第4話 未来のジオン
ソロモン。
戦闘は、まだ終わっていなかった。
ビグ・ザムが帰還する。
その後ろには、ザクIII改。
さらにそのザクIII改は、両腕を失ったRX-78-2 ガンダムを曳航していた。
ソロモンの兵士たちが、その光景を呆然と見つめる。
兵士「ガンダムだ……」
兵士「捕まえたのか?」
兵士「誰が?」
兵士「あのザクだ」
兵士「ザク?」
兵士「あんなザク、見たことあるか?」
兵士「ない」
巨大なビグ・ザムが格納庫へ収容される。
続いてザクIII改。
最後に、戦闘不能となったガンダムが固定された。
ハッチが開く。
ドズル・ザビが降りてくる。
ドズル「おい! あのザクのパイロットはどこだ!」
整備兵「ただいま降ります!」
ザクIII改のコックピットが開いた。
一人の男が姿を現す。
マシュマー・セロ。
マシュマーはドズルを見つけると、すぐに姿勢を正した。
マシュマー「ドズル・ザビ中将閣下!」
ドズル「お前がマシュマーか」
マシュマー「はっ! ネオ・ジオン所属、マシュマー・セロであります!」
ドズル「…………」
ドズルはマシュマーを見る。
そして。
ザクIII改を見る。
もう一度。
マシュマーを見る。
ドズル「本当にジオン兵なのか?」
マシュマー「もちろんであります!」
ドズル「ネオ・ジオンとか言ってたな」
マシュマー「はい!」
ドズル「そんな軍は知らん」
マシュマー「…………」
ドズル「それに、あの機体」
マシュマー「ザクIII改であります!」
ドズル「IIIって何だ」
マシュマー「ザクIIIの――」
ドズル「違う。何でIIIなんだ」
マシュマー「…………」
ドズル「ザクIIの次だからIIIか?」
マシュマー「その通りであります!」
ドズル「ザクIIIなんか作ってないぞ」
マシュマー「…………」
ドズル「誰が作った?」
マシュマー「…………」
ドズル「どこの工廠だ?」
マシュマー「…………」
ドズル「何で黙る」
マシュマー「軍事機密であります!」
ドズル「またそれか!」
マシュマー「申し訳ありません!」
ドズル「俺は宇宙攻撃軍司令官だぞ!」
マシュマー「存じております!」
ドズル「だったら話せ!」
マシュマー「ハマーン様の許可が必要であります!」
ドズル「だから、そのハマーンって女は何者なんだ!」
マシュマー「ハマーン・カーン様であります!」
ドズル「名前はもう聞いた!」
マシュマー「ネオ・ジオンを率いる偉大なるお方です!」
ドズル「だからネオ・ジオンって何なんだ!」
マシュマー「…………」
ドズル「…………」
マシュマー「軍事機密であります!」
ドズル「便利だな、その言葉!」
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## 捕虜
ガンダムのコックピットが開かれる。
ジオン兵たちが銃を構える。
アムロ・レイが両手を上げて出てきた。
ドズルが見る。
ドズル「こいつがガンダムのパイロットか?」
兵士「はい!」
ドズル「……子供じゃねえか」
マシュマー「そうですね」
ドズル「知ってたのか?」
マシュマー「名前は」
ドズル「名前?」
マシュマー「アムロ・レイ」
アムロがマシュマーを見る。
アムロ「どうして僕の名前を知ってる?」
マシュマー「…………」
ドズル「答えろ」
マシュマー「軍事機密であります!」
ドズル「それで全部押し通すつもりか!」
マシュマー「ハマーン様から許可をいただいておりませんので!」
ドズル「もういい!」
ドズルはアムロを見る。
特別な感慨はない。
目の前にいるのは、ビグ・ザムを追い詰めた敵兵。
それだけだ。
ドズル「身体検査して営倉へ入れろ」
兵士「はっ!」
アムロ「……」
ドズル「ガンダムは分解するな。技術部に調べさせろ」
整備兵「了解!」
マシュマー「それがよろしいかと」
ドズル「お前、何で偉そうなんだ」
マシュマー「申し訳ありません!」
ドズル「それと」
マシュマー「はっ!」
ドズル「助かった」
マシュマーの表情が変わる。
