第068話 出雲へ
「うーん……なんと言うか、結構な争いがあるところもあれば、普通に楽しんでいるところもあるね」
スマホを貸すと、リクがSNSを見ながら苦笑いを浮かべる。
「実際、俺達が通ってきたルートはそんな感じだった。盗賊のオーガとかもいたけどな」
「僕がこれまで会った悪魔は皆、友好的だったよ。悪魔が悪いとかそういうことじゃないわけだね」
「どうかね? 俺達は間違いなく、侵略者だぜ?」
「そうですね。敵であることは間違いありません」
協力してくれている悪魔2人が言う。
「でも、ユウ達に協力してくれるわけだ。ユウ、悪魔と人間の争いはどうするの?」
「どうもしない。俺達でどうにかできる問題じゃないし、する気もない。そんな正義感は捨てただろ」
「そうだね……そんな大層なことはできない。東京が安全かはわからないけど、早く家族に会いたいのは僕も一緒だね。その後のことはちょっと今は考えられないけど」
リクも家族に会いたいわな。
「松永っちー。実はこれからアヤカのじいちゃん、ばあちゃんがいる四国に行くんだけど、松永っちの家族って東京以外にいるー?」
高宮さんが聞く。
「んー……宮前さんのか……僕はほぼ東京だね。皆は?」
「俺は千葉に叔父叔母と従妹がいるだけで基本は東京だ」
「ウチは静岡に親戚がいる」
「私は京都に従兄。まあ、今もいるかはわからないけどさ」
それは皆、そうだな。
「なるほどね……道中だし、寄るわけだ。その道中でミナトと合流できればいいけど……」
「大村っちはマジで情報がない。こっちで釣ってるけど」
「釣ってる?」
「ほい」
北浦さんがリクにスマホを見せる。
「へー……結婚したんだ。おめでとう」
リクが素のリアクションで俺とアヤカを見比べた。
「いや、釣りだよ」
「検索したら引っかかるようにしてるだけ。クラスメイトには気付かれずに私達だけがわかるやつってヒナが決めた」
俺とアヤカは即座に否定する。
「あー、それでアカウント名が高高同盟か。良いんじゃない? ミナトは気付くと思う。問題はミナトがSNSを見られる状態にあるかだね。電話が通じないんでしょ?」
「そうね。私はそこが問題だと思ってる。松永君もそうだったようにスマホが使える状態じゃないと厳しい」
少なくとも、ミナトのスマホがダメなのはわかっている。
あとはどこかで手に入れてくれるかどうかだ。
「どこに転移したかにもよるか……君らは一緒に転移したこともあるけど、すぐにエルヴィスやリンダさんに協力してもらったことが大きいね」
それはそう。
「そこはマジでツイてた」
「そうね」
「姉さん、マジ感謝」
「恩人」
ホントにな。
「マナをもらったからその返しをしているだけだよ」
「そうですね。悪魔ですから」
そうは言ってもここまで付き合ってくれているのだから本当に感謝だ。
「ねえ、広島の切り裂きジャックってやっぱりクラスメイト?」
「俺達はそう判断している。人間らしいぞ」
「じゃあ、クラスメイトか……ヤバいのもいたもんね……」
あ、言ってなかった。
「山根とは熊本で遭遇した。戦闘になり、最終的にはエルヴィスがやった。やっぱり坂下さんをやったのはあいつっぽい」
「そう……痴情の縺れ?」
「わからん。ほぼ会話が通じなかった感じだった」
ゲームの中の住人だった。
「そっか。異世界は過酷だったし、あっちに慣れてしまったら変わっちゃうか」
「俺達にはジョブとスキルがある。増長もあるだろうな」
「僕らはできなかったもんね。明らかに僕達よりも弱い人でも筋肉隆々の強面スキンヘッドを見たら即座に道を譲って地面を見てたし」
そういうことがしょちゅうだったな。
向こうの連中、優しい人も多かったが、怖い人も多かった。
「俺達は一人じゃなかったのが大きいと思う。最後の5年はアヤカ達もいたしな」
「そうだね。宮前さんがいたね。でも、そうなると、クラスメイトが怖いよね。まだこんな世界じゃなかったら良かったんだけど」
どうかねー?
力を持ち、異世界に馴染んだ人間が元に戻れるか。
「他のクラスメイトとの接触は避ける。山根の時はミナトかと思って、近づいてしまったが、今後は慎重にいきたい」
「そうだね。ミナトさえ合流できれば別に……あ、いや、なんでもない」
リクが言いたいことは十二分にわかった。
「俺はあっちの世界に残っても良かったと思ってる」
リクは家族に会わなくてもいいんじゃないかと言っているのだ。
「ユウはそうだよね。自分で道を切り開ける人間だし、実際に店を建てた」
「それはお前達がいてくれたらという前提があるがな。一人では無理だ」
「そうだね。宮前さんがいれば大丈夫だよね」
そこをちょこちょこ強調するな……
「みなさーん、そろそろ出雲市街地に入ります。まずはドラッグストアに寄りますよ?」
引率の下ネタ先生がそう言うと、山を抜け、市街地が見えてきた。
「それで頼む」
「そういやさ、出雲に来たけど、これからどうしよ?」
北浦さんが高宮さんに聞く。
「あー……松永っちは捕まえたしね」
「ポケ〇ンじゃないんだから」
リクがツッコむ。
「どうします? まだ午前中ですし、観光でもしますか? でっかい神社が有名らしいですよ」
「縁結びの神様だったか?」
縁結び……
なんかアヤカ以外の全員が俺を見てきた。
リンダ姉さんまでもフロントミラー越しに目が合う。
「有名なら行ってみるか? 正直、神様に良い覚えがないけど」
知ってるのはあの異世界の神だけど。
「ないわね……」
「あの女神、マジで害悪だったもんねー」
「ホント、最悪」
「こっちのことなんか一切考えなかったよね。せめてこっちの世界に戻すにしても時間が欲しかったよ」
ホントにな。
「えーっと、行きます?」
「まあ、せっかくだし、良いんじゃない? 松永君とも合流できたし」
アヤカが言うならそうしよう。
「では、参りますね」
リンダ姉さんがそう言うと、町中に入った。
しかし、警備がないどころか、自衛隊をまったく見かけなかったな。
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