第087話 電話
その後も俺達の部屋で話をしながら過ごしていく。
時刻は23時を回ったが、まったく眠くないのだ。
「ユウ、眠くなるポーションとかないの?」
北浦さんが聞いてくる。
「作れるけど、あれ、起きたら頭が痛くなるんだよ」
「それは嫌だね。まあ、ベッドに入ればそのうち寝られるか」
「多分な」
なんだかんだで寝られると思う。
「ヒナ、よく寝るから寝られるんじゃない? いつも遅刻するのは……あ」
アヤカがしゃべっていると、スマホの通知音が鳴った。
今の状況で連絡が来るのはエルヴィスかリンダ姉さん、もしくは、SNSだけ。
「アヤカ」
「うん。ゾンビちゃんから」
やはりか。
「何て?」
「大村君が連絡を取りたいって言ってるらしい。電話番号が書いてあって、ここにかけてくれって」
電話……
「アヤカ、かけてくれ」
「わかった」
アヤカはスマホを操作し、テーブルの上に置いた。
すると、スピーカーモードにしたらしく、プルルルルという呼び出し音が聞こえてくる。
「最初はアヤカが話してくれ」
「ええ」
アヤカが頷くと、呼び出し音が止んだ。
『もしもしー、高高同盟さんですか?』
若い女性の声が聞こえてきた。
「ええ。アヤカよ」
『どうもー。ゾン子ちゃんでーす。あ、芸名というか、通り名です』
ゾン子ちゃん、ゾンビなのにテンション高いな。
「よろしく。それで早速だけど、大村君がいるの?」
『うん、いるね。ミナトちゃん、話していいよ』
『宮前か? あ、いや、高梨か』
男性の声が聞こえてきた。
この声は間違いなく、ミナトだ。
「大村君? 宮前でいいから。そんなことよりも無事?」
『とりあえずはな。そっちはどうだ? 少なくとも、ユウとは一緒なんだろ?』
「ええ」
アヤカが頷くと、俺を見てきた。
「ミナト、ユウだ」
『ユウ! 無事で良かったぜ。いきなり日本に帰されるし、神戸だし、悪魔とかいうのがいうじゃうじゃいるしで心配だったぞ』
「わかる。俺とアヤカも別府に飛ばされた」
『別府? 聞いたことはあるが、どこだっけ?』
こいつ、桃〇をやってないな?
「大分県だよ。九州だ」
『また東京から遠いところだな。でも、宮前とは合流できたのか』
「いや、最初から同じところに飛んだ。あの神の声が聞こえた時にウチの店で一緒だったんだ。それでとっさに手を握ったらまとめて飛んだ。実際、高宮さんと北浦さんも同じだ」
意識してやったことじゃないが、英断だった。
『ん? 高宮と北浦も一緒か?』
「いるよーん」
「というか、ミナトだけがぼっち。皆、揃ってる」
高宮さんと北浦さんが声をかける。
『マジか。え? じゃあ、リクもいるのか?』
「いるよ。僕は拾ってもらった感じ」
『そうか……俺以外が全員揃ってるのはちょっと寂しい気もするが、朗報だな』
ぼっちだもんな。
「俺とアヤカが別府に飛んだんだが、アヤカと高宮さんのスマホが使えたからすぐに合流で来たんだ。2人は小倉……福岡県な。そこにいたから近かった」
『スマホが使えるのはでかいな。俺、一回、川に落としたから壊れてると思う』
あー……なんかそんなこともあったかも。
「それは無理だろうな。高宮さん達と合流した後はSNSで萩にリクがいるっぽいことを掴んで、最終的には島根で合流したんだよ。それで俺達は今、南下して岡山にいる」
『なるほどな。隣か……しかし、お前ら、順調というかすげー動いてるな』
あ、このことも言わないと。
「俺達は車で移動しているんだ。転移した後に良い出会いがあって、悪魔のゴブリンとサキュバスに協力してもらったんだ」
『サキュバスか……』
そこに反応するなっての。
「今はちょっと情報集めで外に出ている。ミナト、お前はどうなんだ?」
『俺なー……神戸に転移したんだけど、途方に暮れてた。それでちょっと肉体労働をしながら過ごしていた』
肉体労働……
「まさかカジノで負けたとか言わないよな?」
『まあ、負けたは負けたが、それは別。単純に衣食住のためだよ』
やっぱりやってるし。
「マナで支払えばいいだろ」
ミナトだってマナの量は多い。
『あー、それがな。話せば長くなるから簡潔に言うが、神戸って区画が分かれてるんだ。真ん中にカジノがあり、それを囲うように各区に分かれている。俺がいるのは人間がいる区間なんだが、通貨が普通に円なんだよ。俺、1000円も持ってねーよ』
人間への門も開いているとは聞いていたが……
「悪魔の方には行けないのか?」
『色々あってな……というか、50万稼ぐまで出られない』
バカ……
「めっちゃ負けてるじゃねーか」
『いや、ちげーから。衣食住付きの寮に入って、仕事の斡旋を頼んだんだけど、それで稼がないといけないだけだから……ちょっと借金もあるけど』
こいつ、一人にしたらダメだ。
「迎えにいくから反省して待ってろ、バカ」
『悪いなー。それでよー、俺、当然スマホがないから連絡が取れないんだわ』
「そういやゾン子ちゃんとはなんで繋がったんだ?」
人間の区画にいるんじゃないの?
『ゾン子ちゃん、動画配信者でもあって、仕事中に会ったんだ。その際に話をしたら高高同盟っていうフォロワーがいるって聞いたんだよ。高梨アヤカってアピッてたし、すぐにわかった。絶対に北浦の案だろ』
正解。
「そのためにやったやつだからね。結婚してないわよ」
アヤカが否定する。
『ふーん……まあ、どちらにせよ、連絡が取れて良かったぜ。それですまん。もうすぐで消灯時間だから寮に帰らないといけない』
寮っていうか、もはや監獄では?
「わかった。お前はそこにいろ。これ以上、借金は増やすなよ」
『わかってるって』
ハァ……
「ゾン子ちゃん、連絡は取れるか?」
『私も仕事がありますからいつもってわけじゃないですけど、連絡はできます。あとでこの電話番号でメッセージアプリに登録をしておいてください』
「ええ。よろしく」
『では、これで』
ゾン子ちゃんがそう言うと、電話が切れた。
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