「グワンバン級大型戦艦」
ドズル「何隻ある?」
ハマーン「今回転移した艦隊には三隻」
ドズル「用途は?」
ハマーン「艦隊戦、MS運用、長距離作戦」
ドズル「こいつもメガ粒子砲か」
ハマーン「当然です」
ドズル「未来じゃ実弾主砲は?」
ハマーン「補助的です」
ドズル「……ビーム兵器が完全に主役になったんだな」
ハマーン「MSも同じです」
ドズル「それを早く見せろ」
ハマーン「艦艇はもうよろしいので?」
ドズル「あとで全部見る!」
ハマーン「本当に全部見るつもりですか」
ドズル「当たり前だ!」
## エンドラ級
ハマーン「エンドラ級巡洋艦」
ドズル「十八隻だったな」
ハマーン「よく覚えていますね」
ドズル「俺を何だと思ってる」
ハマーン「軍人です」
ドズル「そうだ!」
エンドラ級が表示される。
ハマーン「ネオ・ジオン艦隊の主力巡洋艦です。全長約四百十メートル」
ドズル「巡洋艦で四百メートル?」
ハマーン「MS運用能力を持たせれば大型化します」
ドズル「何機積む?」
ハマーン「標準的には十機前後を運用可能と考えてください。任務によって変動します」
ドズル「主砲」
ハマーン「メガ粒子砲」
ドズル「またか」
ハマーン「当然です」
ドズル「対艦、対MS、MS母艦。全部一隻でやるのか」
ハマーン「それが後世の標準です」
ドズル「……欲しい」
ハマーン「すでにあります」
ドズル「俺の艦隊にだ!」
## ムサカ級
ハマーン「ムサカ級巡洋艦」
ドズル「十二隻」
ハマーン「はい」
ドズル「こいつもMS母艦?」
ハマーン「MS運用能力を持つ高速巡洋艦です」
ドズル「つまり」
ハマーン「我々の艦艇は、基本的にMSと一体で運用します」
ドズル「艦隊だけで戦う発想が薄いんだな」
ハマーン「艦艇はMSを戦場へ運び、補給し、整備し、火力支援する存在でもあります」
ドズル「なるほどな」
# MS格納庫
巨大な扉が開いた。
そこには。
宇宙世紀0079年のドズルが見たこともないMSが並んでいた。
ドズル「…………」
ハマーン「どうしました?」
ドズル「いや」
ドズルが笑う。
ドズル「楽しくなってきた」
ハマーン「子供ですか、あなたは」
# ガルスJ
ハマーン「まずガルスJ」
ドズル「いかにもジオンって顔だな」
ハマーン「全高約二十メートル。ジェネレーター出力は約二千八百キロワット級」
ドズル「待て」
ハマーン「?」
ドズル「二千八百?」
ハマーン「はい」
ドズル「ザクIIは千キロワットにも届かんぞ」
ハマーン「知っています」
ドズル「三倍近いじゃねえか!」
ハマーン「これでも特別な高級機ではありません」
ドズル「……」
ハマーン「武装はフィンガー・ランチャー」
ドズル「指が武器?」
ハマーン「はい。腕部に近接戦闘用火器を内蔵しています」
ハマーン「さらにエネルギー・ガン、ミサイル、ビーム・サーベル」
ドズル「ビーム・サーベルも標準か」
ハマーン「当然です」
ドズル「ガンダムの秘密兵器だったんだぞ」
ハマーン「九年前なら」
ドズル「それ言うの禁止にしろ!」
# ズサ
ドズル「小さいな」
ハマーン「ズサ」
ドズル「何だ、この背中」
ハマーン「ブースター・ポッドです」
ドズル「ミサイルか?」
ハマーン「大量に」
ドズル「何発?」
ハマーン「機体各部とブースターを合わせ、多数」
ドズル「多数じゃ分からん!」
ハマーン「では実際に開けましょう」
整備兵が兵装配置図を表示する。
ドズル「…………」
肩。
胸。
脚。
背部。
各所にミサイル。
ドズル「馬鹿じゃねえのか?」
ハマーン「褒め言葉として受け取っておきます」
ドズル「何でこんなに積んだ!」
ハマーン「面制圧、対艦、対MS、牽制。一度に大量の誘導兵器を投射するためです」
ドズル「ジェネレーターは?」
ハマーン「約一千八百キロワット級」
ドズル「これで?」
ハマーン「ミサイルはジェネレーター出力だけで撃つものではありませんから」
