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5/22

第5話 ティアンム艦隊の危機

地球連邦軍ソロモン攻略艦隊。


その司令部では、数分前まで勝利を疑う者はほとんどいなかった。


ソロモンの防衛線は崩れつつある。


ジオン軍の抵抗は激しい。


ビグ・ザムという想定外の巨大MAも出現した。


それでも、連邦軍には圧倒的な数があった。


そして何より。


ソロモンはすでに落ちかけていた。


そこへ突然現れたのが――


正体不明の艦隊だった。


---


## 増え続ける損害


オペレーター「MS損失、百八十七!」


ティアンム「敵損害は!」


オペレーター「撃破確認、依然としてゼロ!」


ティアンム「損傷機は!」


オペレーター「複数確認しています! しかし戦闘不能となった機体は確認できません!」


ティアンム「……」


ティアンムは戦術モニターを見る。


最初は局地的な異常だと思った。


一機の巨大MS。


ゲーマルク。


あれが異常に強い。


それだけなら理解できる。


ビグ・ザムのような試作兵器。


あるいは。


ガンダムのような特別な機体。


戦場では時に、そういう存在が現れる。


だが。


違った。


---


オペレーター「第十八GM隊、敵MS十二機と交戦!」


ティアンム「こちらの数は!」


オペレーター「五十六機!」


ティアンム「なら包囲しろ!」


オペレーター「すでに包囲しています!」


ティアンム「よし!」


十数秒。


オペレーター「第十八GM隊、損失十一!」


ティアンム「敵は!」


オペレーター「損失なし!」


さらに十数秒。


オペレーター「損失十九!」


ティアンム「……」


オペレーター「二十六!」


ティアンム「敵は!」


オペレーター「損失なし!」


ティアンム「何をやっている!」


オペレーター「敵が速すぎます!」


---


## ドライセン


五十六機のジム。


対する。


十二機のドライセン。


数では連邦軍が圧倒している。


四倍以上。


だが。


戦場では。


そうなっていなかった。


連邦兵「三機で一機を狙え!」


連邦兵「了解!」


三機のジムが、一機のドライセンへ照準を向ける。


一機目。


照準。


二機目。


照準。


三機目。


射線を確保。


連邦兵「撃て!」


ビーム。


だが。


そこに。


ドライセンはいない。


連邦兵「消えた!?」


連邦兵「上だ!」


振り向く。


遅い。


ビーム。


一機撃破。


ドライセンが反転。


二機目。


撃破。


三機目がようやく照準を合わせる。


連邦兵「今度こそ!」


ドライセンは、ジムが撃つまで待った。


発射。


回避。


連邦兵「避け――」


撃破。


ドライセン兵「三機」


別のドライセン兵「こっちは五機」


ドライセン兵「突出するなよ」


別のドライセン兵「分かってる」


まるで。


普通の会話だった。


---


## 同時攻撃にならない


ティアンム「一機を十機で囲め!」


参謀「すでに実行しています!」


ティアンム「ならなぜ落とせん!」


参謀「同時に攻撃できていません!」


ティアンム「十機いるんだぞ!」


参謀「十機すべてが同じ射線を取れば、味方が邪魔になります!」


ティアンム「分かっている!」


参謀「敵はそこを利用しています!」


戦術モニター。


十機のジム。


一機のドライセン。


確かに囲んでいる。


だが。


実際に射撃できるのは。


二機。


三機。


ドライセンが位置を変える。


今度は別の二機。


その間に。


一機。


撃破。


また位置を変える。


一機。


撃破。


十対一。


なのに。


実際には。


一対一。


一対二。


それを。


何度も繰り返している。


ティアンム「……こちらの数が生きていない」


参謀「はい」


---


## ゲーマルク


そして。


最も深刻なのは。


ゲーマルクだった。


キャラ「まだ来るの?」


ゲーマルクの前方。


新たなGM隊。


百二十機。


ティアンムは判断していた。


一機が強いなら。


数で押す。


百二十機。


これなら。


一機程度。


どうにかなる。


キャラ「いっぱい来た」


キャラは笑う。


キャラ「ハマーン様」


ハマーン「何だ」


キャラ「全部やっていい?」


ハマーン「攻撃してくる者だけだ」


キャラ「逃げたら?」


ハマーン「追うな」


キャラ「武器を捨てたら?」


ハマーン「撃つな」


キャラ「分かった!」


通信終了。


キャラ「じゃあ」


ゲーマルク。


正面。


百二十機。


キャラ「始めよっか」


---


胸部メガ粒子砲。


発射。


密集していたジム隊。


光が通過する。


十一機。


消滅。


連邦兵「散開!」


ジム隊が散る。


正しい。


密集すれば。


大型ビーム兵器の餌になる。


だが。


散開した瞬間。


別の問題が起こる。


マザー・ファンネル。


展開。


そこから。


チルド・ファンネル。


さらに展開。


連邦兵「何だ!?」


連邦兵「敵機から何か出た!」


連邦兵「小型機多数!」


ビーム。


一機。


ビーム。


一機。


別方向。


