第16話 デラーズ・フリート
極秘会談は。
まだ終わらなかった。
ギレン・ザビ。
ドズル・ザビ。
キシリア・ザビ。
ハマーン・カーン。
本来ならば滅びるはずだったジオン公国の未来を語る会談。
その途中。
ハマーンが口にした。
一つの名前。
ハマーン「デラーズ・フリート」
ギレンの眉が。
わずかに動いた。
ギレン「デラーズ?」
ハマーン「はい」
ギレン「エギーユ・デラーズか」
ハマーン「その人物です」
ドズル「兄貴のところの?」
ギレン「ああ」
キシリア「親衛隊の?」
ギレン「そうだ」
ハマーン「現在、ア・バオア・クーにいますね」
ギレン「いる」
ハマーン「ならば」
ハマーンが言う。
ハマーン「本人を呼びましょう」
## 呼び出し
ギレン「理由は」
ハマーン「これから話すのは」
ハマーン「彼自身が起こす戦争です」
ドズル「本人が?」
ハマーン「はい」
キシリア「いつ?」
ハマーン「宇宙世紀0083年」
ギレン「四年後か」
ハマーン「正確には、一年戦争終結から約三年後です」
ギレン「……」
ハマーン「そして」
ハマーン「もう一人」
ギレン「誰だ」
ハマーン「アナベル・ガトー」
ドズル「ガトー?」
ギレン「知っているか」
ドズル「名前はな」
キシリア「ソロモンで戦っていた男ね」
ハマーン「そうです」
ドズル「まだいるのか?」
士官「確認します」
数分後。
返答。
二人とも。
生存。
ア・バオア・クーにいた。
ギレン「呼べ」
士官「はっ!」
## 二人
しばらくして。
扉が開く。
先に入ったのは。
エギーユ・デラーズ。
続いて。
アナベル・ガトー。
デラーズ「ギレン総帥」
ガトー「総帥閣下」
二人が敬礼する。
ギレン「楽にしろ」
デラーズ「はっ」
ガトー「はっ」
デラーズは。
室内を見る。
ギレン。
ドズル。
キシリア。
そして。
見知らぬ女。
いや。
見知らぬわけではない。
昨日。
地球連邦宇宙軍を壊滅させた軍勢。
ネオ・ジオン。
その総帥。
デラーズ「……ハマーン・カーン殿」
ハマーン「私をご存じか」
デラーズ「昨日の戦いを見て、知らぬ者はおりますまい」
ハマーン「そうか」
ガトーの視線が。
ハマーンへ向く。
ハマーンも見る。
ガトー。
ソロモンの悪夢。
その名は。
未来にも残っている。
ドズル「ガトー」
ガトー「はっ!」
ドズル「ソロモンじゃよくやった」
ガトー「ありがたきお言葉!」
ドズル「お前みたいなのが生き残ってたのは助かる」
ガトー「この命、ジオンのためならばいつでも!」
ドズル「……」
ドズルが。
ハマーンを見る。
ハマーン「……」
ドズル「何だ?」
ハマーン「いえ」
ドズル「その顔は何だ」
ハマーン「後で分かります」
## デラーズ
ギレン「デラーズ」
デラーズ「はっ」
ギレン「お前を呼んだのは」
ギレン「忠誠を確認するためではない」
デラーズ「……」
ギレン「お前の忠誠は知っている」
デラーズ「身に余るお言葉」
ギレン「問題は」
ギレンが。
ハマーンを見る。
ギレン「その忠誠が」
ギレン「少々行き過ぎるらしい」
デラーズ「……?」
ガトー「……?」
ドズル「少々か?」
ハマーン「かなり」
デラーズ「何の話でしょう」
ギレン「ハマーン」
ハマーン「はい」
ギレン「説明しろ」
## 0083
ハマーン「エギーユ・デラーズ」
デラーズ「はい」
ハマーン「アナベル・ガトー」
ガトー「はっ」
ハマーン「これから話すことは」
ハマーン「信じ難いでしょう」
デラーズ「昨日の戦いを見た後では」
デラーズ「多少のことでは驚かぬつもりです」
