第082話 知ってる4人、知らない1人
俺達は話をしたいことがあったが、特にしゃべらずにひたすら歩いていく。
戦闘もあり、疲労がすごいのだ。
しかし、歩かないといけない。
ただただひたすら歩いていくと、日が昇り始めた。
「5時半か……」
さすがにもう明るさ的に大丈夫なので普通にスマホを見る。
「今、どの辺りですか?」
リンダ姉さんが聞いてくる。
「あとちょっとだ。7時には着くと思うが……」
そう言いつつ、皆の様子を窺う。
リクと北浦さんは平気そうだ。
しかし、この2人は早めに眠気打破ポーションを飲んでいる。
7時までには効果が切れるだろうし、そもそもこの2人は体力がある方ではない。
それにアヤカと高宮さんがひどい。
戦闘もあったし、何よりもずっと気配察知で見張りをさせていたので目に見えて疲労が濃いのだ。
「どうしますか? 皆さん、疲労しておられますが、このままいけないことはないですよ」
いけるはいけるだろう。
こういうのを乗り越えてきたから異世界で10年も生きてきたわけだし。
「一気にいくか」
「車ですか? いけるとは思いますが……」
「良いんじゃねーの? この時間は一番安全だ」
夜は警戒するが、朝は一番警戒が緩むからな。
そもそもあの自衛隊は吉井を追っていた。
つまり自衛隊と悪魔が戦闘していたわけではないからそこまで緊張状態ということもまいだろう。
「車なら10分もかからない。行こう」
「わかりました。それでは道路に出ましょうか」
「ああ」
俺達は線路から外れると、道路に出る。
そして、空間魔法から車を出した。
「あれ? もう高梁に着いたん?」
「車で行くの?」
高宮さんと北浦さんが聞いてくる。
「あとちょっとだし、ここからは車で一気に行った方が安全と結論付けた」
「ぱぱっと行きますよー」
リンダ姉さんがそう言って、運転席に乗り込んだ。
「リクは後ろに乗ってくれ。お前と北浦さんはもうすぐで眠気打破ポーションの効果が切れる。それとアヤカと高宮さんも休んでくれ。着いたら起こすから」
「わかった」
「全然、眠くないのが逆に怖い」
「私はもう眠すぎて目が痛いね」
「ユウ君、お願いね」
皆が後部座席に乗ったので小さくなってくれたエルヴィスと共に助手席に乗る。
「では、参ります」
「ああ。この道をまっすぐ進んでくれたらいいから」
エンジンが点くと、車が動き出す。
そのまましばらく進んでいき、ついに高梁に入ったが、何かが出るということはない。
そして、ふと後ろを見ると、全員が寝ていた。
リクと北浦さんもポーションの効果が切れたようだ。
「リンダ姉さんは大丈夫か?」
「私は特に何もしてませんからね。それに体力にも自信があります。一晩中できますから」
無視、無視。
「エルヴィスは?」
「俺っちも問題ねーよ。むしろ、お前だ」
「俺はまだ大丈夫だ」
いける気がする。
ただ、ベッドに入ったら知らない。
「まあ、あと1時間くらいでホテルに着きますから今日は休んでくださいね。添い寝してあげましょうか?」
寝られなくなるやつじゃん。
もしくは、永眠。
「いらない」
「アヤカさんが良いんですもんね」
うるさいなー。
無視、無視。
その後も進んでいくと、完全に日が昇り、目が痛くなってきた。
それでも案内をしながら進んでいき、どんどんと高い建物が増えてくる。
「もう岡山市街か」
早朝だが、悪魔が歩いている。
「適当なホテルに入りましょう」
「えーっと……じゃあ、そこを右に曲がってくれ」
近くにあるビジネスホテルに案内をする。
そして、ホテルの前で車が止まった。
「みなさーん、着きましたよー。起きてください。ベッドで寝ましょう」
リンダ姉さんが声をかけると、後ろにいる4人が起き出した。
「眠いわね……」
「もう着いたんだー。早い」
「外が山から都会になってるね」
「あいたた、寝違えた」
俺は先に助手席から降りると、後部座席のドアを開ける。
「今日はもう休みにするけど、寝る前にポーションは飲んでおけよー」
「ユウがいてくれて助かるよ」
首を押さえたリクが下りてきた。
「アヤカ、大丈夫か?」
「眠いわね。ただただ眠いわね」
アヤカの手を取り、降ろす。
「寝てくれ。高宮さんと北浦さんも大丈夫?」
「すんげー眠い」
「あの空き家でトランプじゃなくて、寝ておけば良かったって思った」
まあ、それはそれで難しいけどな。
全然、眠くなかったわけだし。
「さっさと寝よう」
俺達はリンダ姉さんを先頭にホテルの中に入ると、受付にいるゴブリンのもとに向かった。
「おや? お仲間か。こんな朝早くにどうしたんだ?」
ゴブリンが聞いてくる。
「宿泊ですね」
「今、7時半だぜ? これからか? 随分と眠そうだけど、何かあったのかよ」
「さっきここに着いたんですよ。見ての通り、徹夜です」
「へー……大変だねぇ……ま、空いている部屋があるからいいぜ。シングルか?」
「シングルを1つ。あとはツインを3つですね」
んー? どう分けるんだ?
「はいはい。じゃあ、3万マナな」
ゴブリンが手を伸ばしてきたので俺が握る。
そして、マナを払うと、鍵をリンダ姉さんに渡した。
「はい。それではこちらがユウさんとアヤカさん、こちらがリクさんとエルヴィスさんです。あなた達はセット」
リンダ姉さんが俺、リク、高宮さんに鍵を渡す。
「セットですって?」
「いつもそうさ」
高宮さんと北浦さんの謎のやり取りはスルー。
「これから休むけど、どっかで集まって話をしたい。何時にする?」
リンダ姉さんに聞く。
「夕方にしましょう。場所はユウさん達の部屋で。まあ、17時くらいで良いんじゃないですか? その後に夕食を食べに行きましょう」
それが良いか。
俺達はエレベーターに乗り込み、ボタンを押す。
リンダ姉さんは2階であり、俺達が4階だ。
そのため、リンダ姉さんが先に降りた。
「姉さん、ありがとうねー」
「姉さん、大活躍だよ」
高宮さんと北浦さんが礼を言う。
「当然です。私は色んな意味でデキる女と評判――」
下ネタ姉さんが右手でモザイク必須のマークを作ったので閉めるボタンを押した。
「今の何?」
アヤカが首を傾げる。
「知らない」
全然、わからないです。
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