ドズル「お前が来なかったら、俺はやられていた」
マシュマー「……」
ドズル「礼を言う」
マシュマー「もったいなきお言葉!」
ドズル「それにガンダムまで捕まえた」
マシュマー「はっ!」
ドズル「大したもんだ」
マシュマー「ハマーン様の騎士として当然のことであります!」
ドズル「そこまであの女が好きなのか?」
マシュマー「命を捧げております!」
ドズル「重いな」
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その頃。
ソロモンから離れた宇宙では。
九年後の戦争が始まろうとしていた。
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## ハマーン艦隊
サダラーン。
オペレーター「敵艦隊確認!」
オペレーター「マゼラン級、サラミス級多数!」
オペレーター「MS、ボール多数!」
ハマーン「指揮官は?」
オペレーター「通信解析……ティアンム中将の艦隊と思われます!」
ハマーン「そうか」
ハマーンは戦術モニターを見る。
ティアンム艦隊。
ソロモン攻略の主力。
この艦隊を放置すれば、ソロモンへの攻撃は続く。
ハマーン「全艦、戦闘配置」
オペレーター「はっ!」
ハマーン「ソロモンへ向かう敵戦力を叩く」
オペレーター「艦隊への攻撃を開始しますか?」
ハマーン「まずMS隊を出す」
オペレーター「第一陣は?」
ハマーン「ドライセン、ガルスJ、ズサ」
ハマーンは一瞬考える。
ハマーン「そしてゲーマルク」
オペレーター「ゲーマルク?」
ハマーン「キャラを出せ」
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格納庫。
キャラ・スーンは、ゲーマルクのコックピットへ乗り込んでいた。
通信士「キャラ様、出撃命令です!」
キャラ「やっと?」
通信士「ハマーン様からです!」
キャラ「ハマーン様から!?」
一瞬で声が弾む。
キャラ「最初に言ってよ!」
通信士「言いました!」
キャラ「敵は?」
通信士「旧式MS多数!」
キャラ「旧式?」
通信士「ジム及びボールです!」
キャラ「ジム?」
キャラは少し考える。
キャラ「……本当にあのジム?」
通信士「はい」
キャラ「初代の?」
通信士「おそらく」
キャラ「…………」
キャラは笑った。
キャラ「何それ」
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## 出撃
サダラーン及び随伴艦からMSが発進する。
ドライセン。
ガルスJ。
ズサ。
そして。
ゲーマルク。
キャラ「キャラ・スーン! ゲーマルク、出るよ!」
巨大な機体が射出される。
ティアンム艦隊側でも、新たな敵を確認した。
連邦兵「敵MS接近!」
連邦兵「識別不能!」
連邦士官「ジオンの新型か?」
連邦兵「該当機なし!」
連邦士官「数は!」
連邦兵「第一波、約七十!」
連邦士官「少ない!」
連邦士官「ジム隊を出せ!」
連邦兵「了解!」
多数のジム。
さらにボール。
未来のMS部隊へ向かう。
連邦兵「敵は七十程度だ!」
連邦兵「押し潰せ!」
その判断は。
この時代なら。
間違っていなかった。
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## 最初の一撃
キャラ「来た来た」
ゲーマルクの前方。
ジム。
ボール。
密集している。
キャラ「すっごい数」
キャラは楽しそうに笑う。
キャラ「でもさ」
照準。
キャラ「そんなに固まったら」
ゲーマルク。
胸部メガ粒子砲。
発射。
巨大な光。
連邦軍のMS集団を貫く。
ジム。
ボール。
一瞬で十数機が爆発する。
連邦兵「なっ!?」
連邦士官「何だ、あの火力は!」
キャラ「こうなるでしょ?」
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ゲーマルクの周囲から、兵器が展開する。