ハマーン「では」
ハマーン「宇宙世紀0083年」
デラーズ「……」
ハマーン「あなた方二人は」
ハマーン「地球連邦軍と戦争をします」
ガトー「!」
デラーズ「……」
デラーズ「0083年」
ハマーン「はい」
デラーズ「四年後」
ハマーン「そうです」
デラーズ「なぜ」
ハマーン「一年戦争で」
ハマーン「ジオン公国が敗北するからです」
デラーズ「……」
デラーズが。
ギレンを見る。
ギレン「本来の歴史ではな」
デラーズ「本来の……?」
ギレン「そこから説明する必要があるか」
ハマーン「そうでしょうね」
## 九年後
ハマーン「私は」
ハマーン「宇宙世紀0088年から来ました」
デラーズ「……」
ガトー「……」
ハマーン「私だけではありません」
ハマーン「ネオ・ジオン艦隊」
ハマーン「五十三隻」
ハマーン「MS」
ハマーン「乗員」
ハマーン「整備員」
ハマーン「すべてです」
デラーズは。
すぐには答えなかった。
昨日見た。
異常な兵器群。
ザクIII。
ドライセン。
ドーベン・ウルフ。
ゲーマルク。
そして。
ジオン系の意匠を。
明らかに残した艦隊。
デラーズ「……それで」
ハマーン「?」
デラーズ「ネオ・ジオン」
デラーズ「なのですか」
ハマーン「はい」
デラーズ「未来にも」
デラーズ「ジオンは残る」
ハマーン「形を変えて」
デラーズ「……」
デラーズの顔に。
わずかな安堵。
だが。
ハマーンは続ける。
ハマーン「その原因の一つが」
ハマーン「あなたです」
デラーズ「私が?」
## 敗北
ハマーン「本来」
ハマーン「昨日のア・バオア・クー会戦で」
ハマーン「ジオン公国は敗北します」
デラーズ「……」
ハマーン「ギレン総帥は死亡」
デラーズの表情が。
変わった。
デラーズ「何と?」
ギレン「事実らしい」
デラーズ「誰が!」
ギレン「キシリアだ」
デラーズ「……!」
キシリア「未来の私よ」
デラーズ「……」
デラーズは。
完全に言葉を失った。
ギレン「理由は」
ギレン「未来の私が父上をソーラ・レイに巻き込んで殺すからだ」
デラーズ「……」
今度こそ。
デラーズは。
固まった。
デラーズ「総帥が」
ギレン「ああ」
デラーズ「デギン公王を」
ギレン「未来の私がな」
デラーズ「……」
ギレン「そして」
ギレン「その報復でキシリアに撃たれる」
デラーズ「……」
ドズル「すごいだろ」
デラーズ「……」
ドズル「俺も最初そうなった」
## デラーズの選択
ハマーン「あなたは」
ハマーン「ア・バオア・クーから離脱します」
デラーズ「私が?」
ハマーン「はい」
デラーズ「総帥を残して?」
ハマーン「その時点で」
ハマーン「ギレン総帥はすでに死亡しています」
デラーズ「……」
ハマーン「あなたは」
ハマーン「ギレン総帥の死を知り」
ハマーン「戦場を離れます」
デラーズ「逃亡したと?」
ハマーン「あなた自身は」
ハマーン「そうは考えていません」
デラーズ「当然です!」
初めて。
デラーズの声が強くなる。
デラーズ「総帥亡き後!」
デラーズ「キシリア少将の指揮下で戦うことに!」
デラーズ「何の意味がありましょう!」
キシリア「……」
ドズル「おい」
デラーズ「失礼」
だが。
デラーズは。
止まらなかった。
デラーズ「もし!」
デラーズ「もし本当に!」
デラーズ「ギレン総帥が志半ばで倒れられたのであれば!」
デラーズ「その御遺志を!」
デラーズ「誰かが継がねばなりません!」
ハマーン「そう考えました」
デラーズ「……」
ハマーン「未来のあなたも」
デラーズ「……」
