第008話 何でしょうね?
コンビニに入ると、中はそこまで商品があるわけではなかった。
雑誌コーナーは空だし、その他の棚も空いているところが多い。
「いらっしゃーい」
店員が声をかけてくる。
ぱっと見は普通の人間だが、色白い。
「……あれは?」
「……ゾンビだ」
ゾンビ……新鮮なゾンビだな、おい。
というか、ゾンビが店員は嫌だな。
「とりあえず、食べ物ね」
アヤカが籠を持ち、弁当のコーナーに向かったのでついていく。
すると、確かに弁当やおにぎりがあるのだが、俺達が知っているコンビニ弁当ではなく、もっと家庭的な弁当が置かれていた。
「こういう感じなわけね」
「当たり前だが、お前らが知っているような感じではない。人間の方はもっと充実しているかもしれないが、悪魔側は数が少ないから工場なんかを動かす人も限られているんだ」
そりゃそうか。
そして、パンがない。
小麦がないからだ。
「輸入がないのはちょっときついな」
「まあ、その辺はな。SNSを見る限り、ちゃんと物流が動いている町もあるみたいだが、少なくとも、ここはない」
まあ、別にいいか。
米だよ、米。
「普通に美味そうだな」
生姜焼き弁当を取り、籠に入れる。
「ホントよね」
アヤカも唐揚げ弁当を入れた。
その後も中を見て回り、お茶なんかも入れていく。
「ま、見ていけや。俺は外で吸ってる」
エルヴィスはそう言って、レジの方に向かったのでその後も商品を見ていく。
すると、店の扉が開き、オークが入ってきた
「いらっしゃーい」
店員ゾンビのやる気のない声と共にオークがまっすぐこちらにやってきた。
あまりの巨体だったので慌てて、避ける。
「失礼」
オークは軽く頭を下げると、水を取り、レジに向かった。
「オークもしゃべるのね……」
「だな。そんでもって、まったくこちらを怪しむ様子がなかったな」
「まあ、店員ゾンビを見る限り、そうなんでしょうね。道中でも人間の形に近い悪魔もいたわ」
いたな。
「このことをあいつらにも伝えておいた方がいいな」
もちろん、ドロップアウト組の4人。
「ええ。充電も溜まっている頃でしょうし、連絡を取ってみましょう」
俺達はレジに向かい、籠をカウンターに置く。
「いらっしゃーい。えーっと、1500マナになります」
ゾンビがそう言って、手を出してきたので握る。
アヤカとは違い、ひんやりとした手だった。
「ありしたー」
ゾンビが手を離し、支払いが終わったようなので弁当とお茶を持って、外に出る。
「おっ、買ったか?」
喫煙スペースでタバコを吸っていたエルヴィスがこちらにやってくる。
「ああ。まったく疑われることはなかった」
「だろ? お前ら、見た目はともかく、マナが普通じゃないからまず人間とは思われねーよ。まあ、車内で食え」
俺達は車に戻ると、乗り込んだ。
そして、アヤカがスマホを取る。
「あ、電波が入っている。まだ使えるみたい」
親御さんが解約しなかったのか。
俺のはどうだろう?
「俺にもモバイルバッテリーを貸してくれ」
「ええ」
アヤカがモバイルバッテリーを渡してくれたのでスマホを取りだし、充電を始める。
「連絡先は知ってるか?」
「マユミとヒナはね。大村君と松永君はわからない」
俺は知っている。
逆に高宮さんと北浦さんを知らないが。
まあ、女子と連絡先を交換するようなイベントはなかったのだ。
「かけてみてくれ」
「ええ」
アヤカはスマホを操作すると、プルルルという呼び出し音が聞こえてきた。
スピーカーモードのようだ。
「繋がってるわ! マユミのスマホも復活している!」
あ、呼び出し音が聞こえるっていうことはそういうことか。
『――アヤカ!?』
呼び出し音が止み、聞いたことがある声が聞こえてきた。
「マユミ!? 大丈夫!?」
『一応は。そっちは?』
「こっちも大丈夫だと思う。ユウ君と一緒」
『あー、そっか。高梨君の店に行ってたもんね。こっちもヒナと一緒』
高梨は俺ね。
「うん。ヒナも大丈夫?」
『大丈夫だよーん』
あ、北浦さんだ。
『高梨君は? 高高同盟は大丈夫?』
高梨と高宮だから高高同盟。
席も後ろ前だった。
実はあの1ヶ月だけの2年生時代に唯一話した女子が高宮さん。
「俺も大丈夫だ。なあ、ミナトとリクは?」
『ごめん。わからない。というか、そっちはどこにいるの? 私ら、何か知らないけど、福岡の小倉にいる。競馬場で角が生えた馬が走って、周囲が熱狂してる』
『負けたー。当たったら5万マナだったのに。なんか5番が突っ込んできた』
は? 競馬場?
というか、小倉?
それに北浦さんはなんで賭けてんの?
「俺達、別府にいるぞ」
『別府? 同じ九州だけど、県外じゃんか。同じ町に居たから近くにいるのかと思ったんだけど……』
「うーん……日本全体で考えれば、近いと言えば近いのか?」
『かもね。あの神がやったことだし、いい加減なんじゃない?』
それっぽいな。
しかし、これならミナトとリクも九州にいるかもしれない。
「ねえ、そっちはどう? こっちは悪魔とかいうしゃべる魔物しかいないんだけど」
『あ、こっちもそう』
小倉もか。
「あれ? 福岡は悪魔勢力か?」
エルヴィスに聞く。
「福岡は激戦地だ。博多なんかの西側が人間で北九州、門司、小倉、さらには下関なんかの東側が悪魔だな」
半分くらいわからない。
もっと地名を勉強しておくべきだった。
『ん? 誰かいるん?』
「えーっと、エルヴィスっていうゴブリンがいるわね……今、車の中なの」
『ゴブリン……そっちはどうなってんの? 転移したのは昨日の夕方というか夜だよねー?』
「えーっとね……」
アヤカが昨日から今までの出来事を説明する。
山側の集落で一泊したことと、エルヴィスに会い、話を聞いたこと、そして、別府の市街地まで来たことまでを丁寧に話した。
『へー……ゴブリンねー。親切なゴブリンもいるんだね。私、ゴブリンなんて安い経験値としか思ってなかったよ』
『でもさ、リンダ姉さんの言っていることとほぼ一緒だよ。やっぱり嘘は言ってないっぽいね』
ん?
「北浦さん、リンダ姉さんって誰だ?」
『そっちと同じようにこっちも悪魔に助けてもらった。こっちはゴブリンじゃなくて、えっちなサキュバスだけど』
そっちが良かった……いや!
「マジ?」
『マジ。ユウ達が好きそうな感じ。こぼれそう』
何がですかね?
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