第067話 合流
そのまま進んでいくが、リクの姿は見えない。
「実は通り過ぎた? 俺達の車を見て、隠れたかも」
「十分にあり得るわね」
やっぱりエルヴィスが言うように出雲市街の手前で待ち伏せがいいか……
「んー?」
リンダ姉さんが何かに気付き、車を止めた。
「どうした?」
「人間の匂いがしますね」
え?
「どこだ?」
「んー……あ」
リンダ姉さんが左の方を見ると、そこに畑で腰を下ろしているお爺さんがいた。
「人間よね?」
どう見てもそうだ。
魔力も感じない。
「そう見えるな。ちょっと聞いてくるから待っててくれ」
「私も行く」
俺とアヤカは車を降り、お爺さんのもとに向かった。
「こんにちはー」
「こんにちは」
俺とアヤカは休憩中のお爺さんに声をかける。
「何じゃ? わしはここから動かんぞ」
あー、退去命令に抗う人っぽい。
「いや、自分達はそういうのじゃないです。ちょっと人を探しているんですよ」
「ねえ、お爺さん、私達くらいの年齢の男性を見なかった? 1人だと思うけど」
「男か? さっきまでおったぞ。トイレを貸してやった。そのまま市街に向かったぞ。ほんの10分前くらいじゃ」
リクっぽい。
「ありがとうございます」
「ありがと」
俺達は急いで車まで戻った。
「どうでした?」
「10分前にここを通ったみたいだ。出してくれ」
「わかりました」
リンダ姉さんが車を発進させる。
すると、前方に歩いている男性の後ろ姿が見えた。
「あれは……」
「松永君じゃない?」
「だねー」
「リクだ! おーい」
北浦さんが窓から身を乗り出し、声をかけた。
すると、男性が振り向き、驚いた表情になる。
あの小柄な男は間違いなく、リクだ。
「へ? 北浦さん?」
車がリクの前で止まると、俺達は車から降りる。
「おー、リクだ!」
「久しぶりー」
「元気だった?」
「お疲れー」
俺達が声をかけたが、リクは目をぱちくりとさせている。
「えーっと、なんでいるのさ?」
「追ってきたんだよ。お前、萩にいただろ」
「いたけど……よく追えたね?」
「色々あったんだ。感動の抱擁はいるか?」
女性陣はやってた。
「いらないよ。いや、ごめん。頭が追いつかない。君らを探してたんだけど、まさかそっちから……しかも、一気に来るとは思ってなかった」
そりゃそうだ。
「とにかく、合流できて良かった」
「そ、そうだね……あれ? ミナトは? というか、誰?」
リクがリンダ姉さんを見る。
「あー……その辺も説明しよう」
「まあ、車に乗ってください。疲れたでしょう?」
「は、はい……ねえ、なんかこのお姉さん、怖いんだけど」
リクが小声で聞いてくる。
「サキュバスだから気を付けろ」
「は? なんでそんなのと一緒にいるの?」
説明がいるな。
俺達は車に乗り込むと、リクにポーションを渡し、飲んでいる間にこれまでのことを説明した。
なお、リクが俺の隣であり、助手席にはアヤカが回った。
「そういうわけで俺達は高宮さんと北浦さん、それにこのリンダ姉さんと合流した後、お前を探して、ここまで来たんだ」
別府からこれまでのことを順を追って、説明した。
「なんか色々あったんだね……いや、そのエルヴィスっていうゴブリンは?」
「ここにいるぜ」
北浦さんの肩にいるエルヴィスが返事をした。
「へ、へー……小さくなれるゴブリンなんて聞いたことがないや。それでこの人がサキュバス?」
「ふふっ、ノーと言わない女と評判のリンダです」
リンダ姉さんがウィンクをする。
「ど、どうも……松永リクです」
リク、めっちゃビビってるな。
そして、リンダ姉さんの目がSになってる。
「リク、お前はどうしてたんだ?」
「あー、僕ね。君らと同じように神様の声で転移したんだけど、萩にいたんだよ。最初はびっくりしたよ。しゃべる魔物がその辺を歩いているんだもん」
それは俺達もそうだ。
「攻撃とかしてないよな?」
「しない、しない。すごいフレンドリーに声をかけてきてくれたしね」
萩は穏やかな町だったからな。
「それからどうしたんだ?」
「色んな悪魔に話を聞いて、状況把握をしたよ。とんでもない世界になったね」
「それはそうだな。俺達もびっくりした」
いまだに完全には納得いっていないところがある。
「だよね? それでまあ、まずは人間の町に行こうと思ったんだ。色々と話を聞いて、こっち方面は争いが少ないって話だったからこっちに来たわけ。というか、広島方面は行くなって言われた」
切り裂きジャックがいるからな。
「お前、スマホは?」
「ダメ。壊れているみたいで充電しても、うんともすんとも言わない」
10年経っているし、そうなることもあるか。
「ミナトを知らないか? 異世界にいた時に一緒にいなかったのか?」
「あの時は別行動だったよ。僕は宿屋で休んでいたけど、ミナトは買い物に出かけてた。こっちに来てからは全然。というか、初めて会った人間がちょっと前のお爺さんで、次がユウ達だよ」
そうか……
「リク、自分がSNSに載ってたことを知ってる?」
北浦さんがスマホを見せる。
「何、この写真……めっちゃコメントで笑われてんじゃん」
「私らはこの写真を見つけて、萩に行ったんだよ」
「あ、笑われて良かったんだ……」
そうなるな。
「そうそう。それでさ、家族にも連絡をしたけど、繋がらない。リクの家族にも電話してみる?」
「あー……番号を覚えてない」
リクの場合はスマホが壊れてるしな。
「そっか。私らはこれから東京を目指すけど、リクも来るよね?」
「もちろんだよ。というか、置いてかないで。心細かったし、1人で山道を歩くのはきつかったよ。何度も心が折れそうだった。鹿を見た時はびっくりだったね」
だろうな。
俺もそうなる。
「松永君、出雲に着いたらどうするつもりだったの?」
アヤカが聞く。
「情報集めだね。何よりもネット喫茶にでも行って、皆と連絡を取れる方法を探したかった」
リクはスマホがなかったからきつかっただろうな。
そんな中であの山道ならなおさらきついだろう。
「となると、大村君も同じような感じかしら?」
「じゃないかな? まあ、ミナトは僕よりも戦えるし、まだ何とかなると思う」
その分、慎重さがないんだよな。
「皆さん、とりあえず、出雲に向かいますがよろしいですか?」
リンダ姉さんが聞いてくる。
「そうだな」
リンダ姉さんが車を発進させた。
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