ハマーン「全く同じように」
## 三年間
ハマーン「あなたは残存戦力を率いて」
ハマーン「暗礁宙域へ潜伏」
ハマーン「約三年間」
ハマーン「戦力を温存します」
デラーズ「三年」
ハマーン「はい」
デラーズ「三年間」
デラーズ「私は」
デラーズ「戦争を諦めなかった?」
ハマーン「はい」
デラーズは。
少し。
胸を張った。
デラーズ「ならば」
デラーズ「未来の私は」
デラーズ「恥ずべき行動は取っていない」
ハマーン「まだ続きがあります」
デラーズ「聞きましょう」
## デラーズ・フリート
ハマーン「あなたの率いる軍は」
ハマーン「後に」
ハマーン「デラーズ・フリートと呼ばれます」
デラーズ「私の名を?」
ハマーン「はい」
ガトー「……」
ハマーン「そして0083年」
ハマーン「あなたは」
ハマーン「地球連邦に対し」
ハマーン「宣戦布告します」
デラーズ「……」
ハマーン「作戦名」
ハマーン「星の屑」
デラーズ「星の屑……」
## GP02
ハマーン「最初に」
ハマーン「ガトー」
ガトー「はっ」
ハマーン「あなたが」
ハマーン「地球連邦軍の新型ガンダムを奪取します」
ガトー「私が?」
ハマーン「RX-78GP02A」
ガトー「ガンダム……」
ハマーン「核攻撃用MSです」
全員。
一瞬。
黙る。
ドズル「核?」
ハマーン「はい」
ギレン「連邦が?」
ハマーン「南極条約締結後に」
ギレン「……」
キシリア「随分と面白いことをするのね、連邦も」
ガトー「それを」
ガトー「私が奪う」
ハマーン「はい」
ガトー「そして?」
ハマーン「連邦軍の観艦式へ」
ハマーン「核攻撃を行います」
ガトー「……」
ドズル「お前」
ドズルが。
ガトーを見る。
ドズル「派手だな」
ガトー「まだ私がやったわけではありません!」
ドズル「分かってる!」
## デラーズの反応
デラーズ「待っていただきたい」
ハマーン「何でしょう」
デラーズ「核攻撃の目標は」
ハマーン「地球連邦軍艦隊」
デラーズ「民間都市ではない」
ハマーン「違います」
デラーズ「軍事目標」
ハマーン「はい」
デラーズ「ならば」
デラーズが。
ギレンを見る。
デラーズ「戦術としては理解できます」
ギレン「私を見るな」
デラーズ「失礼しました」
ハマーン「問題は」
デラーズ「まだあるのですか」
ハマーン「むしろ」
ハマーン「ここからです」
## コロニー
ハマーン「星の屑作戦の本命は」
ハマーン「核攻撃ではありません」
デラーズ「……」
ハマーン「コロニー落としです」
沈黙。
ドズル「……どこへ」
ハマーン「地球」
デラーズ「目標は?」
ハマーン「北米」
ギレン「軍事基地か」
ハマーン「違います」
ギレン「では」
ハマーン「穀倉地帯」
デラーズ「……」
ハマーン「地球の食料生産へ打撃を与え」
ハマーン「宇宙への依存度を高める」
ハマーン「それによって」
ハマーン「スペースノイドの発言力を増す」
ハマーン「そういう戦略です」
デラーズ「……」
今度は。
デラーズが。
すぐに反論しなかった。
## 未来の自分
デラーズ「それは」
デラーズ「私が考えたのですか」
ハマーン「はい」
デラーズ「私自身が?」
ハマーン「最終的に決断したのはあなたです」
デラーズ「……」
ハマーン「どう思います?」
デラーズ「……」
ハマーン「今のあなたは」
ハマーン「未来のあなたの作戦を」
ハマーン「どう評価しますか」
デラーズは。
長く。
黙った。
デラーズ「理屈は」
デラーズ「理解できます」
ハマーン「はい」
