第075話 出発 ★
「すんごいナチュラルに手を握って、出ていきましたけど……」
姉さんが先ほど閉まった扉の方を見る。
「お酒でしょ。あの2人、マジで弱いから。そんでもって、イチャつきだす」
「そだね。なんかテンションが上がるし、アヤカの方がスキンシップ多めになる」
「どう見ても彼氏彼女だったね……」
ホント、そう。
「これは昨日もなんか怪しいですね。悪魔のお酒を飲んでたし、ヤッちゃったかなー?」
姉さんがニヤニヤしだした。
ホント、こういうのが好きな人だ。
「そうなん? 姉さん、わかるんじゃないの?」
前にそう言ってた。
「いや、実際は男女の匂いがしないのでセックスはしてませんね。ただ、キスくらいはしてるんじゃないですか? 記憶がないとかほざいてましたけど」
どうかねー?
「高梨君はマジで記憶がなさそうだったよ?」
「ユウさんはそれっぽいですね。でも、アヤカさんの方はどうですかねー?」
うーん……
「アヤカ、隠すからなー……」
ヒナに同意を求める。
「隠すね。アヤカは彼氏ができても絶対に言いそうにないし」
そんな感じ。
「ねえ、悪魔のお酒って?」
松永っちが姉さんに聞く。
「悪魔が作るお酒ですね。アルコール度数が強いんですよ。あの2人はそれを浜田で飲んだんです。2人っきりのホテルの部屋でね……プレリュードですね。そして、バーニングでフィニッシュです」
何言ってんだ、この人?
「へー……まあ、それで関係性が進めば良いと思うけど」
まあね。
「関係性が進んだのはそうだと思うよ。今まであんなにナチュラルに手を繋いだことはなかったし」
確かに見たことがない。
車の中でも繋いでたし、進んだのは確かだろう。
「もう一押しですね。アヤカさんもまんざらでもない顔をしてましたし、オーバードライブは近いです。皆さん、温かい目で見てあげるんですよ」
楽しそうだなー……
いや、乱すのは姉さんでしょ。
◆◇◆
俺とアヤカは川を見ながら歩いていく。
「綺麗ね……あれ、桜の木だし、時季によっては桜のライトアップがされると思う」
それはすごいだろうな。
でもまあ、今は5月だし、1年後だ。
「すごい綺麗だろうな。桜も10年見てない」
「ホントよね。何もかも10年振りってすごいわ」
もう覚えてないことも多い。
桜だって、アヤカに言われなければまったく頭になかったし、そもそも桜というワードすら10年ぶりに聞いたレベルだ。
「変わってないことはアヤカ達がいることだな」
「そうなるわね。そこだけは変わらないでいてほしいものだわ。これ以上ね……」
俺達は友人を失っているからな。
「これ以上は失わない。ミナトと合流して、東京に行こう」
「そうね……東京に行ったらどうする?」
「やっぱり起業かなー?」
「それだけ?」
うーん……できたら……
「色々と考えてはいるけど、まだ整理がついてない感じだな」
「そう。まあ、何にせよ、付き合うわよ」
「ありがとう」
「いーえ」
俺達は川を歩いていったが、ちょっと冷えてきたので旅館に戻った。
そして、トランプに合流し、楽しんでいくと、いい時間になったので解散となり、この日は就寝した。
翌日、ちょっと遅めに起きた俺達は朝風呂を堪能し、朝食会場で朝食を食べる。
「皆さん、ちょっとニュースです」
納豆をかき混ぜているリンダ姉さんが昨日のふざけまくっていた顔を潜めさせ、真剣な顔で言う。
「どうした?」
「萩で切り裂きジャックが現れたそうです」
マジか……
「本当か?」
「ええ。長門の子から連絡がありました」
仲居サキュバスか……
「なんで萩……」
そう言いつつ、見当がついているのでリクを見る。
「僕を狙った感じ?」
「広島から萩に移動しているのがな……」
広島でやりにくかったから移動したというのはわかる。
しかし、その移動先が岡山方面でもなく、下関方面でもなく、萩というのが……
「リンダさん、萩はどういう状況なの?」
アヤカが聞く。
「通り魔的に何人かやられたようですが、警戒していたようですぐに巡回の悪魔に見つかったそうです。その後は行方不明」
あそこのボスのディーンは対策をするって言ってたしな。
「次はこっち方面か下関方面だな」
広島に戻るのは考えにくいし、2択だ。
こっちに来てもおかしくない。
いや、むしろ……
「来るでしょうね。もし、情報収集をしていたら松永君や私達がこっち方面に来ていることがわかるわ」
「十分にあり得ますね。一応、可能性としては槍男の情報で九州方面に行くことも考えられますが……」
ないこともないな。
「そっち方面の警戒もしよう」
「そうね。ちょっと早いけど、もう出ましょうよ」
それが良いな。
「そうしますか。では、朝食後にロビーで」
「わかった」
俺達はぱぱっと朝食を食べると、部屋に戻り、エルヴィスにリンダ姉さんから聞いた話をする。
「うーん……そりゃリクを狙っているで間違いないだろうな」
エルヴィスもそう思うらしい。
「やはりマナか?」
「ああ。そいつがリクを知っているかはわからないが、例の写真のリクは杖を持っている。やりやすいと考えたんだろうな」
杖を持っているということは魔法使い系かヒーラー系。
どちらにせよ、切り裂きジャックがローグ系なら相性が悪い。
簡単にやれると思ってもおかしくない。
「徳島の救世主よりやりやすいだろうな」
絶対に強いし。
「そうだな。もし、他にもリクを追っている人間がいるという情報を知った時にどう判断するか」
俺達のことか。
「獲物が増えたって思うか、人数的に厳しいって思うかだな」
「ああ。何にせよ、さっさと離れるのは賛成だ。岡山に行こう」
「そうだな」
俺達は急いで準備をし、部屋を出ると、1階のロビーに向かった。
すると、すぐに女性陣も来たので旅館を出て、車に乗り込む。
そして、仲居さんに見送られ、旅館をあとにした。
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