ドズル「なるほど」
# ガザD
ハマーン「ガザD」
ドズル「……曲がったぞ」
ハマーン「変形しました」
ドズル「MSが?」
ハマーン「はい」
ドズル「何のために?」
ハマーン「高速移動、巡航形態への移行です」
ドズル「MSが変形する必要あるのか?」
ハマーン「あります」
ドズル「九年で何があったんだ」
ハマーン「色々ありました」
ドズル「説明になってねえ」
ハマーン「ジェネレーター出力は約二千百キロワット級。武装はナックル・バスター、ビーム砲、ミサイルなど」
ドズル「ナックル・バスター?」
ハマーン「高出力ビーム兵器です」
ドズル「これ量産機か?」
ハマーン「はい」
ドズル「変形するビーム兵器搭載MSを量産してるのか」
ハマーン「はい」
ドズル「……未来怖えな」
# ドライセン
次の機体を見た瞬間。
ドズルが止まった。
ドズル「……」
ハマーン「どうしました?」
ドズル「こいつ」
ハマーン「ドライセンです」
ドズル「ドムだ」
ハマーン「後継思想を持つ機体です」
ドズル「やっぱりか!」
ドズルが近づく。
ドズル「いい!」
ハマーン「お気に召しましたか」
ドズル「気に入った!」
全高。
約二十二メートル。
本体重量。
約三十六トン級。
ジェネレーター出力。
約二千三百キロワット級。
総推力。
十万キログラム級。
ドズル「十万!?」
ハマーン「はい」
ドズル「ドムとは桁が違うぞ!」
ハマーン「姿勢制御能力も違います」
ハマーン「スラスターとアポジモーターによって、宇宙空間での機動方向変更が極めて速い」
ドズル「だからジムがついていけなかったのか」
ハマーン「その通りです」
武装。
ビーム・トマホーク。
ビーム・ランサー。
腕部三連装ビーム・キャノン。
トライ・ブレード。
ハマーン「トライ・ブレードは投擲式の回転兵器です」
ドズル「実弾も残ってるのか」
ハマーン「用途があるものは残ります」
ドズル「全部ビームになったわけじゃねえんだな」
ハマーン「兵器は流行ではありませんから」
ドズル「いいこと言うな」
ドズルはドライセンを見上げる。
ドズル「これ、俺に一機くれ」
ハマーン「嫌です」
ドズル「即答!?」
# ザクIII
そして。
ドズルが最も楽しみにしていた機体。
ドズル「来たな」
ハマーン「ザクIII」
ドズル「ザク!」
ハマーン「ザクです」
ドズル「III!」
ハマーン「IIIです」
ドズル「IIの次は?」
ハマーン「色々ありました」
ドズル「IIの次がIIIじゃねえのか!」
ハマーン「歴史とはそういうものです」
全高。
約二十一メートル。
ジェネレーター出力。
約二千百キロワット級。
推力。
十万キログラム級。
センサー有効半径。
一万メートルを大きく超える。
ドズル「ザクIIと比べるな」
ハマーン「比較しますか?」
ドズル「怖いけどやれ」
画面に並ぶ。
ザクII。
ジェネレーター出力、約九百七十キロワット級。
ザクIII。
約二千百キロワット級。
ドズル「二倍以上」
ハマーン「単純に出力だけ比較してはいけません」
ドズル「まだあるのか」
ハマーン「推進系、姿勢制御、センサー、火器管制、装甲材、操縦系統」
ドズル「全部違う?」
ハマーン「全部です」
ドズル「……同じザクって名前なのに」
ハマーン「思想を継承しているのです」
武装。
口吻部ビーム砲。
腰部ビーム砲。
ビーム・ライフル。
ビーム・サーベル。
各種オプション兵装。
ドズル「口から撃つのか?」
ハマーン「撃ちます」
ドズル「腰からも?」
ハマーン「撃ちます」
ドズル「ライフルも?」
ハマーン「あります」
ドズル「ビーム・サーベルも?」
ハマーン「当然」
ドズル「火力盛りすぎだろ!」
# ザクIII改
マシュマー「そして!」
ドズル「出たな」
マシュマー「我がザクIII改!」
ハマーン「マシュマー、私が説明する」
マシュマー「はっ!」
