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バックヤードに入る。
「おつかれー」
「こんばんは」
ナンバーワンホストの方舟さんだ。本名は知らない。
「今日もえっと・・・そうだ、横山君は朝まで?」
ナンバーワンだけあって従業員の源氏名だけでなく本名まできちんと覚えてる。すごい。
「源氏名で大丈夫ですよ。今日は日付が変わったら退勤したいですけど」
「ああ、アイツのせいか」
アイツというのは、先々月までトップ争いをしてたホストが女を孕ませたらしくて辞めやがったから、人手がただでさえ足りてないのにもっと足りなくなったから俺もホスト紛いのことをやらされてる。
「今日は確かあの人来るよね。えっと、シコルスキーじゃあなくて・・・」
「柳さんですね。わかってて言ってますよね」
「あはは、あんまりツッコミ入れてくれる人少ないからつい振っちゃうんだ」
「柳さん、横井君を頑なに指名するからなぁ」
横井が俺の源氏名だ。あんま考えずにつけた。
「方舟さんはなんであんなに注文入れてもらえるんです?」
「んー横井君は可愛い後輩だから教えちゃうけど、隙を見せるといいよ。隙と言ってもほんとに見せちゃ駄目な隙もあるけど」
「例えばどんな隙を見せるんですか?」
「んー、例えば女の子のスマホの待ち受けに食いついて見たりとかね。例えばアニメキャラだったら俺も見てます!って食いついたり、少し酔ったように顔を赤くするとか」
「要は情報収集ってことですね」
「そういうこと」
差し出された煙草に火をつける。ついでに方舟さんの咥えてるのにも火をつける。
「気が利くね」
「ホストですから」
「違うでしょ」
備品のオイルをジッポーの中に入れる。方舟さんの煙草は金マルだ。金マルなんか木みたいな味するんだよなぁ。マルボロは赤の方が好き。
「おつかれさーまでーす」
「ん、こんばんは」
「よ」
俺をバイトに誘った武内がやって来た。
「課題やった?」
「ゼミのか?」
「うん」
「とっくに」
「えらーい。私のも頼んでいい?」
「ハイライト1箱ね」
「高ーい。ってか、ハイライトにしたの?ウィンストンは?」
「確かに、横井君はキャスターホワイトだったよね」
「まぁ、心変わりです」
「ハイライト重すぎて吸えないんだよね。歳かも」
「まだ25でしょ」
「てかさ、横山別れた?」
「・・・なんで?」
「え、3限1人で受けてたし、目赤かったもん。話しかけれんかった」
「・・・ああ、別れた」
「え!高校からの付き合いじゃあないの?」
「浮気された」
「それは神原が悪い!」
「横井君、そうなのかい?」
「まぁ、そうですね」
「へぇ、君を差し置いて浮気するなんてねぇ」
「なんで俺を落としに来てんですか」
「あははっ、バレたか」
「じゃあ、フリーなの?今」
「・・・んー、なんか同じセミの井伊に言い寄られてる」
「・・・確かに、前のゼミの飲み会で喋ってみたけど、横山のことねらってるって言ってたし」
「え、1年の最初の方のゼミの飲み会?」
「そ」
「・・・」
「仕事終わったら時間ある?飲み行こうよ」
「・・・考えとく」
「いっつもそれじゃん!」




