第091話 UDON
高速をどんどんと進んでいくと、徐々にだが、車が増えてくる。
「皆、援軍かしら?」
「全員がそうじゃないと思いますが、そういう人もいますね。隣を見てください」
リンダ姉さんが促してきたので並走している車を見ると、窓を開けて、腕を出しているちょっとガラが悪い感じのウェアウルフが4人乗っていた。
「いかにもね」
「俺達が目が合わないように地面を見てやり過ごすタイプだ」
「見てわかる通り、あれは援軍ですね。まあ、悪魔側としても放っておくことはできませんからね。この人達は暴れたいだけの気もしますけど」
そんな感じだ。
その後も周りの車を見ていくが、強そうというか、戦いが好きそうな種族ばかりだった。
そして、さらに進んでいき、トンネルを抜けると、橋が見えてくる。
「おー、海だ」
「やっぱりすごいわね」
陸から見る海も綺麗だが、その海の上を走っていくのもまた違った感動がある。
「海は良いですね。この海は下関で見た海とも、萩で見た海とも繋がっているんですよ」
「へー……」
そりゃそうだろという言葉が浮かんだが、口から出たのは感嘆の言葉だった。
「下関の市場で会ったサハギンがここまで来てるのよね」
「確かにそうだな」
海を見ていたが、やはり数分で橋を渡り終え、四国にやってきた。
「アヤカさん、四国ですよ。懐かしいですか?」
「いや、私、飛行機で来たし、この辺は来てないわね。それにもうずいぶんと前の話よ」
10年以上前だからな。
「高知に着いたら哀愁を感じてください。ただ、あなたにはちゃんとユウさんがいることを忘れてはいけませんよ」
「何よ、それ?」
「彼氏ですって紹介するんですよ」
「彼氏じゃないし」
そうだな。
「ふふふ、さて、高速は降ります。これ以上先は危ないので」
リンダ姉さんがそう言うと、高速を降り、香川の町中を進んでいく。
「腹減ったなー」
「うどんだっけ? どこに行くの?」
「とりあえず、丸亀市に行きます」
安直な……
「さぬきじゃないのか?」
「逆です。さすがにそこまではしません」
「えーっと……」
地図アプリで確認すると、確かに高速道路からさぬき市は東だった。
俺達は西の愛媛に向かうのだから確かに逆だ。
「リンダ姉さん、地理に詳しいな」
「ちゃんと調べているだけですよ。運転手なもので。あなた方も免許を取ればわかります」
「いや、リンダ姉さん、免許持ってないでしょ」
無免許運転……あれ?
「ねえ、今さらだけど、警察とかに止められたらマズくない?」
アヤカも同じことを思ったようだ。
「そうだよな。出雲や岡山の山間部なんかの人間の町で普通に運転してたけど、悪魔以前に免許なしだ」
普通に違反。
「大丈夫ですって。人間なんてイチコロです。ちょっとかがんで胸元を見せれば私の言いなりですから」
対処するすべがなかったらあれだけのマナを持っていた吉井でも性癖暴露だからな。
「実際、リンダさんのチャームってどれくらいいけるの? ユウ君や松永君は防げてるみたいだけど」
「チャームは魔法です。ゲーム的に言えばデバフですね。防げる人は防げます。防げない人は防げません。ただそれだけです。ですが、私はラブの匂いや性的なものの匂いに敏感なのでだいたいのことはわかりますね」
へー……俺のを見ないでね?
「じゃあ、警察とかに止められても大丈夫なわけ?」
「ええ。問題ありません。そもそも止められることなんて滅多にありませんよ。それこそ徳島の方に行ったら危ないでしょうけど」
それもそうか。
というか、熊本でも島根でも岡山でも自衛隊は見たけど、警察官は見てないな。
「ふーん……」
「ふふっ、アドバイスでもいりますか?」
「いらない」
「まあ、あなたは必要ないでしょうね。選ばれし者は常にそうです。あ、うどん屋発見です。行きましょう」
リンダ姉さんがうどん屋に入り、駐車場に車を止める。
うどん屋は日本家屋っぽい外観だ。
「当然、悪魔が作ってるんだよな?」
「それ以外にないからね」
俺達は車から降りると、うどん屋に入る。
すると、昼時ということもあり、結構な人数の客で賑わっていた。
「いらっしゃい。3名様ですか?」
エプロンをした一つ目の女の子が聞いてくる。
「ええ」
「カウンターでも良いですか?」
テーブル席は埋まってるな。
しかも、ガラの悪い悪魔達だ。
「大丈夫ですよ」
「では、どうぞー」
俺達はカウンターに座った。
リンダ姉さん、アヤカ、俺の並びだ。
「何にしますか? 私は天ぷらうどんにします」
「私は玉とじかなー?」
「俺、肉うどんにしよ。アヤカ、唐揚げがあるけど、分けない?」
アヤカは地味に唐揚げが好きなのだ。
「良いわね」
「シェアが好きな夫婦です。すみませーん」
「はいはーい」
一つ目の女の子が水を持ってやってきた。
「天ぷらと玉とじと肉うどん。それとサイドの唐揚げを一つ」
「はーい。天ぷら、玉とじ、肉ー。それと唐揚げでーす」
「はいよー」
一つ目の女の子が叫ぶと、奥の厨房から男性の返事が聞こえた。
「ところで、一つ目ちゃん、ちょっと聞きたいんですけど、いいですか?」
「何でしょう、サキュバスさん?」
「おや? 私がサキュバスってわかるんですか?」
「私の目は真実を映します。種族くらいならわかりますよ」
じゃあ、俺とアヤカが人間ってわかってるじゃん。
「へー……良い目ですね。まあ、種族はどうでもいいんですけど、徳島の方はどうですか?」
「え? お客さんも援軍ですか? そうは見えないんですけど……あ、もしかして」
一つ目ちゃんが俺とアヤカを見る。
「いや、違います、違います。私達は愛媛に行きたいんですよ。温泉を楽しむわけですね」
「人間の町ですよ? サキュバスは気楽ですねー」
「バレないですから。安全に愛媛に行きたいからちょっと知りたいわけです」
「そうですか。徳島は荒れてますね。逃げてきた悪魔達も吉野川付近に集まっていますし、そこで自衛隊と小競り合いをしています。さらにはご覧のように頭の悪そうな悪魔が岡山から来ています」
一つ目ちゃんが毒を吐くと、テーブル席にいるウェアウルフが反応し、睨んできた。
「あん? 俺のことを言ったか? 殺すぞ、チビ」
「バカ、やめろ。呪われる……あ」
「バカだなー……モノキュラーだろ」
仲間のウェアウルフが慌てて止めたのだが、一つ目ちゃんに睨まれたウェアウルフが口を開けたまままったく動かなくなった。
「ね? 頭が悪いでしょ?」
ちょっと怖いぞ、この一つ目ちゃん……
笑顔なのがより怖い……
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