ドズル「お前が説明すると長そうだからな」
マシュマー「何を!」
ハマーン「改良型です。推進力、運動性能を強化」
ドズル「だからガンダムをあそこまで一方的にやれたのか」
ハマーン「機体差だけではありません」
マシュマーが胸を張る。
ハマーン「マシュマー自身の能力もあります」
マシュマー「ハマーン様!」
ドズル「嬉しそうだな」
マシュマー「当然です!」
ドズル「でもガンダムを倒したのは見事だったぞ」
マシュマー「!」
ドズル「あれは文句なくお前の勝ちだ」
マシュマー「ドズル閣下……!」
ハマーン「泣くな」
# バウ
ドズル「こいつは?」
ハマーン「バウ」
ドズル「また変形か」
ハマーン「それだけではありません」
機体が。
分離する。
ドズル「…………」
上半身。
バウ・アタッカー。
下半身。
バウ・ナッター。
ドズル「割れたぞ!」
ハマーン「分離です」
ドズル「MSを上下で割る必要があるのか!?」
ハマーン「あります」
ドズル「本当か!?」
ハマーン「設計者に聞いてください」
武装。
ビーム・ライフル。
ビーム・サーベル。
腕部グレネード。
シールド内蔵メガ粒子砲。
ドズル「盾からも撃つのか」
ハマーン「盾だから攻撃してはいけないという決まりはありません」
ドズル「未来人、欲張りだな」
# ドーベン・ウルフ
次。
ドズルが。
また止まった。
ドズル「何だこれは」
ハマーン「ドーベン・ウルフ」
ドズル「でかい」
ハマーン「全高約二十二メートル」
ドズル「重そうだ」
ハマーン「重装甲・重武装機です」
ジェネレーター出力。
約五千二百キロワット級。
ドズル「…………」
ハマーン「どうしました?」
ドズル「五千?」
ハマーン「はい」
ドズル「さっきのザクIIIが二千百だぞ」
ハマーン「はい」
ドズル「ガンダムは?」
ハマーン「約千四百キロワット級」
ドズル「ガンダム四機分近いじゃねえか!」
ハマーン「単純比較なら」
武装表示。
胸部メガ粒子砲。
腹部メガ粒子砲。
肩部ビーム砲。
ビーム・ライフル。
ビーム・サーベル。
グレネード。
ミサイル。
インコム。
有線式兵器。
ドズル「待て待て待て」
ハマーン「まだあります」
ドズル「まだあるのか!?」
ハマーン「あります」
ドズル「一機に何個武器付ける気だ!」
ハマーン「付けられるだけ」
ドズル「設計思想が馬鹿だろ!」
ハマーン「火力集中型です」
ドズル「こいつ一機とガンダム十機なら?」
ハマーン「条件にもよりますが、ガンダム側は非常に厳しいでしょう」
ドズル「五十機なら?」
ハマーン「ようやく数が問題になってきます」
ドズル「……」
ドズルはドーベン・ウルフを見上げる。
ドズル「これ量産するの?」
ハマーン「しています」
ドズル「やっぱ未来怖え」
# ゲーマルク
そして。
格納庫の奥。
キャラ「私の!」
ドズル「一番怖いやつ来たな」
キャラ「ゲーマルク!」
ドズル「三百十九機」
キャラ「うん!」
ドズル「もう覚えた」
ハマーン「ゲーマルク」
全高。
約二十五メートル。
ジェネレーター出力。
約八千三百キロワット級。
ドズル「…………」
ハマーン「八千三百キロワット級です」
ドズル「聞こえてる」
ハマーン「では」
ドズル「理解したくねえだけだ」
ザクII。
約九百七十。
ガンダム。
約千四百。
ザクIII。
約二千百。
ドーベン・ウルフ。
約五千二百。
ゲーマルク。
約八千三百。
ドズル「発電所でも積んでんのか?」
キャラ「強いよ!」
ドズル「知ってる!」
武装表示。
胸部ハイパー・メガ粒子砲。
全身各部メガ粒子砲。
ビーム砲。
ビーム・サーベル。
マザー・ファンネル。
二基。
そして。
マザー・ファンネルから展開される。
チルド・ファンネル。
ドズル「つまり」
ハマーン「はい」
ドズル「本体だけでも大量のビーム砲」
ハマーン「はい」
ドズル「そこから二個の大型ファンネル」
ハマーン「はい」
