26
撫でられ、愛でられ、嬲られ、舐められ、抱かれて、全てが終わった時はもうすぐ朝日が見える時間だった。俺は眠れず、ピースに火をつけた。ベランダから見える町並みは薄暗く、車も人も見当たらない。煙草を吸う時の擬音って絶対スパスパじゃあないよな。どうでもいい考え事を吐き出し、また咥える。
「寝ないの?」
俺は声の方を向く。井伊は渡したジャージを着ていた。俺のサイズと合わないからか、裾を曲げている。
「吸い終わったら寝るよ」
「そう」
井伊はハンモックの隣に座った。重さに軽く軋んだ。
「はい」
手渡されたのは缶チューハイだった。
「寝ねえのか?」
「どうせ寝ないでしょ」
缶をぶつけ合い、口を付ける。
「なあ」
「なに」
「お前、俺のこと好き?」
「うん」
「そうか」
「君は?」
「結構好きだよ」
「そう」
肩を寄せ合い、煙を吐き出し、酒を飲む。最悪の夜中だ。
「いつから好きなんだ?」
「ゼミの時、君が元カノさんと喋ってる時、あまりにも冷めた顔をしてたから気になって、目で追うようになって、大好きになった」
「いつくらい?」
「んー、1年の秋くらい」
「倦怠期だったのかもな」
「なにが嫌になってたの?」
「・・・色々だな。家事は半分って決めてたのに大体は俺がやるようになってたり、勉強中もやたらと話しかけてきたり、小さな嫌なことが月まで届きそうになってたんだよ」
「ふーん、そっか・・・そっか」
「んだよ」
煙草を灰皿に捨てる。立ち上がろうとしたら膝に手を置かれた。強くはないが、立ち上がれない。俺は少し迷い、ハイライトのフィルターを開けた。
「君は私の何が嫌い?」
「・・・性欲が強いところと嫉妬深いところ」
「治らないから諦めて」
「えぇ・・・」
「私が君の嫌いなところは、言葉にしてくれないこと」
「諦めろ」
「ふふっ」
俺は井伊の口に咥えてた俺の煙草を突っ込んだ。
「なによ」
「飲み終わっちまった。スコッチ開けようぜ」
「あ、待って」
唇を軽く重ねるようなキスをされた。
「炭酸水、冷蔵庫にあるよ」
「割らずに飲む」
「グラスは2つ、氷も忘れないで」
「はいはい」




