第079話 銃声
「……何の音?」
アヤカが声を潜めて聞いてくる。
さすがにここで騒ぎ立てるような人間はいない。
「銃声ですね」
「ああ、間違いないな」
リンダ姉さんとエルヴィスが頷く。
銃声かと思っていたが、本当に銃声だったようだ。
「自衛隊?」
「他にいねーよ」
「悪魔は銃を使いませんからね――おや?」
今度は連続した破裂音が聞こえてきた。
それも複数だ。
「戦闘だな。それも近い」
「こんな時間なのに大変ですね」
エルヴィスとリンダ姉さんは随分と落ち着いてるな。
やはり慣れてるっぽい。
「どうする?」
「悪魔との戦闘だと思うけど、巻き込まれるのが嫌」
そりゃそうだ。
「高梨君、決めて」
「リーダー」
高宮さんと北浦さんが聞いてくる。
「進むのは避けた方が良い。幸い、ここは集落だ。近くの空き家で様子を見よう」
「了解」
俺達は駅を出ると、急いで近くにある家に入った。
そして、念のために2階に上がり、そーっと外を見る。
「いないな?」
「銃声も――ッ!」
またもや連続した銃声が聞こえてきた。
「ん?」
銃声とは違う音が聞こえる。
「何? 何?」
「何か来るねー」
「車? いえ、これは……」
俺達が窓から道路を見ていると、ものすごいスピードのバイクが駆け抜けていった。
そして、その後ろには数台の車が走っていく。
しかも、銃を撃っていた。
「え? 何だ、今の?」
カーチェイス?
バイクだったけど。
「車の方は自衛隊だと思うけど……」
多分、そうだろうな。
「バイクの方はわかったか?」
「速すぎてよく……」
俺もだ。
「悪魔か?」
「私達が歩いてきた方向から来たわよね? 悪魔?」
うーん……
「犯罪者が逃げたか?」
「それであんなに銃を撃つ? いや、今の法律とかはわからないけど……」
そもそも犯罪者なら警察か?
警察があんなマシンガンみたいな弾を連発する銃を持っているだろうか?
それに警察ならパトカーだし、サイレンを……いや、この終末世界だからな。
「わからんな」
「そうね」
俺達の常識が通じない世界になってしまっているのだ。
「まあ、そこはいいじゃん。それよりも行っちゃったけど、どうするよ?」
高宮さんが聞いてくる。
「銃声の原因はわかったが、俺達の進路方向に行ったんだよなー」
「そだね。線路を行くからかち合うってことはないと思うけど」
でも、危険であることに変わりはないな。
「追っているように見えた。バイクが逃げ切るか、捕まえたら自衛隊は戻ってくると思うんだ。それを待とう」
「それが良さそうだね。じゃあ、待機ね。私とアヤカが見張るから休んでて」
俺達はアヤカと高宮さんを窓際に残し、部屋の中央で腰かけた。
「エルヴィス、リンダ姉さん、どう思う?」
俺達よりこの世界に詳しい2人に聞く。
「一番は悪魔側が奇襲でもかけて、それを自衛隊が追い払ったってところだな」
「それが一番可能性が高いです。ただ、1人だったのが気になります。1人で奇襲しますかね?」
無謀というか、大胆というか。
そこまで強い悪魔なのだろうか。
一瞬すぎて、魔力がわからなかったんだよな。
「1人で奇襲はない気がするな。それに人間という可能性もなくはない。ユウが言うように犯罪者が悪魔側の町に逃げ込むっていうのもないこともないしな」
「いますね。大抵は悪魔側の戦闘員にやられるか、すぐにどこかに行きますが……」
やっぱりそういう奴もいるんだな。
「ちょっと押し入れでSNSを見てくる」
北浦さんが立ち上がり、押し入れに入っていった。
「ユウ、自衛隊が戻ってこなかったらどうする?」
リクが聞いてくる。
「そこだよな……何時までここにいようか。北浦さん、今、何時?」
『1時半』
うーん……
「皆、眠気は?」
「まだ大丈夫ですね」
「俺っちも」
「私は限界。ポーションを飲みたい」
「私もちょっと厳しいわね」
アヤカと高宮さんは気配察知での見張りもやっていたからな。
俺達とは疲労が違う。
「俺はまだいけるが」
『ユウ、私はもう飲んでる』
「僕もだね」
あ、そうだった。
北浦さんとリクはいち早く飲んでた。
「1時間待つ。それでも何もなかったら行こう。いつまでもここにはいられないし、朝になれば自衛隊の援軍が来る可能性もある。眠気が限界の人はポーションを飲んでくれ」
そう言うと、全員が頷き、アヤカと高宮さんはポーションを飲んだ。
「何もないね」
北浦さんが押し入れから出てくる。
「やっぱり自衛隊の情報は出ないか」
「この辺りは人が少ないしね。目立ちたがり屋の悪魔や民間兵がいれば何かわかるかもしれないけど、そんな情報もなかった」
情報を得るのは厳しいだろうな。
「待つか」
俺達はその場で待機となり、時間が経つのを待つ。
さすがにトランプをする気にもなれないのでひたすら待っていったが、何も起きなかった。
そして、1時間が経過する。
「ユウ君、外には何も気配がないわ」
「うん。このまま待っても仕方がない気がする」
アヤカと高宮さんが窓の外から目線を外し、こちらを見てきた。
「わかった。行こう。アヤカと高宮さんに負担をかけるけど、これまで以上に警戒をお願い」
「ええ」
「任せてといてー」
俺達は立ち上がると、1階に下り、家を出る。
そして、駅に戻ると、線路に降り、再び、歩き出した。
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