第078話 夜中進軍
「そろそろ行くか」
「ええ。目もだいぶ慣れたと思う」
ずっと灯りを点けてないので暗順応は終わっている。
「行こう」
俺達はテーブルやカーペットなんかをしまうと、家を出る。
辺りは真っ暗であり、灯りが点いている家もないし、街灯も点いてない。
「火事が起きてなくて良かったわね」
ちょっと思った。
前に山根が火をつけたやつだ。
結局、あれはどういう風に片付けられたのだろうか?
「ここから先はスマホもなるべく見ないようにしよう。灯りが目立つ」
「ええ。行きましょう」
俺達は道を歩いていき、事前に調べておいた線路にやってきた。
「結構、雑草が生えてんねー」
「10年近くも使ってないわけだしね。でも、歩ける」
「まあね。アヤカ、昼間と同じで私が後ろを確認するから前をお願い」
「ええ」
俺達は昼間と同じように俺とアヤカを先頭に線路を進んでいく。
さすがにアスファルトの道路と違って歩きにくいが、それでも北浦さんが言うように歩けないこともない。
「皆、伏せて!」
高宮さんが声を出したのでその場にしゃがむ。
すると、草むらの向こうに灯りのついた車が見えたのだが、そのまま通り過ぎていった。
「やっぱり夜もいるな」
「ええ。でも、この草のおかげで良い感じに隠れられる」
使ってない線路だから雑草が伸びているのだ。
この暗さならしゃがめば、まず向こうから見えることはない。
「いけそうですね……」
「れっつごー」
俺達は線路上を歩いていく。
やはり何度か自衛隊らしき車が通っていったが、線路は完全に死角になっているので順調に進めていた。
なのだが……
「トンネルかー……」
目の前にはトンネルがあった。
「まあ、これだけ山があるんだからトンネルもあるわよね……」
中は真っ暗で何も見えない。
「何かいそう……」
「マユミ、縁起でもないことを言わないで」
前も真っ暗な中でトンネルは通ったが、線路上のトンネルって未知なんだよな……
「ビビってないで行きますよ」
物怖じしないリンダ姉さんがさっさと行ってしまったので続く。
「暗いなー……アヤカ、大丈夫か?」
「ギリね……」
俺もギリだ。
「姉さん、頼もしい」
「なんて頼りになる背中なんだ」
どうやら高宮さんと北浦さんはリンダ姉さんに引っ付いているようだ。
「リク、いるかー?」
「いなかったらホラーだよ」
そりゃそうだ。
「しかし、暗いなー。ライトの魔法でも使うか? トンネルの中なら外から見えなくないか?」
「やめた方が良いんじゃない? 万が一もあるし」
それもそうか。
「色んな意味でやめた方が良いですよ。こういうところは確実に蝙蝠が巣くっています。大惨事ですよ」
げっ!
「姉さん、こわーい」
「サキュバスパワーでなんとかしてー」
「大丈夫ですから。それよりも静かにしてください。蝙蝠が反応しますよ」
リンダ姉さんがそう言うと、全員が黙った。
そして、ゆっくりと進んでいき、なんとかトンネルを抜ける。
「あー、怖かった」
「そうね……で、次は橋ね」
トンネルを抜けたのだが、正面には橋がある。
どうやら山の次は川を渡るらしい。
「まあ、ちょっと幅が狭いが、これくらいなら大丈夫だな」
「さっきよりは遥かにマシね。行きましょう」
俺達は橋を渡っていくが、全然怖くなかった。
何故なら見えなくて高さがよくわからないから。
「第二の難所を越えたねー」
「こっちは余裕。でも、これからもトンネルはあると思う」
「そうですね。でも、いい加減、離れてください。歩きにくいです」
まだ高宮さんと北浦さんはリンダ姉さんに引っ付いていた。
「マユミ、警戒はしてね」
「やってる、やってる」
俺達はその後も歩いていき、トンネルを抜けたり、橋を渡ったりした。
何度か車を見つけ、隠れたりもしたし、周りが開けているところもあったので慎重に進んだりもした。
「今どこだろう? あと何時だ?」
「わからない。ユウ君、カーペットを出すから包まって確認してよ」
なるほど。
それなら光が見えない。
「出してくれ」
「はい」
アヤカがカーペットを出してくれたので包まり、光が漏れないようにスマホをオンにする。
「今、0時を越えてるな」
「そんなに? いつのまに……」
俺もちょっとびっくりだ。
まだ、2時間くらいだと思っていた。
「あとちょっとで半分ってところだな」
スマホをオフにすると、カーペットから出て、折りたたんでからアヤカに返した。
「半分ですか……このまま行けば明日の午前中までには岡山市の市街地に着きそうですね。皆さん、体調はどうですか? どこかの空き家で泊まるという方法もあります」
あるにはあるが……
「いえ、このまま行きましょう。夜に進んだ方が良いし、行けるなら行くべきよ」
「そうだねー。もうこのまま行けるよ」
「うん。ユウの眠気打破ポーションもあるからいける」
「僕も進んだ方が良いと思う。ちゃんとしたベッドで寝たいし」
全員、行く方だな。
「行こう」
俺達は再び、歩き出し、線路上を進んでいく。
そして、駅がある集落までやってきた。
「皆さん、ちょっとここで休憩しましょう」
「そうするか」
俺達は線路から上がり、駅の構内で休憩する。
ただ、駅といっても田舎の駅であり、雨を凌げる程度だ。
扉もなく、大きさ的にも公衆トイレくらいだ。
「ふう……」
「さすがに疲れたわね」
ホントにな。
「私は眠い。お先にポーションをもらう」
北浦さんが眠気打破ポーションを飲んだ。
「あ、僕も飲む」
続いて、リクも飲む。
「ハァ……タバコ、吸いてー……」
ポケットから出てきているエルヴィスがため息をついた。
「さすがに我慢してくれ」
「わかってるよ。この辺は戦地と言っていい場所だ。戦闘員が出てきても不思議じゃないぞ。人間も悪魔もな」
さすがに夜だから大丈夫って思いたい。
実際、巡回と思われる自衛隊の車も見なくなってるし。
「さっさと抜けた――ッ!」
話をしていると、パーンッという破裂音が聞こえてきた。
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