第096話 真面目モードサキュバス
「その辺は徐々に修正していくと思う」
「だと良いんですけどね。それとユウさん、明日は男の見せ所ですよ?」
男の……
「なんで?」
「皆さん、口に出さないので私が言いましょう。明日、アヤカさんの祖父母に会いに行きます…………生きていると思いますか?」
それか……
「アヤカの祖父母の年齢はわからない。ただ、高齢なのは間違いないだろうな」
アヤカのお母さんの年齢はわからないが、お祖父さん、お祖母さんが25歳の時に誕生したとすると、25足す25足すアヤカの年齢の26で76歳だ。
年齢は前後するだろうが、亡くなっていてもおかしくない。
もっと言えば、悪魔の襲来もある。
「それは考えないようにしていた。でも、アヤカの頭の中にはあるだろうな」
風呂場で考えているのも、風呂に入る前の『どんな形であれ』という言葉もそういうことだ。
「私が四国に入った時に言った『あなたにはちゃんとユウさんがいることを忘れてはいけません』はそういう意味です、エルヴィスさんはとても良いことを言いました。隣を見ろ、です」
わかっている。
「そうするつもりだ」
「もう1つ…………わかってますね? それはあなた方もだということを」
俺の祖父ちゃんは66歳で祖母ちゃんは64歳だった。
母方の祖父母もそのくらいだ。
あれから10年……
「ああ。これも口に出していないが、親と連絡が取れない時点で親の死も覚悟している」
少なくとも、俺はそうだ。
「あなたは本当にリーダーに向いてますね」
「そうか? 全然だぞ」
「あなたが一番心が強いんですよ。そして、周りを見て、答えを出せる。リクさん、アヤカさん、マユミ、ヒナ……皆、そんなあなたを信用しています」
どうも。
「そうだと良いな」
「そうですよ。だからこそ、明日は絶対にそばにいて、アヤカさんの心の支えになるのです。冗談でもおふざけでもなく、抱きしめることくらいはしてください。まあ、最悪のケースだったらの話ですけどね。普通に生きてたら彼氏ですって言うんですよ?」
ふざけないと死んじゃう病……いや、これは場を和ませるためのものだ。
リンダ姉さんは空気も読めるのでたまにこういうことをする。
すばらしい秘書だな。
「リンダ姉さんは実際にどう思ってる?」
「10年は長いです。あなた方が変わったと言うように周りも変わります。亡くなっている人もいるでしょうし、性格や考え方が変わったということもありえます。私は東京に行かないというのも選択肢の一つではないかと思いますね。10年ぶりに会った家族がお墓の中はまだマシな方なのですよ? 会って、存在自体を拒否されたらどうします?」
拒否……
「それもあり得るか」
「ふざけているサキュバスの戯言と流してくださって結構です。16歳の子供を失うのは親からしたら耐えられることではありません。家族が崩壊しても何ら不思議ではありませんし、変な宗教にのめり込んでいるかもしれません。後を追う……そういうこともあるかもしれませんよ?」
否定はできないな。
「それはきついな」
「ええ。まったく関係のない第三者であり、そもそも死という考え方があなた方とは異なる悪魔の私やエルヴィスさんは人間はそういうこともするだろうなという考えが頭の隅にあります。まあ、口には出しませんけどね。あなたに言ったのはあなたがそういう時に精神的支柱にならないといけない存在だからです。特にアヤカさんがそうです。わかりますね?」
リーダーだからか。
「まあ、わかるな。俺も皆が東京に行かないと言えば、別に行かなくてもいいと思ってるし」
「よろしい。そんなあなたにお守りです」
リンダ姉さんが小さな紙袋を渡してくる。
「何、これ? お菓子か?」
「必要になる時も来るでしょう。その時はきっと私に感謝しますね」
何だろうと思い、紙袋を開け、中を覗いてみる。
「これを買いにコンビニに行ったのかよ……」
お守り……お守りかー……
「大事なものですから。私的にはもったいないって思っちゃいますけどね。マナを得られませんから」
「ホント、下世話……」
「と言いつつ、ちゃんとしまうユウさんだった」
お守りだよ。
前にお金が貯まりやすくなるって聞いたことがあるし。
そのまま待っていると、アヤカが戻ってきた。
浴衣姿であり、髪も上げていて、非常に可愛らしい。
「お待たせ。サウナがあったから初めて入ってみた。でも、暑かっただけだったわね。何が良いのかしら?」
「さあ? 俺もわからん」
整うっていうのは聞いたことがある。
「そうよねー? あ、私もジュース飲も」
アヤカが隣に腰かけ、リンゴジュースを飲む。
「ジュースですか? お酒は?」
「飲ませようとするわねー……飲むかもしれないけど、夜でしょ。昼間から飲んでいるあなたやエルヴィスはどうかと思うわよ? 運転してもらっているから強くは言わないけど」
「真面目な人。世の中には昼間から競馬をしながら飲んでいる人もいるんですよ? 小倉はそういう悪魔が多かったです。というか、ボスがそうでしたね」
リンダ姉さんが小倉にいた理由もそれっぽいな。
「わからないわねー」
「あなたはそうでしょう。さて、マユミ達に電話してみますか? 距離的にも向こうの方が近いですし、もう神戸に入っているんじゃないでしょうか?」
確かにそうだな。
「じゃあ、かけてみるわ」
アヤカがスマホを取り出し、操作すると、テーブルに置く。
すると、呼び出し音が聞こえてきた。
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