マザー・ファンネル。
そして。
チルド・ファンネル。
連邦兵「小型物体多数!」
連邦兵「ミサイルか!?」
違う。
複数方向へ散る。
ジムが一機。
正面のゲーマルクへライフルを向ける。
その背後。
ビーム。
撃破。
別のジム。
右からビーム。
撃破。
ボール。
上。
撃破。
ジム。
下。
撃破。
連邦兵「どこから撃ってる!?」
連邦兵「敵は一機だぞ!」
連邦兵「一機じゃない!」
連邦兵「小さいのが!」
通信が混乱する。
キャラ「右」
撃破。
キャラ「左」
撃破。
キャラ「上」
撃破。
キャラ「後ろ」
撃破。
キャラ「次!」
ゲーマルク本体。
さらに砲撃。
五機。
七機。
九機。
一度に消える。
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## 数の意味
ティアンム艦隊。
オペレーター「第一MS隊、損害急増!」
ティアンム「何機やられた!」
オペレーター「確認中!」
ティアンム「急げ!」
オペレーター「敵大型MS一機によるものだけで……」
言葉が止まる。
ティアンム「何機だ!」
オペレーター「現在確認できるだけで三十七機!」
ティアンム「一機で?」
オペレーター「はい!」
ティアンム「馬鹿な!」
その間にも。
数字が増える。
四十一。
四十五。
五十二。
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キャラ「弱い」
ゲーマルクのコックピット。
キャラの表情から笑みが消え始める。
キャラ「ねえ」
キャラ「本当にこれ、戦闘?」
通信士「キャラ様、油断しないでください!」
キャラ「してないよ」
ジムが三機。
左右と正面。
キャラ「でも」
正面のジムがライフルを撃つ。
キャラには見える。
遅い。
回避。
右のジム。
照準を合わせようとしている。
その前にファンネルが撃つ。
撃破。
左。
撃破。
正面。
ゲーマルク本体のビーム。
撃破。
キャラ「遅すぎるんだもん」
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別宙域。
ドライセン隊。
十二機のジムが接近。
隊長「散開!」
ドライセンが一斉に加速する。
ジムが照準する。
その間に。
ドライセンはもう位置を変えている。
ビーム。
ジム撃破。
接近。
撃破。
反転。
撃破。
ジム隊は、まともに照準すら合わせられない。
ドライセン兵「これ、本当に主力機なのか?」
ドライセン兵「油断するな」
ドライセン兵「してない。してないけど……」
ドライセン兵「遅いな」
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ズサ隊。
ミサイル発射。
ただし。
密集する敵艦隊へ無差別に撃ち込まない。
ハマーンから命令が出ている。
ハマーン「撃破数を競うな。ソロモンへの攻撃能力を奪え」
ハマーン「逃げる敵を追う必要はない」
ハマーン「武装を捨てた機体も撃つな」
ハマーン「目標は虐殺ではない」
ハマーン「戦闘を終わらせることだ」
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## 100機
ゲーマルク。
戦闘開始から数分。
キャラ「九十八」
ビーム。
ジム撃破。
キャラ「九十九」
ボールが逃げる。
キャラは撃たない。
別方向。
ジムがビームスプレーガンを向ける。
キャラ「百」
ビーム。
爆発。
キャラ「ハマーン様!」
通信。
ハマーン「何だ」
キャラ「百機!」
ハマーン「そうか」
キャラ「褒めて!」
ハマーン「戦闘中だ」
キャラ「一言だけ!」
ハマーン「前を見ろ」
キャラ「見てる!」
ハマーン「なら戦え」
キャラ「はーい」
通信が切れる。
キャラ「冷たいなあ」
一秒後。
ハマーンから通信。
ハマーン「キャラ」
キャラ「はい!」
ハマーン「よくやっている」
キャラ「ハマーン様ぁ!」
ハマーン「前を見ろ!」
キャラ「はい!」
