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「すみません、戻りました」
席を外してる間は方舟さんが普通に持っててくれたみたいだ。
「おっと、可愛い後輩が来たかはおじゃま虫は退散しますね」
通り過ぎざまに小声でトイレに行ってみてください。とだけ伝えた。首を傾げながらもバックヤードに行ってくれたみたいだ。
「おかえり。あれ?ネクタイが乱れてるよ」
「おっと、育ちの悪さが」
軽く直す。掴むところくらい考えろよ。
「柳さんはどんなプロジェクトをなさってるんですか?」
「んー、企画部だからマーケティングとかをやってるんだよ」
「すげー、俺マーケティング苦手なんですよね。売れないしがないホストですから」
「じゃ、私がマーケティングしてあげちゃう!」
ボーイを呼びつけ、ビールまで頼み出した。おいおいまだ飲むの?俺は空のグラスにドンペリを注ぐ。
「横井君、少しいいかな」
方舟さんに呼ばれ、バックヤードに戻された。案の定、神主がいた。頬が赤く腫れ上がっている。よく見るとテーブルの上には歯が置かれてた。やりすぎたな。
「・・・どういうことだい?」
「コイツかいきなりトイレで蹴ってきたんだよ!」
「神主君、少し黙れ。そうなのかい?」
「いきなり蹴るわけないだろ。大体いくらお前がチビでもどんなけ俺足上げれるんだよ。そんなけ上げれるならバレェでもやっとるわ」
「じゃあ何があったんだい?」
「だから!」
「黙れ」
「っ」
「俺が用を足してたら絡んで来たんです。んで胸ぐら捕まれて、ナイフまで出されて脅されたから股間を蹴った後、蹲ってたからもういいかなって思ってけど、それでも掴み掛ってきたから、しょうがなく顔を蹴って鎮圧したんです。多分、俺が折ったナイフの持ち手、まだ持ってますよ。刃は俺の金個の中です」
「お前!嘘をいけしゃあしゃあと!」
俺は取り合わず金庫を開け、ナイフの刃をテーブルに投げた。
「・・・なんで通報とかしないんだ?」
「プライドくらい守ってあげようかなって情けを」
「・・・はぁ。ごめん、横井君は戻っていいよ。神主は今から話がある」
「てめぇ!」
「はぁ。早く西松屋でランドセル買って貰え」
「っテメェ!」
立ち上がった神主を方舟が足を引っ掛けて転ばせた。
「・・・情けないな。一生這いつくばってろ。特別支援学級の先生によろしくな」
はぁ。方舟さんはやれやれという顔をしてた。アンタ俺に随分甘いな。ついでにキッチンに戻り、カクテルをひとつ作る。
「ごめんなさい、おまたせしちゃって。これ、結構作るの難しいんですよね」
「え!サプライズ?」
「勿論。いっつも俺なんか指名してくれますから。グイっと飲んでください!」
正直、こんな単純なグラデーションのカクテルなんぞ、数秒で作れるけど。




