第077話 毒はなし
「疲れたー」
「さすがにずっと気配察知を使ってたものね」
高宮さんとアヤカがテーブルに突っ伏す。
「お疲れさん。ポーションを飲んでくれ」
ポーションを渡すと、2人が一気飲みした。
「あー、やっぱりこれよねー」
「ユウ君、ありがとう」
「こっちこそな。しかし、なんであんなに多いんだ? 大分と熊本だって小競り合いは頻繁にあるらしいが、あそこまで多くなかったぞ」
実際、俺達が別府に戻った後すぐに侵攻されてたし。
「何かあったのかしら? ちょっと調べてみましょう」
俺達はスマホを取り出し、SNSでこの辺のことを調べる。
しかし、何も載っていないし、情報はなかった。
「ないねー」
「まあ、そもそも自衛隊の動きはSNSに載らないだろうしね」
高宮さんと北浦さんが顔を上げる。
「岡山奪還作戦でもするのかもな。徳島を取り戻したらしいし、その勢いで」
「どうかしら? そんな短絡的にいく? 地形的には岡山の周りの広島も兵庫も香川も悪魔の勢力なんでしょ?」
うーん……
「ユウ、アヤカ、その辺は考えなくていいだろ。岡山は通過点だ。今は自衛隊をやり過ごして、高梁に行くことだけを考えればいい」
エルヴィスの言うとおりだな。
「夜ならライトがある車はわかりやすいし、隠れやすいしな」
「熊本がそうだったわね」
なんとかなるだろ。
「ねえねえ、思ったんだけどさ、道路を進まなかったら良いんじゃない?」
リクが顔を上げて、意見を言う。
「山越えをするのか? 無理だぞ」
日本の山は異世界の山とは訳が違う。
険しいし、いくら地図アプリがあっても場所がわからない。
「いや、そこまではしないよ。ほら、見て。この辺って線路があるんだよ」
リクがスマホを見せてきた。
確かに線路があるし、それが高梁まで続いている。
何ならそのまま岡山市まで行ける感じだ。
「あ、これだ」
「良いわね」
「松永っち、さすがー」
「偉い、偉い」
俺達はリクに向かって拍手する。
「良いと思いますね。自衛隊は車です。線路は走りません」
「こんな状況では電車も走っていない。道に迷うこともない。俺っちも良いと思う」
リンダ姉さんとエルヴィスも賛成のようだ。
「じゃあ、それで行こう。完全に暗くなる20時くらいで良いか?」
「良いと思います」
リンダ姉さんが頷くと、全員が頷いた。
「今は15時だから5時間か……トランプでもする?」
北浦さんが聞いてくる。
「岡山にいつ着くかわからないわよ? 休むのも大事」
「今から寝られるかな……ユウ、睡眠を誤魔化すポーションとかない?」
うーん……
「あるにはあるぞ。ただ、効果が切れた際に一気に来る。そんでもって、睡眠っていうのは人間の脳から送られる休めっていう信号なんだ。これを誤魔化すのは身体に悪いから多用は厳禁だな」
「ユウ、お医者さんみたいだね」
「店をやってたからな」
ちゃんと客に説明しないといけない。
だからその辺も勉強したのだ。
「さすが将来のことを見据えていた我らがリーダー。多用はしないからちょうだい。今回は特別」
「わかった。ちょっと作るわ」
人数分の眠気打破ポーションを作っていく。
「ユウさんは本当に何でも作れますね。正直になれるポーションでも作って、自分で飲んだらどうですか?」
多分、白い目で見られるな……
下手をすると、軽蔑される。
「そういうのは作らない」
「作れることは作れるんですね」
まあ……
「よし、できた」
テーブルに最後の眠気打破ポーションを置いた。
「早いな……」
「さすがですね……」
エルヴィスとリンダ姉さんが呆れる。
「すぐにできるからな。こいつは飲んだら6時間は眠気が来ない。飲むタイミングをどうするかだな」
出発の20時に飲んだら2時に眠気が来てしまう。
「今日、どこまで行くかよね……リンダさん、高梁からは車でしょ?」
アヤカが聞く。
「ええ。1時間程度で岡山市街に行けます」
「例えばだけど、朝に着いてもホテルに泊まれるかしら?」
「頼めばいけると思いますよ。悪魔はそんなにこだわらないので」
下関の時は掃除の時間とかあったが、最悪は掃除が終わるまで車の中で仮眠をとればいい。
「じゃあ、各々が眠くなったら飲む感じで良いんじゃない? 明日、岡山市に着いて、いきなり四国に行くっていうこともないでしょうし」
「ええ。まずは情報集めをしないといけません。四国は最近、大きな動きがありましたし、これまで以上に慎重にいかないと」
例の救世主のこともあるしな。
「じゃあ、そんな感じで」
アヤカがそう言うと、皆が眠気打破ポーションを取った。
そして、以降は暇なのでトランプをしたりしながら過ごしていくと、夕方になる。
「早めの夕食にするか。さすがに灯りは厳禁だし」
電気は通っていないが、灯りくらいなら魔法で出せる。
でも、外から目立ちまくる。
「そうね。カップ麺でも食べましょうか」
「あ、せっかくだし、フグを食べようよ」
北浦さんが提案する。
「あー、下関で買ったやつか。リクは食べてないし、良いかもな」
「フグ? 食べたの?」
リクが聞いてくる。
「下関に行った時に食べたな」
「毒も食べたねー。高梨君が解毒してくれた」
「珍味だった」
毒の部位を食べていた高宮さんと北浦さんがピースする。
「2人共、勇気あるね……」
いや、ホントに。
「何を食べる? 結構、買っただろ」
「鍋にしよー」
「うん。調理道具はあるし、皆でつつこうじゃないか。あ、姉さん、エルヴィス、酒はなしね」
そりゃそうだ。
「わかってますよ」
「さすがに控えるっての」
下関で買ったフグの切り身と調理道具を出すと、アヤカと北浦さんがキッチンに行き、調理を始めた。
ガスも水道も止められているが、カセットコンロを買ってあるし、水は魔法でどうにかできるのだ。
2人が手際良く調理していくと、すぐに鍋ができたので皆で食べる。
「美味いな」
ちゃんと出汁も利いてるし、下関で食べたあのフグ鍋だ。
「野菜はないけど、それは我慢してね。あ、出汁を取った昆布なら食べていいわよ」
もらおう。
「あ、パックの米があるから締めは雑炊にしようか。卵がないけど」
「良いねー。美味しそう」
「フグって美味しいんだね」
「なんか飲みたくなりますね……」
「毒の苦みが欲しいな」
悪魔2人は置いておこう。
俺達はフグを食べ、最後に雑炊で締めると、お腹いっぱいになったので片付けをする。
そして、ちょっと休憩をすると、次第に外が暗くなってきて、ついには20時を回った。
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