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## ティアンム
損害報告。
ティアンムの表情が変わっていく。
オペレーター「MS損失、百五十突破!」
ティアンム「敵の損害は!」
オペレーター「確認中!」
ティアンム「何機だ!」
オペレーター「……現時点で撃破確認」
ティアンム「言え!」
オペレーター「ゼロです」
ティアンム「何?」
オペレーター「敵MS、撃破確認ゼロ!」
ティアンム「七十機近くいるんだぞ!」
オペレーター「はい!」
ティアンム「こちらは百五十やられて、一機も落としていないのか!」
オペレーター「……はい」
ティアンムはモニターを見る。
理解できない。
ジオンの新兵器。
そう考えるしかない。
だが。
一機や二機ではない。
ドライセン。
ガルスJ。
ズサ。
そして。
あの巨大なMS。
すべてが。
異常に強い。
ティアンム「何なんだ、あいつらは……」
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## ソロモン
格納庫。
ドズルのところへ通信兵が走ってくる。
通信兵「閣下!」
ドズル「何だ!」
通信兵「外周宙域で正体不明のジオン系艦隊が連邦軍と交戦!」
ドズル「こいつらの仲間か?」
通信兵「そのようです!」
ドズル「戦況は!」
通信兵「連邦MS、すでに百五十機以上を喪失!」
ドズル「何!?」
通信兵「敵――いえ、正体不明艦隊側のMS損失は確認できません!」
ドズル「待て」
通信兵「はい!」
ドズル「もう一回言え」
通信兵「連邦MS、百五十機以上喪失!」
ドズル「その次だ!」
通信兵「正体不明艦隊側、撃破されたMSは現在確認できません!」
ドズルは。
ゆっくり。
マシュマーを見る。
マシュマー「…………」
ドズル「おい」
マシュマー「はい」
ドズル「お前ら」
マシュマー「はい」
ドズル「本当にジオンなんだな?」
マシュマー「もちろんであります!」
ドズル「だったら」
マシュマー「はい!」
ドズル「何で俺が知らねえんだ!」
マシュマー「軍事機密であります!」
ドズル「絶対それだけじゃねえだろ!」
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その瞬間。
通信兵が叫ぶ。
通信兵「閣下!」
ドズル「今度は何だ!」
通信兵「正体不明艦隊より通信!」
ドズル「誰からだ!」
通信兵「旗艦サダラーン!」
ドズル「サダラーン?」
通信兵「発信者は――」
通信兵が一瞬止まる。
通信兵「ハマーン・カーンと名乗っています!」
マシュマーの姿勢が。
一瞬で変わった。
マシュマー「ハマーン様!」
ドズル「やっと出てきたか!」
大型モニター。
通信回線。
接続。
ノイズ。
そして。
一人の女が映る。
黒髪。
鋭い眼差し。
若い。
ドズルが想像していたより。
ずっと若い。
ハマーン「初めてお目にかかります」
ドズル「お前がハマーン・カーンか」
ハマーン「はい」
ドズル「マシュマーの上官だな?」
ハマーン「そう考えていただいて構いません」
ドズル「聞きたいことが山ほどある」
ハマーン「でしょうね」
ドズル「ネオ・ジオンとは何だ」
ハマーン「説明します」
ドズル「ザクIIIとは何だ」
ハマーン「説明します」
ドズル「何でガンダムのパイロットの名前を知っている」
ハマーン「それも説明します」
ドズル「それと」
ハマーン「まだありますか」
ドズル「お前ら何でそんなに強い」
ハマーンは。
少しだけ。
笑った。
ハマーン「それについては」
背後の戦術モニター。
ティアンム艦隊。
次々と減っていく。
連邦軍の戦力表示。
ハマーン「説明するより」
さらに一つ。
消える。
ハマーン「見ていただいた方が」
ゲーマルク。
新たなジム部隊へ突入。
ハマーン「早いでしょう」
ドズル「…………」
マシュマー「さすがハマーン様!」
ドズル「お前はちょっと黙ってろ!」
## 第4話 完