二機。


さらに。


背後。


一機。


連邦兵「後ろから撃たれた!」


連邦兵「敵は正面だぞ!」


連邦兵「違う!」


連邦兵「周り全部だ!」


---


## 全周囲


ゲーマルク。


正面。


右。


左。


上。


下。


後方。


攻撃方向という概念そのものが。


0079年のMSとは違う。


キャラ「そこ」


撃破。


キャラ「そっち」


撃破。


キャラ「あ、逃げた」


一機のジムが武器を捨てて離脱する。


キャラは撃たない。


キャラ「それはいい」


別のジムがビームスプレーガンを向ける。


キャラ「でも」


ファンネル。


背後。


撃破。


キャラ「そっちは駄目」


---


戦闘開始。


一分。


百二十機。


残存九十一。


二分。


残存七十三。


三分。


残存五十四。


連邦兵「無理だ!」


連邦兵「距離を取れ!」


連邦兵「どこへ取るんだ!」


連邦兵「ファンネルが来る!」


連邦兵「何だよファンネルって!」


誰も。


答えられない。


---


## ティアンム


オペレーター「ゲーマルクと交戦中の百二十機!」


ティアンム「どうなった!」


オペレーター「撃破……七十二!」


ティアンム「七十二!?」


オペレーター「さらに増えています!」


ティアンム「敵機は!」


オペレーター「健在!」


ティアンム「損傷は!」


オペレーター「確認できません!」


ティアンム「百二十機だぞ……」


参謀「中将」


ティアンム「何だ」


参謀「追加部隊を送りますか?」


ティアンムは。


答えなかった。


数分前なら。


即答していた。


送る。


二百機。


三百機。


数で押し潰す。


だが。


今は。


違う。


ティアンム「……送ってどうする」


参謀「中将?」


ティアンム「百二十機で駄目なら二百機か?」


参謀「……」


ティアンム「二百機で駄目なら五百機か?」


参謀「……」


ティアンム「その間に何機死ぬ」


誰も答えない。


---


## 112


ゲーマルク。


戦闘終了。


最初に接近した。


百二十機。


撃破。


百十二機。


残る。


八機。


その八機は。


武装を捨て。


戦場から離れていく。


キャラ「終わり?」


通信士「敵部隊、戦闘を放棄!」


キャラ「じゃあ終わり」


キャラは追わない。


ゲーマルク。


無傷。


---


サダラーン。


オペレーター「ゲーマルク、敵MS百二十機と交戦」


ハマーン「結果は」


オペレーター「百十二機撃破」


ハマーン「残りは」


オペレーター「八機。武装放棄後、離脱」


ハマーン「追撃不要」


オペレーター「はっ」


ハマーン「キャラに帰還を――」


少し考える。


ハマーン「いや」


オペレーター「?」


ハマーン「まだいい」


---


## 艦隊戦


ティアンム艦隊にとって。


さらに悪いことが起きる。


これまで。


未来のMS隊は。


主として連邦MSを相手にしていた。


しかし。


MS部隊の迎撃能力が低下したことで。


ネオ・ジオンのMSが。


艦隊へ到達し始める。


連邦兵「敵MS、艦隊防衛線突破!」


ティアンム「対空砲火!」


連邦兵「撃っています!」


ズサ。


大量のミサイル。


ただし。


艦橋ではない。


推進部。


砲塔。


MSカタパルト。


戦闘能力を奪う場所。


サラミス級。


主砲破壊。


別艦。


推進器破壊。


マゼラン級。


MS運用区画損傷。


連邦兵「敵が艦を沈めていません!」


ティアンム「何?」


連邦兵「攻撃箇所が限定されています!」


参謀「戦闘能力だけを奪っている……?」


ティアンム「余裕があるということか」


参謀「……そのように見えます」


ティアンム「ふざけるな」


だが。


否定できない。


---


## 数字


損害報告。


オペレーター「連邦MS、撃破及び戦闘不能二百八十四!」


オペレーター「三百突破!」


オペレーター「三百四十七!」


時間とともに。


増える。


一方。


オペレーター「正体不明部隊、MS撃破……一機!」


ティアンム「!」


初めて。


敵を落とした。


ティアンム「どの機体だ!」


オペレーター「ガルスJと思われる機体!」


ティアンム「そうか!」


ほんの一瞬。


艦橋に。


安堵。


しかし。


続報。


オペレーター「撃破した部隊は?」


別のオペレーターが答える。


オペレーター「ジム九機を喪失しています」


沈黙。


一機。


落とすために。


九機。


---


さらに。


オペレーター「敵MS二機目撃破!」


ティアンム「こちらの損害は!」


オペレーター「十四機!」


ティアンム「……」


参謀「中将」


ティアンム「分かっている」


これは。


交換比率の問題ではない。


戦争として。


成立していない。


---


## 421


その時。


レーダー士官が報告する。


オペレーター「中将!」


ティアンム「何だ!」


オペレーター「第七、第九、第十四MS群を再編しました!」


ティアンム「数は!」


オペレーター「四百二十一機!」


ティアンム「……」


大兵力。


ティアンム艦隊に残された。


