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夢希はその場でぺたんと座り込んだ。可哀想な気がしないと言えば嘘にはなる。
「・・・」
「・・・そもそも夢希、実家から大学まで通える距離だろ。家まで送ってやる」
力なく夢希は立ち上がった。俺は井伊をちらりと見る。アメスピだからか半分程は残ってる。じゃあ着いてくる心配はないなと思いきや、まだ長いタバコを灰皿に捨てた。
「勿体ない」
「いいのいいの。ドライブでしょ?」
「・・・死体蹴りは好まん」
「あはは、死体蹴りじゃあないよ。確殺だよ。息の根が止まるまで、しっかり縊り殺さなきゃ」
・・・こいつ。
運転席に乗り込む。我が物顔で井伊は助手席に座った。死人のような顔のまま夢希は後ろに座った。エンジンをかける。皮肉にも流れてきた曲は、バックナンバーのハッピーエンドだ。
「歌わないの?元カノさん」
夢希はなにも言わない。
「ふーん、ノリが悪いのか頭が悪いのかな。曲変えていい?」
「お好きにどうぞ」
夢希の好きなバックナンバーから、聞いたことないヒップホップが流れ出す。
「月夜走る流れ星見る度に想い出すの」
井伊また歌い出した。
「雲間消える2人だけの夢貴方には見えなくなるの」
俺は耳を傾ける。
「心揺れる帰り道独りきり哭いているの」
ジッポーで煙草に火をつける。
「刹那、閉じる私だけの夢」
夢希は顔を覆い、しゃくりあげた。
「霞んで見えなくなるの」
嫌らしい笑顔で歌い上げた。夢希は声を上げて泣き出した。




