第097話 クラスメイト達
『はいはーい? どもー』
高宮さんだ。
「マユミ? アヤカだけど」
『やほー。そっちはどーお?』
「愛媛の松山市に着いたところ。今日は旅館で一泊」
『また温泉かー。まあ、そういうウチらも温泉だけどね。有馬温泉』
ん?
「あれ? 神戸は?」
なんで有馬?
『それがねー……すんごい混んでたから別のルートで行くことにして、迂回した。それでようやく神戸まで来たと思ったら入場券がいるって言われて、それの待ち。明日には入れるっぽい』
そんなに人が多いのか?
「大村君との連絡は?」
『取れてない。ゾン子ちゃんも忙しいみたいだねー』
まあ、それは仕方がないか。
「わかったわ。私達も明日の午前中に高知まで行って、すぐ岡山に戻るから。明後日にはそっちに行けると思う」
『了解。めっちゃ混んでいるから気を付けてね』
『私は尊厳を失うところだったよ』
ドンマイ、北浦さん。
「気を付けるわ。エルヴィスと松永君は?」
『エルっちは情報集めに行った。松永っちは何を切るか熟考中』
『もう切るから。これ』
『ローン。メンタンピンドラドラ、満貫』
麻雀してるし。
『無筋でよく押すなー……あ、こっちは遊んでる』
「みたいね。まあ、私達も部屋でまったりしてるわ」
『姉さん、エロいこと言ってる?』
「「言ってる」」
アヤカと言葉を揃えた。
「浴衣は下着はNGなんですよ」
ほら。
『姉さんだなー。あ、そうそう。大事な情報があったんだった。SNSで笹崎って調べてみて』
笹崎?
聞いたことがあるような……
とりあえず、スマホを取り出し、調べてみる。
すると、笹崎コトハというアカウントがあり、ピースをしてる小柄な女性が写っていた。
「アヤカ、これ」
「え……笹崎さん?」
リンダ姉さんもこちらにやってきて、スマホを覗く。
「杖を持ってますね。クラスメイトですか?」
『そそ、笹崎さん。大人しい系の女子だね。ウチらとは1年の時と同じクラスで文芸部だった子。魔王討伐には向かわなかった自由組だね』
魔王討伐に向かったのが先行組、その中でも途中でやめてしまったのが俺達ドロップアウト組、そして、最初から魔王討伐に向かわなかったのが自由組だ。
「笹崎さんはちょっと無理そうだものね……でも、なんでSNSで自分を……あ」
SNSを見ていくと、家族に自分の存在を伝えたいようだった。
そのせいか、石川県の金沢市にいることまで書いてある。
「これ、大丈夫ですか? 切り裂きジャックなり、救世主なり、マナ集めに積極的な人達から狙われません?」
狙われるかもな。
『その相談。笹崎さんは先行組じゃないからそこまでのマナは持ってないと思う。でも、10年も異世界で生きてきたわけだからある程度は魔物討伐をしているだろうし、普通の悪魔よりもマナは持ってそうじゃない?』
杖を持っているしな。
多分、魔法使いかヒーラーだろうが、魔物討伐はしていたと思う。
「金沢か……遠いな」
「そうね。リンダさん、石川は人間と悪魔のどっち?」
「悪魔の町ですね」
なるほど……
『それでどうするよ? 私らに関係ないと言えば、関係ないけど、マズくない?』
それはそうだが……
「下手に接触すると巻き込まれそうだよな……」
『そそ。それがある。最初は高高同盟のアカウントで接触っていうのも考えたけど、この子、しゃべりすぎ。異世界のことまで書いてあるんだよー』
書いてあるな……
ぱっと見は不思議ちゃん系になってる。
『まあ、いつかはこういう子も出てくると思ったけど』
『そろそろ皆、状況を把握し、スマホなんかも手に入れる頃だしね』
だろうな。
「高宮さん、そっちでアカウントを作って、警告だけでもしてくれないか? クラスメイトもだが、笹崎さんがいる場所は悪魔の町だ。悪魔もSNSを見る」
悪魔はこちらが人間でも気にしないという感じだが、悪魔にも色々な考えを持った種族がいる。
気持ちはわかるが、笹崎さんはあまりにも危険すぎることをしている。
『了解。匿名でDMを送るよ』
「ああ。俺達ができるのはそこまでだ。それ以上は笹崎さんには悪いが、面倒を見切れない」
『そだねー。ウチらはウチらのことを第一に考える』
そうするしかない。
「こっちも情報があった。例の徳島の救世主だが、光る剣を持った女性らしい」
『アヤカじゃん。あのかっこつけソード』
『悲報、アヤカは救世主だった』
『言葉だけだと朗報っぽいね』
救世主だもんな。
普通は良い意味だ。
「違うわよ。というか、かっこつけソードって何よ」
『アヤカ、魔法剣を使う時、剣を立てて、かっこつけるじゃん』
つけるな……
実際、かっこいいから別にいいんだけど。
「そっちだって、無駄に剣を振りまわすでしょ」
するな……
高宮さん、器用に剣を振り回してから構える。
「まあ、それはいいから。そんなことより、光る剣を持った女子って知ってるか? こっちでは先行組の剣士ってことで黒沢さんと高木さんの名前が上がった。剣士じゃなかったら片山さんや今井さん」
『うーん……確かにその辺かなー?』
『片山さんはちょっと詳しい。私の前だった』
出席番号順的に北浦の前で片山か。
「どんな人? 俺、全然、わからない」
席も離れてたし、詳しくない。
『普通? よくしゃべる明るい子だね。救世主とはちょっと考えにくい感じ』
『偏見かもしれないけど、救世主っていうワードに合うのは委員長の高木さんかなぁ……マナ集めというか、積極的に悪魔を狩りそうなのは黒沢さん』
俺も高宮さんと同意見。
『僕もそう思うけど、偏見はやめた方が良いと思う。クラスメイトっていってもひと月だから人となりがよくわかってないでしょ。自分達の安全を考えても決めつけは良くないと思うよ』
リクの言うとおりだな。
「とりあえず、そういう情報があったことを把握しておいてくれ。さすがに笹崎さんが救世主ってことはないだろうが、女子生徒は要注意。連絡が来るかもしれない」
『私、片山さんの連絡先を知ってるね。向こうのスマホが使えるかは知らないけど』
接触というか、探りも……いや、やめたほうがいいか。
「今はまだ、連絡は避けよう」
『了解』
「じゃあ、そっちは明日、神戸に入ってくれ。ミナトと合流できたら連絡して」
『おけー』
高宮さんの明るい声と共にじゃらじゃらと牌を混ぜる音が聞こえてきたので電話を切った。
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