第071話 悪くない
松江を目指し、道路を進んでいくと、左側に大きな湖が見えていた。
「大きいわね」
「そうだな。海みたいだ」
向こう岸まで何キロあるんだろう?
「こうやって色んなところを見て回れるのも今だけでしょうね」
「こんな世界だからな。貴重な経験だと思う」
俺とアヤカが外を眺めながら話をしているのだが、なんかリクと高宮さん、それに北浦さんがひそひそと話をしているのが気になる。
「どうした?」
リクに聞く。
「いや、別に。リンダさん、ちょっとコンビニに寄ってもらえませんか? トイレに行きたいんで」
「あ、私もー」
「じゃあ、私も」
「はいはい。では、入りますね」
リンダ姉さんがコンビニに入った。
皆が降りていったので俺もトイレに行っておこうと思い、降りる。
そして、先に入っていたリクが出てきたので入り、用を足して、出ると雑誌コーナーにアヤカがいた。
「何を見てんだ?」
「これ」
アヤカが表紙を見せてくれる。
【実録! 悪魔の生態と活動】と書いてあった。
「オカルト雑誌じゃないんだろうな」
「そうね。色んな悪魔が紹介されている。それに各地域に住んでいる有名悪魔とかも書いてある。ほら、これ」
アヤカが見せてくれたページにはたくさんのフライパンを持って、料理をしているヘカトンケイルの写真が写っていた。
なんか料理のプロって感じだ。
「長門のヘカトンケイルか」
「ええ。どうやって取材したのかはわからないけど、紹介文まであるわよ」
マジでどうやったんだろう?
「ちょっと買ってみるか。これからの旅に使えるかもしれない」
「そうね。買ってくるわ」
俺達はレジに行き、雑誌を買うと、車に戻る。
すると、リクが助手席に移動していた。
「ん? リクが前か?」
「うん。スマホに慣れたいし、リンダさんの道案内をしようと思って」
「助かりますねー」
ふーん……
まあいいかと思い、アヤカと車に乗り込むと、リンダ姉さんが車を発進させた。
「何買ったん?」
高宮さんがアヤカに聞く。
「これ」
アヤカが雑誌を高宮さんに渡すと、北浦さんとエルヴィスと共に見ていく。
「へー……」
「こんなのがあるんだ?」
「ゴブリンは女性を襲い……いや、襲わねーよ。種族が違うんだぞ」
嘘も書いてあるらしい。
「人も食べるって書いてあるねー」
「エルヴィス、こわーい」
「雑食ってだけだ。お前らと食うもんは変わらねーよ。あ、でも、この弱いっていうのは合ってるぞ」
エルヴィスは強いけどな。
「これから行く岡山のことは書いてあるか?」
「えーっと……悪魔大将はドラゴン……ドラゴン!?」
ドラゴンか……
「強そうだな」
「絶対に強いっしょ」
「異世界でも伝説の魔物だね」
当然、見たことがない。
「何か書いてある?」
アヤカが聞く。
「えーっと、写真はないけど、マスカットが好きでマスカット園にいる……なんか可愛い」
「果物が好きなのかな?」
急にメルヘンな感じになったな。
「何にせよ、マスカット園に近づかなければいいわけね」
「まあ、そうかな。あと、この雑誌に徳島のことは書いてないね」
「その辺は岡山で情報収集をしてから行った方が良いわね」
そうなるな。
またエルヴィスとリンダ姉さん頼みだ。
「みなさーん、そろそろ着きますけど、旅館に行っても良いですかね? 買い物とか観光とか他に寄るところはありませんか?」
リンダ姉さんが聞いてくる。
「そういえば、まだ13時過ぎだけど、旅館にチェックインってできるのか?」
「あー、熊本のホテルはほとんどが15時くらいだったわね」
その中で14時のアーリーチェックインできるホテルを選んだんだ。
「そうなんですか? 頼めば入れると思いますけど」
悪魔側はその辺が適当だからな。
長門の仲居サキュバスは夜中でもお腹が空いたらシェフを叩き起こして作らせろって言ってたくらいだし。
「リンダさん、やっぱり15時チェックインが多いみたいです」
スマホを見ていたリクが教える。
「そうですか。では、あと2時間、どうします?」
うーん……
「買い物でも行かない? 人間の町の方が充実しているし、リクも服とか色々欲しいでしょ」
北浦さんが提案する。
「あ、そうだね。僕、この服しかないし」
「ふむふむ。では、そうしましょうか。ショッピングモールに向かいます」
リンダ姉さんがそう言うと、市街地に入る。
そして、ショッピングモールにやってくると、駐車場に車を止めた。
「エルヴィスはやっぱり待機か?」
「そうなるな」
「私も待機しています。少し、今後のルートを考えたいので。皆さんは買い物を楽しんでください」
悪魔2人は待機か。
「わかった」
俺達は車から降りると、ショッピングモールに入る。
中は結構な人がおり、賑わっているように見えた。
「さて、まずは服屋ね。私もちょっと見たいわ」
「だねー。小倉とは品揃えが違うだろうし」
「2時間もあるし、ゆっくり見ていこうか」
乗り気な女性陣についていき、まずは服屋に向かった。
そして、色々と見ていく。
「10年前だからファッションセンスがわからないね」
リクが首を傾げる。
「俺は最初からわからん」
あまりファッションに関心がなかったし。
「そう? ユウの服、似合ってると思うけど」
「アヤカが選んでくれた」
いいだろ?
「なるほどね……」
「よし、松永っち、ウチらが選んであげるよ」
「任せて」
「遊ばないでね」
高宮さんと北浦さんはリクと共に服を選んでいく。
「そろそろ暑くなるし、夏ものも買っておけよー。あと部屋着とかもいるからな」
「あー、それもそうだね。お金って大丈夫?」
「大丈夫。ちょっと金持ちだから」
拾った金をもらった。
「じゃあ、大丈夫か」
女性陣がリクの服を選んでいき、購入した。
そして、今度は女性陣の方の買い物になったので俺とリクは下着や肌着の方を見ていく。
「こういう時に旅行鞄とかがなくていいから楽だな」
お菓子もカップ麺も服も何もかも入る。
その気になれば、大型バスだって入れられるぞ。
多分だけど。
「そうだね。空間魔法は本当に便利だよ。異世界でも今でも必須」
「まったくな」
「なんかちょっと旅行気分になってくるよ。それもどうかと思うけど」
まだミナトと合流できてないし、各地で争いが起きている状況だからな。
「正直に言えば、俺もそんな気分がしてる。でもまあ、良いんじゃないか? ミナトはそのうち合流できるだろうし、異世界でも旅気分だったろ。俺達、魔王を討伐してこっちの世界に帰らないといけないという深刻な感じだったのにそこそこ楽しんでいたし」
辛いこともあったが、楽しかったのも事実なのだ。
「確かに……うん、楽しかったね。旅もレステの町での生活も」
「今も……ミナトと合流した後も……東京に着いてからもその辺は変わらないと思う」
「うん。そうだね。そうしたいって思うよ」
その後、リクの部屋着や下着なんかを買うと、女性陣と合流し、ショッピングモール内を見て回りながら時間を潰していく。
そして、15時前になったので駐車場に向かった。
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