デラーズ「地球の食料生産力を削ぎ」
デラーズ「宇宙移民者の経済的重要性を増す」
ハマーン「はい」
デラーズ「軍事的敗北の後」
デラーズ「政治的条件を変える」
ハマーン「そうです」
デラーズ「……」
デラーズ「だが」
全員が。
デラーズを見る。
デラーズ「それは」
デラーズ「ギレン総帥の命令なのですか」
ハマーン「違います」
デラーズ「……」
ハマーン「ギレン総帥は」
ハマーン「その時」
ハマーン「三年前に死亡しています」
デラーズ「では」
デラーズ「誰の命令で」
ハマーン「あなた自身の判断です」
静寂。
## 誰の戦争か
デラーズ「……」
ハマーン「誰にも命じられていません」
デラーズ「……」
ハマーン「ジオン公国政府にも」
ハマーン「ザビ家にも」
ハマーン「ギレン総帥にも」
デラーズ「私は」
デラーズ「総帥の遺志を」
ハマーン「あなたが」
ハマーン「そう解釈したのです」
デラーズ「……」
ギレンが。
初めて口を挟む。
ギレン「デラーズ」
デラーズ「はっ」
ギレン「未来の私が」
ギレン「お前に命じた記録はあるのか」
ハマーン「ありません」
ギレン「デラーズ」
デラーズ「……はっ」
ギレン「私は」
ギレン「お前に」
ギレン「三年間潜伏して」
ギレン「ガンダムを盗み」
ギレン「核を撃ち」
ギレン「北米へコロニーを落とせと」
ギレン「命じていない」
デラーズ「……」
ギレン「そうだな?」
デラーズ「……はい」
ギレン「なら」
ギレン「誰の戦争だ?」
デラーズは。
答えられなかった。
## 忠誠
デラーズ「しかし!」
突然。
デラーズが。
声を上げる。
デラーズ「総帥!」
ギレン「何だ」
デラーズ「あなたが殺され!」
デラーズ「公国が敗れ!」
デラーズ「ジオンの理想が踏みにじられ!」
デラーズ「それでも!」
デラーズ「何もせず!」
デラーズ「連邦の支配を受け入れろと!」
デラーズ「未来の私に!」
デラーズ「そう仰るのですか!」
ギレン「言っていない」
デラーズ「では!」
ギレン「だが」
ギレンの声が。
低くなる。
ギレン「私の名前を使って」
ギレン「私が命じてもいない戦争を始めるな」
デラーズ「……!」
ギレン「私への忠誠を」
ギレン「自分の判断を正当化する道具にするな」
デラーズ「私は!」
ギレン「最後まで聞け」
デラーズが。
止まる。
ギレン「お前が」
ギレン「お前自身の判断で戦うなら」
ギレン「そう言え」
デラーズ「……」
ギレン「エギーユ・デラーズが」
ギレン「自分の意思で」
ギレン「地球連邦と戦う」
ギレン「そう言えばいい」
デラーズ「……」
ギレン「だが」
ギレン「死んだ私を」
ギレン「勝手に総司令官にするな」
完全な沈黙。
ドズル「……兄貴」
ギレン「何だ」
ドズル「それは」
ドズル「かなり正論だな」
ギレン「かなりは余計だ」
## ガトー
ハマーン「そして」
ハマーンが。
ガトーを見る。
ガトー「……」
ハマーン「アナベル・ガトー」
ガトー「はい」
ハマーン「あなたも」
ハマーン「最後まで戦います」
ガトー「当然です」
ハマーン「最後は」
ハマーン「ほぼ死ぬための突撃です」
ガトー「……」
ドズル「ほら来た」
ガトー「何がです!」
ドズル「さっきお前が言っただろ!」
ドズル「この命、ジオンのためならいつでもって!」
ガトー「軍人として当然です!」
ドズル「それだよ!」
ガトー「何が問題なのです!」
ドズル「死ぬことを前提にすんな!」
ガトー「しかし!」
ドズル「勝って帰ってこい!」
ガトー「……」
ドズル「死ぬ覚悟は持て!」
ドズル「でもな!」
