第090話 決めつけるなー
準備を終え、待っていると、リンダ姉さんが戻ってきた。
「お待たせしました。車を確保しましたよ」
「本当にすぐだな」
あれから1時間しか経っていない。
「昨日、親しくなって、連絡先を交換した人がいましたからね。事情を説明したら快く貸してくれました」
ありがたいことだ。
多分、マナだろうけど。
「俺達はもう出られる。リンダ姉さんは?」
「私は身軽です。いつでもいけますよ。色んな意味でね」
無視、無視。
「高宮さん達はどうだろう?」
「エルヴィスさんとリクさんは下のロビーにいましたよ。正確にはエルヴィスさんは外でタバコを吸ってましたけど」
高宮さんと北浦さん待ちか。
多分、靴下かヘアピンだろう。
「俺達もロビーに下りるか」
「そうね」
「では、参りましょうか」
俺達は部屋を出ると、エレベーターで1階に下りる。
すると、ロビーのソファーにリクがいたのでそちらに向かった。
「あ、そっちも行くの?」
リクが聞いてくる。
「ああ。車は確保できた。もう出ると思う。そっちは高宮さんと北浦さん待ちか?」
「うん。でも、もう来ると思うよ。僕らも出る」
ここでお別れか。
「せっかく合流できたのに悪いな」
「大事なことだよ。それに今度は一人じゃないし、逆にミナトと合流しに動くわけだから嬉しいよ」
それもそうか。
「頼むぞ。ミナトと北浦さんは怪しい。エルヴィスも賭け事は好きだ。高宮さんも若干、流されやすいところがある」
「うん。わかってる」
リクが頷くと、エレベーターが開き、高宮さんと北浦さんがこちらにやってくる。
「「おまたー」」
「お股?」
もじもじすんな、サキュバス。
「もう言わね。高梨君達も行く感じ?」
高宮さんが聞いてくる。
「ああ。俺達も行く。ちょっと離れることになるけど、気を付けてくれ」
「そっちもね。じゃあ、神戸で」
「ユウ、頑張って」
「頑張って」
何故か励ましをもらうと、3人が出ていき、タバコを吸っていたエルヴィスと共にリンダ姉さんのミニバンに乗り込んだ。
「では、我々も行きましょうか」
俺達もホテルに出ると、前に止まっている軽自動車のところに行く。
「これ?」
アヤカがリンダ姉さんに聞く。
「ええ。別に大きい車で行く必要もないですからね」
「ふーん……ユウ君、どっちが助手席に乗る?」
うーん……俺かなぁ……
「2人共、後部座席でいいですよ。昨日みたいにこっそりと小指と小指を絡ませてください」
「やってないから」
やったような……
「ふふっ、まあ、乗ってください。私達も出発です」
高宮さん達はすでに出ている。
「ユウ君、乗ろ」
「そうだな」
俺とアヤカが後部座席に乗り込むと、リンダ姉さんが運転席に乗る。
「それでは四国の旅に向けて、出発です」
エンジンが点き、車が走り出した。
俺とアヤカは岡山の町並みを見る。
「やっぱり悪魔の数が多いわね」
「徳島からも流れてきているんじゃないか?」
「正解です。ただ、そもそも広島、岡山、兵庫は多いらしいですよ」
へー……
「リンダさん、今日はどこまで行くの?」
「まずは香川です。やはり情報集めが大事になってきますのでね。とりあえずはお昼を食べにうどん屋にでも行きましょうか」
香川はうどんが有名か。
「もう昼前だしな。えーっと、着くのは12時過ぎか」
1時間くらいで着くっぽい。
「リンダさん、橋は大丈夫? 下関に行く際は検問があったみたいだけど」
「ここもあるそうですよ。ただ、現在は開いています。香川への援軍のためですね。好戦的な種族は勝手に行きますから」
「悪魔ってその辺が適当というかラフよね」
「仕方がないですよ。種族がバラバラなんですから。逆に言えば、人間側の強みが統率力なんです」
統率力がある軍を相手にしても互角以上に戦えるのが悪魔だ。
個々の力が違うし、一番は大将だろうな。
ヘカトンケイルとかベルゼブブだし。
結局見なかったけど、岡山はドラゴン。
「まあ、今がチャンスってことだな」
「ええ。スムーズに渡れます。一方でもし、何かあって、封鎖でもされたら閉じ込められちゃいますね」
それは嫌だな。
「しかし、四国って、広島、岡山、兵庫といった悪魔の町に道を押さえられてるよな? 住んでいる人間は出られるのか?」
本州に行けないし、閉じ込められてる感じだ。
「船がありますよ。海上は人間の独壇場ですね。悪魔もそこまで出張りませんから」
たまにハーピーが魚をもらいに行くくらいか。
町中を眺めていると、車が坂を上がっていく。
というか、これは……
「リンダ姉さん、高速道路じゃないか?」
「そうですよ。この道は大丈夫なので安心してください」
まあ、確かに前の車も高速に入ってるけど……
「どうも高速道路は怖いんだよな」
「大丈夫ですってー。たとえ地雷があっても踏むのは前の車ですよ」
そりゃそうなんだけどな。
当然のように料金所をスルーし、高速道路に入ると、すいすいと進んでいく。
「軽はスピードが出ませんねー」
「出さなくていいわよ」
「安全運転で頼む」
怖いわ。
「真面目な夫婦です。きっと貯金とかするんでしょうね」
「いや、貯金はするでしょ」
「うん。俺はそれで店を出したぞ」
異世界に置いてきちゃったけど。
「しなさそうなのがあなた方の仲間にいるんですよねー……」
北浦さんの悪口を言うんじゃない。
あんたの妹分だろ。
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