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蘇我の姫  作者: たま


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持久戦

天智天皇の身内だからこそ、その手の内は良く知っている。浮き足立てば、すぐ潰すタイプを前にいかに白旗を振りながら足場を固めるか。

有間皇子は失敗したが、それが骨身に染みてるサーラは同じ轍を大海人王子に踏ませる気は無い。


天智天皇に大友皇子が生まれてからは、表面的には和やかな親戚づきあいが進んでいく。

大海人王子は大変喜び兄の子に貢物を絶やさない。

大海人王子も贈られた姫達がどんどん子供を産んでいく。サーラも王子を産み母親となる。

天智天皇からは貢物が届く。兄弟は相変わらず仲良いと誰の目にも映っていた。

しかし、天智天皇はなぜか琵琶湖へ遷都する。

皆、奈良盆地でのほほんとしてたので驚く。嫌がるものも居る。

田畑を耕す者も移動させなくてはいけなくなるのだ。

または、往復して滋賀と奈良を治めなくてはいけなくなる。

これは天智天皇の天秤なのだ。

政権内で自分の本当の配下は誰なのか?見極めるためだ。そして、新しい改革のための布石。

普通は天智天皇の後は大海人王子が天皇となる。

その為にサーラ4姉妹も他の大臣も大海人王子に花嫁を大量に贈ったのだ。

が、息子がその後に産まれてしまった。

成長し美しく賢く育つ姿に徐々に野望が湧いてきた。

大海人王子は単純で善良な男のはずだ。

皇太子を大海人王子から大友皇子に変更しても許してくれるのではないか?

その心を推し量る為にも遷都して、自分に従うかを見たいのだ。

自分の目が黒い内に大友皇子の地盤を固めたい。

その為の遷都なのだ。


大海人王子は近江京に来なかった。

それどころか隠居するとまで大々的に言い出した。

天智天皇は疑り深い男だ。

吉野に誰を連れて行くかも監視した。

しかし、沢山の花嫁も子供も実家に返した。サーラと4姉妹の子供達だけが吉野に付き従った。

姉は子供を2人産んで亡くなってしまったのだ。

それ以外も2人産んだ母親はほぼ残らなかった。

この時代子供を2人産むのは死を意味した。身体のカルシウムも何もかも子供に持っていかれるのだ。

サーラは姉妹の産んだ子供をまとめて育てていたのだ。

モノ見事に皇子ばかりだ。女の子は姉の子1人だ。その中に我が子も混ぜて。

先々のための子育てだ。「私は皆の母ですよ。」と教え込んだ。

6人の子を連れてサーラだけが吉野へ大海人王子について行った。

「やっと他の后を追い払えた。子供達と夫だけ!」普通の夫婦のようになれて、サーラは心の中で喜ぶ。

ここへ来るまで20年。高市皇子と裏で暗躍して、天皇が藤原鎌足など限定した部下しかそばに置かず、沢山の役人や豪族が蚊帳の外なのも把握した。

額田王は天智天皇のスパイのようにサーラの子供達とも煩雑に触れ合ってくる。

高市皇子と額田王の娘十市皇女は恋仲だったが、それを天智天皇の耳に額田王が入れたようだ。

我が子大友皇子の后として欲しいと大海人王子に所望した。

とにかく疑り深い天智天皇は、大海人王子の家の中を探り続け、その忠誠心を試し続けた。

高市皇子と十市皇女は泣く泣く別れた。

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