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第007話 バケモノ


 その後もエルヴィスのスマホでSNSを見ていく。


「悪魔側も投稿しているんだな……」


 オークが『捕ったどー!』って猪を掲げている写真がある。

 シュールだが、閲覧数といいねはかなりの量だ。


「なんかすごいわね……」


 いや、ホント。


「見るのはいいけど、マジでフェイクニュースが多いから気を付けろよ。半分以上は嘘って思え。こっち側も人間側もな。それとお前らの仲間の情報はないか?」


 エルヴィスが運転しながら聞いてくる。


「どう検索する?」


 うーん……


「剣とか?」


 剣を持っている奴が多い。

 そして、日本にはない。


「剣っと……え? 普通に剣を持った人がいるんだけど?」


 確かにスマホ画面には剣を持ったヤンキーみたいな奴がいる。


「もう人間側も武器を持ってるぞ。あいつらもマナを学習しやがったんだ」


 マナを学習?


「どういう意味だ?」

「そうだな……マナを魔力みたいなものと言ったが、正確には違う。確かに魔法を使うのに使用するものだが、マナっていうのは生命力に近いものだ。そして、これはお前がくれたように別の悪魔から奪えるものなんだ」


 奪う……


「全然、わからん」

「そうだなー……俺が100マナを持った悪魔だとしよう。さっきお前から30マナもらった。そうなると、俺は130マナを持った悪魔になり、30の分だけ強くなれるんだ。あ、数字は適当な」


 戦闘力みたいなものなんだろうか?


「それを奪うっていうのは?」

「さっきは契約でもらった。その他にも何かを買ったりするのにもこのマナがいる。お前らの金みたいなものだ。俺達はマナなんだよ。そして、そのマナが悪魔としての格に繋がる」


 なるほど……


「ちょっとわかった。通貨に使っている力か」

「ああ。そんでもってこれは相手を殺しても奪うことができる」


 きな臭くなった。


「争いが起きそうだな」

「起きてる、起きてる。野蛮なオーガとかはひどいな。奪え、奪えって感じだ。もっとも、そういうことをする奴は袋叩きだがな。悪魔にも色んな考えを持った奴がいるし、秩序もある」

「あまり人と変わらないのね」


 そんな気がする。


「へっへっへ。そういう考えを持つ人間もいるな。まあ、その辺は人それぞれだから何とも言えねー。そんでもってな、このマナっていうのは人間でも奪えるんだ」


 人間……


「人間にはマナがないんじゃなかったのか?」


 どうやって奪うんだ?


「違う、違う。いや、人間の中にもマナを持っている奴もいるがな。ただ、俺が言ったのはお前が思っていることの逆だ。つまり人間が悪魔を殺してもマナを奪えるってことなんだよ。これはもう人間側も知っていることだ」


 人間が悪魔のマナを奪う……


 俺とアヤカはスマホを見る。

 剣を掲げているヤンキーみたいな男だ。


「お前ら、悪魔が一方的に人間を殺していると思っているだろ? 違う、違う。もうそのフェーズはとっくに終わっている。今は人間も悪魔も関係ない。強い者が弱い者からマナを奪い、さらに強くなっていく弱肉強食のフェーズに変わっている。それとこれも覚えておけ。人間側の町に行っても必ずしもお前らの味方しかいないわけじゃないぞ。もう10年前の平和な日本じゃない。ここは終末世界だ」