まとまったMS戦力。


参謀「これを正体不明艦隊の主力へぶつけます」


ティアンム「待て」


参謀「中将?」


ティアンムは。


ゲーマルクの表示を見る。


ティアンム「……あの大型機はどこだ」


オペレーター「敵艦隊前方にいます」


ティアンム「四百二十一機を」


言葉が。


止まる。


さっき。


百二十機。


百十二機撃破。


八機。


逃亡。


ティアンム「……」


参謀「中将」


ティアンム「四百二十一機を一機にぶつけるのか?」


参謀「一機ではありません。周辺に敵MS部隊も――」


オペレーター「敵大型機、前進!」


ティアンム「何?」


---


ゲーマルク。


再び。


前へ。


キャラ「またいっぱい」


通信。


ハマーン「キャラ」


キャラ「ハマーン様!」


ハマーン「敵は四百を超えている」


キャラ「うん」


ハマーン「無理をする必要はない」


キャラ「大丈夫」


ハマーン「キャラ」


キャラ「はい」


ハマーン「半分でいい」


キャラ「え?」


ハマーン「半分落とせば戻れ」


数秒。


キャラが。


笑う。


キャラ「分かった!」


---


ティアンム艦隊。


オペレーター「敵大型MS!」


ティアンム「どうした!」


オペレーター「単機で接近!」


ティアンム「単機?」


オペレーター「はい!」


ティアンム「こちらは四百二十一機だぞ」


オペレーター「はい」


ティアンム「他の敵MSは!」


オペレーター「援護位置に留まっています!」


ティアンム「……」


理解したくなかった。


だが。


意味は。


一つしかない。


ティアンム「一機で十分だと」


参謀「中将?」


ティアンム「向こうは」


戦術モニター。


四百二十一。


対。


一。


ティアンム「そう判断している」


---


キャラ「じゃあ」


ゲーマルク。


全兵装。


起動。


マザー・ファンネル。


展開。


チルド・ファンネル。


展開。


胸部。


メガ粒子砲。


照準。


キャラ「半分ね」


そして。


四百二十一機のジムへ。


突入する。


---


最初の一撃。


三十四機。


---


ティアンム「…………」


二撃目。


二十九機。


---


参謀「…………」


三撃目。


三十一機。


---


戦闘開始。


五分。


---


オペレーター「損失九十四!」


ティアンム「敵機は!」


オペレーター「健在!」


---


八分。


損失。


百四十九。


---


十 分。


百八十八。


---


十一分四十二秒。


---


オペレーターの声が。


震える。


オペレーター「二百七……」


ティアンム「何?」


オペレーター「四百二十一機中……二百七機撃破!」


ティアンム「……」


オペレーター「残存部隊、戦闘継続困難!」


---


ゲーマルク。


停止。


キャラ「二百七」


通信。


キャラ「ハマーン様!」


ハマーン「聞いている」


キャラ「半分!」


ハマーン「よくやった」


キャラ「もう一回言って!」


ハマーン「帰還しろ」


キャラ「えー!」


ハマーン「キャラ」


キャラ「はい」


ハマーン「よくやった」


キャラ「はいっ!」


ゲーマルク。


反転。


---


ティアンムは。


その光景を。


見ていた。


敵大型MSは。


追撃してこない。


四百二十一機。


その半分を。


本当に。


一機で落とした。


そして。


帰っていく。


命令された仕事を。


終えたから。


---


ティアンム「……我々は」


参謀「中将?」


ティアンム「何と戦っている」


誰も。


答えられない。


---


## ソロモン攻略軍


損害。


MS。


急増。


艦艇。


戦闘能力低下。


そして。


ソロモン。


陥落していない。


ビグ・ザム。


健在。


ドズル・ザビ。


生存。


ガンダム。


消息不明。


さらに。


正体不明のジオン系艦隊。


ほぼ無傷。


ティアンムは。


ようやく。


戦場全体を見る。


勝利目前だった。


はずだった。


それが。


わずかな時間で。


完全に。


逆転している。


参謀「中将」


ティアンム「何だ」


参謀「このまま戦闘を継続した場合」


ティアンム「……」


参謀「ソロモン攻略軍は」


言葉を選ぶ。


だが。


他に。


言い方がない。


参謀「消滅します」


沈黙。


---


ティアンムは。


目を閉じた。


そして。


開く。


ティアンム「全軍に通達」


オペレーター「はっ!」


ティアンム「ソロモンへの攻撃を中止」


艦橋。


誰も。


声を出さない。


ティアンム「全艦隊」


一度。


息を吐く。


ティアンム「後退せよ」


オペレーター「撤退……ですか?」


ティアンム「違う」


オペレーター「?」


ティアンムは。


戦術モニターを見る。


崩壊した。


ソロモン攻略艦隊。


ティアンム「これは撤退ではない」


そして。


はっきりと言った。


ティアンム「敗走だ」


## 第5話 完

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