第089話 二手
「エルヴィス、神戸は?」
「かなりの歓楽街になってるらしいぞ。遊園地まであるらしい」
それは楽しそうだな……
「なんでそんな町にしてるんだ?」
「さあ? 好きなんじゃねーの? 悪魔は現地のものを利用する奴が多いが、ベルゼブブは町自体を作り変えてるみたいだ」
目的は何だろう?
やはりマナか?
「わかった。侵入方法とかは?」
「普通に行ける。何なら観光バスとかもあるらしいぜ。岡山からも便があるってよ。ツアーまで組んでる」
すごいな……
「神戸から大阪、京都には行けるのか?」
「その辺はわからん。ただ、やはり道は多いし、探せばルートはどうとでもなるだろ。それとここ数年はあの辺りで戦闘はないんだってよ。大阪の会社が商売をしているのもその辺が影響してるかもな」
ベルゼブブは上手くやっているんだな。
「神戸を出る方法は何とかなりそうか」
「ああ。あとは向こうで探すって感じだな。神戸は以上だ。それでどうするよ?」
「ええ。ミナトさんとは早めに合流した方が良いでしょう。ただ、四国にいるアヤカさんの祖父母のことがあります。私は先に神戸に行き、ミナトさんと合流してからこちらに戻って、四国に行くというのでも良いと思います」
まあ、その案が最初に浮かぶな。
「昨日、アヤカには話したんだが、俺は二手に分かれる案を推したい」
「二手ですか……同時に動くということですね?」
「ああ。ミナトと早めに合流するのは俺もそう思う。一方で四国だ。徳島のことがあるし、こちらも早めに動きたい。それに加えて、救世主、切り裂きジャックのこともある。まだこの辺にいても不思議じゃない。特に吉井だ。あいつも俺達が岡山市にいることは想像できているだろう」
岡山の山間部で会ったわけだし、リクが萩にいたことは知っているわけだから当然、俺達の目的地はここになる。
「まあ、そうかもね。僕は賛成。救世主の目的が吉井と同じマナなら徳島が終わった後はこの岡山って考えてもおかしくない」
リクが頷く。
「消去法でそうかもねー」
「香川より岡山の方が大きい町だもんね。広島は切り裂きジャックがうるさい。神戸はなんかすごそう。わかる、わかる」
高宮さんと北浦さんも頷いた。
「ユウさん、二手に分かれるならどういう分けですか?」
リンダ姉さんが聞いてくる。
「それは迷わなかった。四国に行くのが俺とアヤカとリンダ姉さんで、神戸に行くのが高宮さんと北浦さんとリク、そして、エルヴィスだ」
マジでこの分けしかない。
「運転できるのが私とエルヴィスさんですもんね。それで愛媛、高知と人間の町に行くのですから私が四国になります」
そこに俺とアヤカが加わるからもうそれで3人だ。
ちょっと考えたのはリクも加えることだが、ミナトのことを考えたらリクが神戸の方が良い。
あと、ストッパー役という意味も込めてある。
高宮さんもストッパー役をしてくれるのだが、ちょっとその場のノリでいくところがあるのも否定できないのだ。
「俺っちもその分けで良いと思うぜ。悪魔である俺達を分け、リーダーと副リーダーも分ける。というか、これしかない」
うん。
「高宮さん、北浦さん、どう思う?」
「良いんじゃね? いけるっしょ」
「私はユウがそう決めたのなら従う。ユウは間違ったことを言わない」
2人も賛成のようだ。
「リンダ姉さん、エルヴィス、頼めるか?」
「ええ。私は問題ありません」
「俺っちもだな。足はどうする? 車は1つしかねーぞ」
足、か……
「さっきバスがあるって言ってたが、それで神戸に行けないか?」
「いや、それでも足は欲しいな。場合によっては神戸から出るルートも探りたいし、情報集めもある。その際に車があるのとないのとでは大違いだ」
それもそうか……
「車でしたら借りれば良いのでは? マナを支払えば借りられますよ」
リンダ姉さんが提案する。
「レンタカー的な?」
「それでもいいですし、その辺の悪魔に言えばいいんじゃないですか? マナさえ払えば貸してくれますよ」
悪魔はマナ次第か。
「俺達が車を借り、四国に行く。四国から岡山に帰ったら返して、バスで神戸に向かうって感じ?」
「ええ。神戸に着いたらエルヴィスさんに迎えに来てもらえばいいです」
ふむ……悪くない。
「高宮さん、どう?」
副リーダーに確認する。
「さんせー。ウチらが大村っちを確保しておくよ」
「出発はいつにしよう?」
「そっちは車の確保次第だけど、午後くらいから出れば良いんじゃない? 分ける理由と同じく、岡山に長居しない方が良いだろうし、今日中に出ようよ」
それもそうか。
「アヤカ、ゾン子ちゃんに事情を説明して、高宮さんの電話番号も教えてあげて」
神戸に向かう高宮さんの連絡先も知っておいた方が良いだろう。
「わかったわ」
アヤカが頷き、スマホを操作しだした。
「高宮さん、わかってると思うけど、ミナトとの合流が最優先なこととトラブルは避けて」
「わかってるってー。任せなさい」
まあ、高宮さんなら大丈夫か。
エルヴィスもリクもいるし。
「連絡は密に取り合おう」
「おけー。よっしゃ。早速、動こう。ヒナ、部屋に戻るよ。松永っちもエルっちも準備!」
「おけー」
「ユウ、気を付けてね」
「カツオでも買ってきてくれや」
高宮さん達が部屋から出ていった。
「それでは私も車の確保に行ってきます。ユウさんとアヤカさんもいつでも出られるようにしておいてください」
「ああ」
「お願い」
リンダ姉さんが部屋から出ていったので俺とアヤカは服を着替え、出発の準備をしていった。
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