第086話 3人「いつまで握ってんだ、こいつら」
「負けたら奴隷ってこと?」
「そうなるな。ただ、悪魔は常に公平だ。不正なんかないし、適度に賭ければ良いだけだよ。もっとも、それができないジャンキーがバカをするんだけどな」
うーん……
俺達は全員、リンダ姉さんを見た。
「性奴隷になっちゃいますね。えへ」
なんで性が付くんだよ。
それにあんたの場合は奴隷じゃなくなるだろ。
「そんなんねーよ。あ、いや、人間向けの風俗はあったかも……」
は?
「大将、人間向けって? 悪魔の町なんだろ?」
「人間にも門を開いているんだ。人間も負けたら労働だな。勝ったら金」
へ、へー……
「天職を見つけたかもしれませんね……」
何言ってんだ、このサキュバス。
「姉さん、仲間でしょ」
「はい、ぼんじり」
北浦さんがぼんじりを渡すと、リンダ姉さんがそれを食べ、ビールを飲む。
「うん、美味しい。一つ確認ですけど、人間もマナを得られるんですか?」
「あー、その辺は知らん。行ったことないしな。行ってから確認しろよ。説明とかも聞けると思うぜ。ほら、第二陣だ」
大将がカウンターに置くと、またもやエルヴィスとリンダ姉さんが持ってきてくれた。
「アヤカ、じゃがバターだぞ」
ホクホクで良い感じだ。
「美味しそうね。分けっこしましょう」
「そうだな」
アヤカが箸で2つに分けてくれた。
「……アヤカ、聞いてるかな?」
「……ダメじゃない? もう三分の二は飲んでるし」
またもや高宮さんと北浦さんがひそひそと話す。
「大将、兵庫から先は知ってるか?」
エルヴィスが聞く。
「さすがに知らねーな。情報が兵庫で遮断される感じだ。全然、入ってこない」
じゃあ、とりあえずは兵庫か。
「そうか……まあ、兵庫の方の情報はこんな感じだ。一応、この後も飲み屋とかで聞いて回るが、そういう場所だって思っておけ」
うーん……
「ミナト、そんなところにいるのか……」
「大村君、賭けてないわよね?」
どうだろ……
「リク、どう思う?」
「大丈夫だとは思うけど……ちょっと心配」
あいつ、調子に乗るところがあるからな。
「アヤカ、ゾンビちゃんは?」
「まだ返事は来てないわね」
そうか……
「高宮さん、ミナトと合流できたら大阪や京都の情報を集めて、なるべく離れる方向で良い?」
「良いと思う。リンダ姉さんもだけど、ヒナもエルヴィスもちょっと怪しい」
あー、小倉の競馬場で白熱してたしな。
それにエルヴィスはトランプでもマナを賭けている。
「私は良識がある」
「俺っちも限度っていうのは知ってるぜ」
「大将、ビールもらいますねー」
リンダ姉さんは良識も限度も知らないらしい。
「ユウ君、グラスが空いたけど、どうする? ソフトドリンクに変える?」
アヤカが聞いてくる。
「変えてもいいけど……ちょっとマスカットが気になるな」
ミーハーですまない。
「桃も美味しかったしね。まあ、もう一杯くらいなら良いんじゃない?」
それもそうだな。
これはアルコール度数が低いやつだし。
「リク、高宮さん、北浦さん、どうする?」
3人もグラスが空いているのだ。
「じゃあ、もらおうかな」
「そうだねー……さっきからアヤカが右手しか使ってない」
「マスカットが気になるよね……ユウは左手だけ」
記憶はないけど、いつからか手を握ってるからな。
「大将、マスカットのやつをくれ」
「てめーらで……酎ハイは無理か。ちょっと待ってろ」
大将が酎ハイを作ってくれたのでそれを飲みながら美味しい焼き鳥を食べていった。
そして、お腹がいっぱいになると、会計をし、店を出る。
「じゃあ、俺達は引き続き、情報を探ってくる」
「あなた達はホテルに帰ってくださいね。先に寝てても構いません」
15時まで寝てたからな……
どうだろう?
「明日はどうする?」
「そうですね……情報が集まっても神戸のゾンビさんからの連絡がなければ動けません。とりあえずは待機の方向ですね。何かがあれば動くこともあるでしょうからそのつもりで」
それもそうか。
「わかった。じゃあ、後は頼む」
「ええ。それでは」
リンダ姉さんとエルヴィスが奥に行ったので俺達は来た道を引き返し、ホテルに戻った。
そして、俺とアヤカの部屋に集まると、お茶を飲んで一息つく。
「焼き鳥、美味かったな」
「そうね。異世界で食べた鶏肉とは一味違うわ」
「お酒も美味しかったしねー。大将の顔が鶏なのが斬新だったけど」
「斬新というか、残酷というか……まあ、仲間ではないんだろうけど」
「こっちに戻ってから食は本当に充実してるよね」
皆、満足したようだ。
「神戸の話、どう思った?」
「これまでの悪魔の町ってそこのボスの思想が出てたじゃない? そういうボスなんでしょうね」
「ベルゼブブだっけ? 僕、聞いたことあるけど、七つの大罪とかに出てくる魔王じゃない?」
暴食だっけ?
ウチにヤギの角の色欲さんがいるけど。
「大物だろうなぁ……」
「でしょうね。でも、人間でも入れるっていうのは朗報だと思う。私達が行けることもだけど、大村君にピンチがなさそう」
それはあるな。
人間だからって襲われることはないだろう。
「ピンチはないかもだけど、労働してるかもねー」
「ありえる。ミナト、賭け事に弱そうだし」
まあ、そこはな……
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