 そうなってしまったのか。

 たった10年で……

 いや、10年もあれば人は変わる。

 俺達がそうだ。


「マジか……」

「異世界から帰ってきたら世界自体がここまで変わっているなんて……」


 変わりすぎだ。

 面影がほぼないぞ。


「だからお前らに聞いたんだ。お前らの仲間は強いかってな。まあ、強いらしいし、簡単に殺されることはないだろ。どちらかと言うと、逆にお前らの仲間が荒らしそうだぜ」


 残念ながら否定できない。


「どう思う?」


 アヤカに聞いてみる。


「私達ドロップアウト組は大丈夫だと思うけど、先行組はどうかな? 好き勝手やっているって聞いたことがあるし」


 俺達はジョブの恩恵とスキルを持っていたから強かった。

 そして、その力を魔物狩りだけに使っていない人間もいたことは確かなのだ。


「俺達は実際に見たことがある」


 本当に好き勝手やっていたクラスメイトを……


「そう……」


 アヤカが俯く。


「何となくだが、お前らって派閥があったんだな。積極的に魔王を倒そうとする組、好きなことをしようとする組、そして、お前らか」


 ドロップアウト組。


「皆が皆、同じ方向には向けない。俺達だけじゃなく、異世界の人達もそうだった」


 本当に色々あった。

 良い人もいっぱいいたが、同じくらいに悪い奴もいた。

 敵は魔物だけはなかったのだ。


「そりゃ人間全部がそうだよ。いや、悪魔もそうさ。さて……そろそろ市街地だぜ」


 エルヴィスが運転する車が赤信号で止まった。

 すると、左右から車が通っていくのだが、乗っている人達はすべて悪魔だった。

 いや、それどころではなく、横断歩道を歩いている人達も悪魔だ。


「ホントに悪魔の町なんだ……ウェアウルフが普通に歩いている……」

「スライムまでいるぞ」


 なんかゴミ箱を漁っている。


「まだまだこれからだぜ」


 エルヴィスは信号が青になったので車を走らせる。

 すると、あちこちに悪魔がおり、普通に生活をしていた。

 歩いている人、店の中にいる人、ベンチに腰かける人……全部悪魔だ。


「人間がそのまま悪魔に変わったって感じがするわね」

「そうだな。異様な光景だ」


 何だ、これ?


「さすがに元居た人口よりかは減っているがな。悪魔は人間の1割くらいしかいない」


 それでもこの国では1000万は超えていることになる。


「ねえ、私達、本当に大丈夫?」

「なら試してみるか? ちょっと待ってろ」


 エルヴィスはそう言うと、コンビニに入り、駐車場に車を止めた。


「コンビニか……」

「懐かしいわね」


 いや、ホントに。


「下りろ。リンゴだけじゃ腹は膨れないだろうし、飯でも買おうぜ。俺もタバコを買う」


 えっと……


「売ってんの?」

「売ってるぞ」


 どうなってんだ……


「私達、お金がないわよ?」

「だから金なんかいらねーっての。必要なのはマナだ」


 マナ……


「さっきお前に渡したみたいな感じで支払えばいいのか?」

「そういうこと。普通に商品を持っていったら受付にいる店員が計算をし、勝手にマナを奪っていく」


 マジか。


「ねえ、マナを奪われると、私達って弱くなるわけ?」

「そうなるな。お前らの言う魔力が減る」


 魔力って回復するんだが……

 いや、最大MPが減る感じか?


「じゃあ、買いすぎたらいずれ魔力がなくなるじゃないの」

「それは困るぞ。俺は魔力がないとマジで弱い」


 魔法使いであり、錬金術師だもん。

 アヤカのような剣士じゃない。


「そんな大量に奪いはしねーよ。さっきユウが俺にくれたマナだけでも1年は遊んで暮らせるくらいだ」


 え? そんなに渡したのか?


「そんなに減った感じはしないんだが……」

「物の対価なんてその程度だ。それとお前らが規格外なんだろうよ。どれだけ奪えばそんなにマナを得られるんだって感じだ」


 奪う……


「なあ、俺達って異世界で強くなったよな?」


 アヤカを見る。


「同じことを思った。私達だって最初は弱かった。でも、魔物を倒していったら自然と強くなり、新しいスキルを覚えた。そして、気付いたら剣士がルーンナイトになったわ」


 俺もだ。

 魔法使いが錬金術師になった。


「ははーん? お前ら、異世界でマナを奪っていたんじゃないか?」


 そう思っている。

 そんな説明はなかったし、異世界の人もそんなことは一言も言ってなかったが。


「それっぽいわね……」

「あ、ああ。そうだな」


 一つの線が繋がった気がした。

 以前、男4人で冒険していた時、クラスメイトの女子の死体を見つけたことがある。

 そして、その近くの町でとんでもない魔力を持ち、目が淀んだ男子を見つけたのだ。

 俺達はビビってすぐに町をあとにしたが、あとであの女子はあいつがやったんじゃないかと話していた。

 あの時のあのとんでもない魔力は坂下さんを殺したことで……


「ユウ君?」


 いつの間にか俯いていたようでアヤカが顔を覗いていた。


「あ、すまん」


 嫌なことを思い出してしまった。


「お前ら、それだけのマナを持っているが、どれだけの魔物を倒したんだ?」


 良いタイミングでエルヴィスが聞いてくる。


「数えてない」

「さすがにね……毎日のように倒していたし……」

「そりゃすげーわ。お前ら、マジでバケモノになってるな」


 バケモノ……


「失礼ね」

「へっへっへ。まあ、心強いって思えよ。こんな世界だしな。さて、行くぜ。堂々とな」


 エルヴィスがそう言って、車から降りたのでアヤカと顔を見合わせる。

 そして、頷き合うと、車から降り、エルヴィスを先頭にコンビニに入った。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
最初に会ったのが良いゴブリンだというだけでこんなに面白い話になるとは……。
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