ドズル「死ぬのを目的にするな!」
ハマーン「その通りです」
ガトー「……」
## 未来のガトー
ハマーン「未来のあなたは」
ハマーン「優秀です」
ガトー「……」
ハマーン「勇敢で」
ハマーン「忠誠心が強く」
ハマーン「パイロットとしても一流」
ガトー「恐縮です」
ハマーン「だからこそ」
ハマーン「死にます」
ガトー「……」
ハマーン「逃げるという選択肢を」
ハマーン「自分で消してしまうからです」
ガトー「敵前逃亡など!」
ハマーン「撤退と逃亡は違います」
ガトー「……」
ハマーン「生き残ることと」
ハマーン「臆病も違う」
デラーズ「ハマーン殿」
ハマーン「何でしょう」
デラーズ「ガトーは」
デラーズ「武人です」
ハマーン「知っています」
デラーズ「ならば」
ハマーン「だから」
ハマーンが。
デラーズを見る。
ハマーン「あなたが」
ハマーン「止めるべきだった」
デラーズ「……!」
ハマーン「部下の忠誠を」
ハマーン「死ぬ方向へ使った」
デラーズ「……」
ハマーン「覚悟が本物であることと」
ハマーン「選択が正しいことは別です」
ハマーン「死ぬ覚悟を持つことと」
ハマーン「死ぬ必要があることも」
ハマーン「別です」
## ギレンからデラーズへ
ギレン「デラーズ」
デラーズ「……はっ」
ギレン「お前は」
ギレン「私に忠誠を誓っているのだな」
デラーズ「無論です!」
ギレン「ならば」
ギレン「命令する」
デラーズの背筋が。
伸びる。
ギレン「勝手に死ぬな」
デラーズ「……」
ギレン「私が生きている間は」
ギレン「私の命令を聞け」
デラーズ「はっ」
ギレン「そして」
ギレン「仮に私が死んでも」
デラーズ「……」
ギレン「私が命じてもいない戦争を」
ギレン「私の名前で始めるな」
デラーズ「……総帥」
ギレン「不満か」
デラーズ「……」
デラーズは。
拳を握る。
デラーズ「私は」
デラーズ「未来の私を」
デラーズ「否定しきれません」
ギレン「ほう」
デラーズ「総帥が殺され」
デラーズ「公国が敗北し」
デラーズ「多くの同志が散り」
デラーズ「連邦が勝者として宇宙を支配する」
デラーズ「その時」
デラーズ「私が」
デラーズ「黙っていられるとは」
デラーズ「今の私にも思えません」
ギレン「正直だな」
デラーズ「はい」
デラーズ「おそらく」
デラーズ「私は戦います」
ハマーン「でしょうね」
デラーズ「しかし」
デラーズは。
ギレンを見る。
デラーズ「一つ」
デラーズ「未来の私に」
デラーズ「言いたいことがあります」
ギレン「何だ」
デラーズ「総帥の遺志と」
デラーズ「自分の意志を」
デラーズ「混同するな」
ギレン「……」
デラーズ「それは」
デラーズ「確かに」
デラーズ「私の傲慢であります」
ハマーンが。
少しだけ。
目を細める。
## ガトーの疑問
ガトー「一つ」
ハマーン「何だ」
ガトー「星の屑作戦は」
ガトー「成功したのですか」
ハマーン「作戦そのものは」
ハマーン「かなりの部分で成功します」
デラーズ「では!」
ハマーン「しかし」
デラーズ「……」
ハマーン「その結果」
ハマーン「地球連邦軍内部に」
ハマーン「ジオン残党狩りを目的とする」
ハマーン「強硬派組織が生まれます」
ギレン「名前は」
ハマーン「ティターンズ」
デラーズ「……」
ガトー「……」
ハマーン「そして」
ハマーン「そのティターンズが」
ハマーン「後の地球圏を」
ハマーン「さらに大きな戦乱へ導きます」
デラーズ「我々の行動が」
ハマーン「原因の一つです」
デラーズ「……」
