高市皇子
彼は噂以上に整った容姿と知識と政策を持った男だった。「聖徳太子になれるよ〜アナタなら!」サーラは彼に期待した。
しかし、如何せんサーラの父がまだ天皇なったばかりだ。最初の仕事が有間皇子を始末したのだ。
沸々と怒りと哀しみが襲ってくる。
母は悔しさと悲しみのあまり、食べ物が口を通らなくなって倒れて死んだが、サーラは反対に食欲が湧く。
血の滴る肉にかぶりつく。
生きて必ず父を仕留める!
若い王家の端くれの端くれだった父を中央に押し上げたのが中臣鎌足だ。
大化の改新で蘇我蝦夷入鹿親子を切り捨てたが、まだまだ知名度と正統性が知られていない。実に23年間両親や叔父に天皇をさせて自分へとリレーさせたのだ。
そして、叔父の息子有間皇子を殺してやっと天皇になったばかりだ。
その間に蘇我の血を引く姫サーラが成長してしまった。
サーラは有間皇子と仲良くなりたかった。
しかし、有間皇子は避け続けた。狂人のマネゴトをしてまで天智天皇の目を欺こうとしていたのだ。
その娘と仲良くする事は出来ない。
宮殿の人目のない場所でどんなにサーラが近づこうとしても逃げられた。
幼いサーラは寂しかった。
それでも遠目で微笑んでる姿や話してる姿を見れるだけで幸せだった。
なのに、いつか迎えに来てくれる白馬の王子様は父の手で無残に最果ての南紀に引っ立てられ処刑された。
聡明で美しくあまりに人気が有りすぎたせいで…
その姿は、もうサーラの目の奥にしか記憶されていないのだ。サーラは毎日時間があれば紙に筆でその姿を思い出して描いた。
人にも見せて記憶が正しいか確認して貰った。
いつの日か、有間皇子の位牌かわりの立像を仏師に制作してもらう為に。
今は亡骸は太平洋だ。記憶すら話してはいけない犯罪者なのだ。
いつの日か、彼の名誉と名を歴史に残すのだ。
サーラはその為に高市皇子を大海人王子に会わせる。
高市皇子の母は、田舎の豪族の出なのだ。
全く後ろ盾が無いので、父とお目通りも無かった。
后が増えたので母の屋敷に1年以上顔を出してないので高市皇子と会うのも1年ぶりなのだ。
「すまなかった。色んな人から嫁を贈られてな。
お前の母まで手が回らなかった…すまない。」平安時代もそうだが、まだ母系社会なのだ。
サーラみたいに金と肉体を惜しみなく提供できないと男を引き止めておけない。サーラの御殿は娼館さながらの絢爛たる屋敷で女達は薄衣で働き、歌や踊りや楽器の音が常に流れる屋敷だった。
まだ胸も育ってない幼い姫だが、半裸で父の股ぐらに座っている。
父はすっかり骨抜きにされている。
「ちゃんと高市皇子のお話しを聞かないと!
後でお馬さんにしてあげないよ?」とサーラに胸毛を引き抜かれて喜んでいる…高市皇子には信じがたい世界だ。
「父君は兄上に息子が生まれた事を過小に思ってますが…多分、兄上は父君の命を狙ってきます。
心して関わられますように。
どんなミスもこれからは許さないでしょう。」と進言した。
「兄と私はずっと一緒に頑張ってきたんだ!その絆を生まれたばかりの赤子に脅かされると言うのか?
あり得ない!」と怒る。大海人王子は、こういう人なのだ。
「ちゃんと父の変化に注目して見て!
何かとこれからは叔父ちゃんを後回しにするはずだよ。
気をつけてね。」高市皇子の眼前なのに衣から乳首に手を伸ばし大海人王子の乳首をひねる。
小さな姫なのに、まるで娼館のベテラン娼婦のようだ。
「イタタタッ、サーラもそう言うなら気をつけるよ。
しかし高市皇子は立場をわきまえろよ。今の朝廷の最高権力者なんだぞ、兄は!」と叱られた。
「兵を集めて拠点を作る準備を高市皇子にお願いしますね。」サーラが言うと大海人王子は驚く。
「おいおい、兄貴と俺の仲だぞ!そんな…」大海人王子が否定する。
「父は、あの男は…大化の改新を忘れたか?ある日突然ひっくり返すのが父のやり方だよ。
相手に反撃のスキを与えないのさ。
つまり、それまで全く匂わせないんだよ…手の内は知ってんだろ?マヌケか?」サーラが大海人王子に口づけしながら囁く。
高市皇子は、まだ幼さの残る姫の老婆のような手練手管に舌を巻く。
「歴史は夜作られる」
ロシアのエカテリーナもイギリスのエリザベス女王も
臣下の男達の使い方が、肉体の提供の仕方が絶妙だったと。
エカテリーナもエリザベスも命を掛けた戦いをくぐり抜いて牢屋暮らしから女王になってるから。
後年エカテリーナは男を断って絵画を集めるのに懲り、エリザベス女王は臣下との恋愛を楽しんでいたけど皆年食って亡くなっていって寂しかったようですね〜(ベテランのスナックママみたいだ)