ドズル「さらにそこから小型ファンネル」
ハマーン「はい」
ドズル「だから攻撃方向が分からなかったのか」
ハマーン「そうです」
キャラ「前も後ろも上も下も撃てるよ」
ドズル「ジム側からしたら悪夢だな」
ハマーン「実際そうだったでしょう」
ドズル「四百二十一機で駄目だった理由が分かった」
ハマーン「数だけでは包囲になりません」
ドズル「攻撃方向の数が違うんだな」
ハマーン「その通りです」
ドズル「……これも量産?」
ハマーン「量産向きではありません」
ドズル「良かった!」
キャラ「何で!?」
# キュベレイ
最後。
白いMS。
ハマーン「キュベレイ」
ドズル「お前のか」
ハマーン「はい」
全高。
約十八・九メートル。
ジェネレーター出力。
約千八百キロワット級。
ドズル「意外と低いな」
ハマーン「出力だけでMSの強さは決まりません」
ドズル「ゲーマルクの四分の一以下だぞ」
ハマーン「その通り」
ドズル「なのに強い?」
ハマーン「強いです」
キャラ「ハマーン様だから!」
ハマーン「それもある」
ドズル「自分で言うのか」
ハマーン「事実です」
武装。
ビーム・サーベル兼用ビーム・ガン。
そして。
ファンネル。
十基。
ドズル「十個」
ハマーン「はい」
ドズル「ゲーマルクより少ない」
ハマーン「火力の思想が違います」
ドズル「どう違う」
ハマーン「ゲーマルクは圧倒的な火力を多方向へばら撒ける」
ハマーン「キュベレイは」
ハマーンが自機を見る。
ハマーン「必要な場所へ」
ハマーン「必要な瞬間に」
ハマーン「必要な一撃を入れる」
ドズル「お前が操作するからか」
ハマーン「そうです」
ドズル「じゃあゲーマルクとキュベレイ、どっちが強い」
キャラ「ゲーマルク!」
マシュマー「ハマーン様のキュベレイに決まっている!」
キャラ「何よ!」
マシュマー「何だ!」
ハマーン「やめろ」
二人「はい」
ドズル「お前の部下、面倒くせえな」
ハマーン「否定しません」
# 装甲
ドズル「装甲は?」
ハマーン「多くの機体でガンダリウム系合金が使われています」
ドズル「ガンダリウム?」
ハマーン「この時代でいうルナ・チタニウム系技術の発展形と考えてください」
ドズル「ガンダムの装甲か!」
ハマーン「系譜としては」
ドズル「それをジオンが使ってる?」
ハマーン「九年後には敵味方双方で技術が拡散しています」
ドズル「敵の技術でも使うのか」
ハマーン「優秀なら」
ドズル「それでいい」
ハマーン「意外ですね」
ドズル「兵器に敵も味方もあるか。強けりゃ研究する」
ハマーン「同感です」
# コックピット
ハマーン「中も見ますか?」
ドズル「当たり前だ!」
ドライセンのコックピット。
ドズルが入る。
そして。
止まった。
ドズル「前が全部見える」
ハマーン「全天周囲モニター」
ドズル「後ろも?」
ハマーン「見えます」
ドズル「下も?」
ハマーン「見えます」
ドズル「……ずるくねえか?」
ハマーン「何がです?」
ドズル「ザクなんか覗き窓みたいなモニターだぞ!」
ハマーン「時代です」
ドズル「またそれか!」
ハマーン「リニアシートによって衝撃も軽減します」
ドズル「操縦系は?」
ハマーン「コンピューター支援が大幅に進歩しています」
ドズル「つまりパイロットが全部手でやらなくていい?」
ハマーン「そうです」
ハマーン「姿勢制御」
ハマーン「照準補正」
ハマーン「推進制御」
ハマーン「機体状態管理」
ハマーン「火器管制」
ハマーン「各種警告」
ハマーン「すべて高度化しています」
ドズル「……」
ハマーン「だから」
ハマーンはザクIIIを見る。
ハマーン「九年後のMSに乗った平均的な兵士でも」
ハマーン「この時代のMSから見れば」
ハマーン「異常に速く見える」
# 九年間
ドズルは。
格納庫を見渡した。
ガルスJ。
ズサ。
ガザD。
ドライセン。
ザクIII。
ザクIII改。
バウ。
