14
「しばらく俺は寝る。アラーム鳴って起きなかったら起こして」
「何時のアラーム?」
「7時」
「バイトは何時から?」
「8時半」
「ん、わかったよ」
「冷蔵庫にあるのは好きに食べていいし好きに飲んでいい。俺の部屋も別に入って構わんけど漁るなよ」
俺は自室に戻り、ベッドに寝転がる。直ぐに閉めたドアが開いた。
「・・・なんの用だ?」
「一緒に寝ようと思って」
「失せろ」
「あはは、いいじゃん」
当たり前のように俺が寝転んでるベッドに腰掛けた。
「充電器挿しといて」
「おっけー」
俺は少し空いてたカーテンを閉め直す。
「寝付くまでお喋りしない?」
「・・・なにを話すんだ?」
「なにか話したい?」
「話題を用意してから言えよ」
「私は君の話ならなんでも聞きたい」
「話すことなんてねーよ」
寝返りをうち、顔を壁側に向ける。
「つれないなー」
壁と俺の隙間に身体をねじ込んできた。
「・・・酒臭い」
「愛の匂いかもよ」
「馬鹿が」
目を閉じる。身体の下に腕を通され、抱きしめられた。
「・・・なんだよ」
「・・・彼女と別れたから人肌が恋しいかなって。このベッド2人用の大きさでしょ」
「・・・」
「まぁ、私が君を感じたいだけだけど」
「台無しだよ」
「起きて」
少し揺すられ目を覚ました。時計を見るとアラームが鳴る少し前の時間だ。
「・・・おはよう」
「っ・・・おはよう、ご飯一応作ったけど食べる?」
「や、いいや。帰ってきてから食べる」
「ん、わかったよ」
ベッドから降り、箪笥を開ける。来ていた灰色の汗臭いシャツとカゴパンをその場に脱ぎ捨て、スーツに着替える。
「・・・見蕩れちゃうね」
「はっ、売上に貢献してくれるかい?お嬢さん」
井伊は俺に財布を投げた。お札が結構入ってる。俺は投げ返した。
「いつもどうやって行ってるの?」
「バスだな」
「送ってこうか?」
「酒飲んだろ」
「とっくに抜けたよ。1缶飲んだだけだし」
確かに時間は結構経ってる。
「頼もうかな」
「わかった」
家を出て、鍵をかける。少し迷った後、鍵を渡した。
「え?」
「スペアキーがないんだ。夢希がなくしたからな」
「・・・ふーん、君の隣にいるには教養が必要そうなのに、身の丈が合ってなかったのかしら」
・・・元カノの悪口を怒るのは器が小さいのだろうか。俺は何も言わず階段を降りた。
「乗って。助手席にね」
「はいはい・・・あ、煙草忘れた」
「はい」
ハイライトを渡された。
「さっき買ってきた」
ちらりとミラーで後部座席の方を見ると、カートンが2つ置いてあった。
「・・・ありがと」
「なんでも頼って」
静かに車は動き出した。