ハマーン「あなたは」
ハマーン「ジオンの意志を残すために戦った」
デラーズ「はい」
ハマーン「だが」
ハマーン「その戦いが」
ハマーン「連邦内部の最強硬派に」
ハマーン「権力を与えた」
デラーズ「……」
ハマーン「歴史とは」
ハマーン「そういうものです」
## デラーズの沈黙
デラーズは。
長い間。
何も言わなかった。
自分なら。
戦う。
それは。
今でも否定できない。
ギレン総帥を失い。
ジオンが敗北し。
連邦が勝者となれば。
自分は。
おそらく。
武器を捨てない。
だが。
その戦いの結果。
より強硬な敵を。
自分自身で生み出す。
そして。
その敵が。
スペースノイドを弾圧する。
それでは。
何のために。
戦ったのか。
デラーズ「……総帥」
ギレン「何だ」
デラーズ「未来を知るというのは」
デラーズ「不快なものですな」
ギレン「同感だ」
デラーズ「自分の信念が」
デラーズ「正しかったかどうかではない」
デラーズ「その信念が」
デラーズ「何を生んだかまで」
デラーズ「見せつけられる」
ハマーン「ええ」
デラーズ「……」
デラーズは。
静かに。
頭を下げた。
デラーズ「総帥」
ギレン「何だ」
デラーズ「私は」
デラーズ「今ここにいるあなたに」
デラーズ「忠誠を誓います」
ギレン「……」
デラーズ「未来で死んだあなたではない」
デラーズ「過去の亡霊でもない」
デラーズ「今」
デラーズ「ここにおられる」
デラーズ「ギレン・ザビ総帥に」
ギレン「そうしろ」
## 二人の忠臣
ギレン「ガトー」
ガトー「はっ!」
ギレン「お前もだ」
ガトー「はっ!」
ギレン「生きろ」
ガトー「……」
ギレン「敗戦後の残党になるな」
ガトー「……」
ギレン「存在しない敗北に殉じるな」
ガトー「……」
ギレン「私の亡霊に忠誠を誓うな」
ギレン「忠誠を誓うなら」
ギレン「生きている私に誓え」
ガトーが。
敬礼する。
ガトー「はっ!」
デラーズも。
敬礼する。
デラーズ「ジーク・ジオン!」
ドズル「……」
キシリア「……」
ハマーン「……」
ドズル「なあ」
ギレン「何だ」
ドズル「こいつら」
ドズルが。
デラーズとガトーを指す。
ドズル「忠誠心ありすぎないか?」
ギレン「お前に言われたくはないだろう」
ドズル「俺でもここまでじゃねえ!」
ハマーン「一人」
ハマーンが。
ぼそりと言う。
ハマーン「忠誠心がほとんどない男もいますが」
キシリア「誰?」
ハマーン「シャアです」
ドズル「……」
デラーズ「赤い彗星が?」
ガトー「シャア大佐が?」
ドズル「そういや」
ドズルがガトーを見る。
ドズル「お前、シャア知ってるか?」
ガトー「知り合いというほどではありません」
ガトー「ソロモンで何度か」
デラーズ「赤い彗星を知らぬジオン兵はいないでしょう」
ガトー「大佐の戦いぶりも見たことがあります」
ドズル「向こうもお前を知ってるかもな」
ハマーン「面白い組み合わせですね」
ギレン「何がだ」
ハマーン「忠誠がなさすぎる男と」
ハマーン「忠誠がありすぎる男」
ドズル「……」
ドズル「足して二で割れ!」
一瞬。
誰も。
反応できなかった。
キシリア「それができれば苦労しないわ」
ハマーン「同感です」
そして。
会談は。
次の未来へ進む。
デラーズ・フリートが。
自らの戦いによって。
生み出すことになる組織。
地球連邦軍特殊部隊。
**ティターンズ。**
その名を聞いた時。
まだ誰も知らなかった。
デラーズの表情が。
さらに険しくなる話が。
ここから始まることを。
## 第16話 完