ドーベン・ウルフ。
ゲーマルク。
キュベレイ。
そのどれもが。
0079年では。
理解し難い兵器だった。
ドズル「なあ、ハマーン」
ハマーン「はい」
ドズル「俺は最初」
ハマーン「?」
ドズル「お前たちが強いのは、パイロットが化け物だからだと思ってた」
キャラ「化け物?」
ドズル「お前はちょっと化け物だ」
キャラ「失礼ね!」
ハマーン「続けてください」
ドズル「でも違うな」
ハマーン「はい」
ドズル「機体だけでも違う」
ハマーン「はい」
ドズル「ジェネレーター」
ハマーン「はい」
ドズル「推力」
ハマーン「はい」
ドズル「姿勢制御」
ハマーン「はい」
ドズル「センサー」
ハマーン「はい」
ドズル「装甲」
ハマーン「はい」
ドズル「武器」
ハマーン「はい」
ドズル「コンピューター」
ハマーン「はい」
ドズル「コックピット」
ハマーン「はい」
ドズル「全部だ」
ハマーン「その通りです」
ドズル「だから」
ドズルは。
マシュマーのザクIII改を見る。
ドズル「アムロには見えていた」
ハマーン「ええ」
ドズル「でもガンダムが動けなかった」
ハマーン「その通りです」
ドズル「ティアンムのジムも同じ」
ハマーン「はい」
ドズル「パイロットが照準を合わせて」
ドズル「引き金を引いて」
ドズル「ビームが出て」
ドズル「その間に」
ハマーン「我々は動けます」
ドズル「撃たれてから避けられる」
ハマーン「この時代のMSが相手なら」
ドズル「……」
ドズルが。
笑った。
ドズル「そりゃ勝てねえわ」
## だが
ドズル「よし」
ハマーン「?」
ドズル「これを全部作るぞ」
ハマーン「無理です」
ドズル「早えよ!」
ハマーン「無理なものは無理です」
ドズル「設計図があるだろ!」
ハマーン「設計図だけでは兵器は作れません」
ドズル「工場がある!」
ハマーン「その工場が作れません」
ドズル「何?」
ハマーン「工作機械」
ハマーン「材料精製」
ハマーン「半導体」
ハマーン「センサー」
ハマーン「制御装置」
ハマーン「高出力ジェネレーター」
ハマーン「推進器」
ハマーン「ガンダリウム系合金」
ハマーン「サイコミュ」
ハマーン「精密加工」
ハマーン「品質管理」
ハマーン「どれも0088年の産業基盤を前提としています」
ドズル「……」
ハマーン「ザクIIの工場へザクIIIの設計図を持っていっても」
ハマーン「ザクIIIは出てきません」
ドズル「じゃあどうする」
ハマーン「工場を作ります」
ドズル「!」
ハマーン「正確には」
ハマーン「未来のMSを作る前に」
ハマーン「未来のMSを作れる工業力を」
ハマーン「作る」
ドズル「どれくらいかかる」
ハマーン「それをこれから調べます」
ドズル「一年?」
ハマーン「全部を完全再現するなら、そう簡単ではありません」
ドズル「三年?」
ハマーン「設備と人材と資源次第です」
ドズル「……」
ハマーン「ただし」
ドズル「何だ」
ハマーン「我々は未来を一から研究する必要がありません」
ドズル「設計図がある」
ハマーン「はい」
ドズル「完成品もある」
ハマーン「はい」
ドズル「技術者もいる」
ハマーン「はい」
ドズル「失敗した研究も知ってる」
ハマーン「それが大きい」
ドズル「つまり」
ハマーン「九年分の試行錯誤を」
ハマーン「ある程度飛ばせます」
ドズルが。
笑った。
ドズル「面白え」
ハマーン「?」
ドズル「MSだけじゃねえ」
ハマーン「そうです」
ドズル「九年後の軍隊が来たんじゃない」
ハマーン「……」
ドズル「九年後の技術そのものが来たんだ」
ハマーン「その認識でいいでしょう」
ドズルは。
格納庫に並ぶ未来のMSを。
もう一度見る。
そして。
言った。
ドズル「増援なんてものじゃねえな」
ハマーン「はい」
ドズル「九年後のジオン軍を」
ドズルは笑う。
ドズル「そのまま一年戦争へ持ってきやがった」
## 第9話 完




