第066話 山
どんどんと空いている道を進んでいくと、右に曲がり、海沿いの道とは別のルートに入る。
町中なのだが、通行人は皆無だし、建物にも人がいる感じがしない。
「またゴーストタウンか」
熊本の時と同じだ。
「っぽいわね……それに所々で争った跡がある」
アヤカが言うように壊れている建物なんかもチラホラあるのだ。
「なんか怖くね?」
「人間と悪魔の町の境界線ってこんな感じなんだ……」
高宮さんと北浦さんは初めてか。
何気に人間の町に行ったことがない2人だからな。
「先に言っておくが、ここはまだマシな方で阿蘇山周辺や小倉と博多の境界の遠賀川周辺はほぼ廃墟だぜ? これから先、同じように境界に来ることもあるだろうが、ショックを受けるなよ」
エルヴィスが忠告してくれる。
「確かにそんな写真もあったわね……」
「ホントに終末世界なんだ……」
「私らが通ってきた道は平穏だったからピンとこないよね」
確かにな。
「そういうルートを選んでいる。でも、ここから先はそうはいかない。四国に行くならなおさらだ。注意だけはしろよ」
「わかった」
そのままゴーストタウンを進んでいくと、動いていない信号のある交差点で車が止まった。
「ここがリクさんが降りた場所です。ここを左に曲がると、山道ですね」
リンダ姉さんが言うように左の道は平たんだが、先には山が見えている。
「エルヴィス、リクはここに何時に着いたかわかるか?」
「昼前って言ってたな。このルートで出雲に行くには歩きで12時間かかる」
エルヴィスがタブレットを見せてくれる。
確かに歩きだと12時間と表示されていた。
「ノンストップで行けば昨日の夜遅くには着いているが……」
「さすがにどっかで泊まっているんじゃない?」
俺ならそうするな。
夜の山道とか怖いし。
「時刻はすでに8時です。もし、リクさんが12時にここをスタートし、20時に休んだとします。そこから起きて出発したとしてもまだ出雲の町には到達していません」
確かにそんな感じはするな。
「リンダ姉さん、行ってくれ」
「わかりました。ここからはスピードを落とします。それと向こうがこの車を見かけた際に隠れることも考えられますのでなるべく外からあなた方の姿が見えるようにしてください」
俺とアヤカも熊本の時は車が来たら隠れたしな。
「わかった。窓を開けよう」
「アヤカ、高梨君の方に行って、私らはそっちを見るから」
高宮さんと北浦さんが前に出てきたのでアヤカがこちらに来る。
ちょっと狭いが、今はリクを探すのが優先だ。
「姉さん、オッケー」
「では、出発します」
リンダ姉さんは車を発進させ、左に曲がった。
しばらくは平たんの道を進んでいく。
「山と田んぼ……熊本を思い出すわね」
「そうだな。リンダ姉さん、自衛隊に見つかったらどうする? 逃げるか?」
「普通に人を探しているで良いんじゃないですか? エルヴィスさんは小さくなってくださいね。私も性感帯の角を隠しますので」
「あいよ」
一言、いらないんだよな……
しばらくは平たんな道を進んでいたが、山道に入った。
所々に集落があるが、人がいる気配はない。
「声でもかけてみるー? ヒナ」
「リクー」
「声、ちっさ」
北浦さんだもん。
まあ、俺達の中で声が大きい人間はいない。
「ユウ君、魔力を出しましょう。松永君ならわかるわ」
「わかった」
抑えていた魔力を解放する。
「おー! すげーマナだ!」
「ユウさんは本当にすごいですね……食べちゃいたい」
やめて。
そのまま魔力を出しながら進んでいくと、大きな山が見えてきた。
周囲も山であり、何もいないが、牧場っぽいのも見える。
「自然、たっぷりだな」
「熊とか出そう……松永君なら大丈夫だと思うけど」
リクはヒーラーだが、攻撃魔法もあるし、強化魔法も使える。
さすがに熊には負けないだろう。
「でも、やっぱり日が落ちたら動かないっしょ。街灯もないし、この辺は真っ暗になりそう」
「うん。そろそろいてもおかしくない」
その後もリクを探しながら進んでいくが、一向に見当たらない。
すると、今度は降りる坂になった。
そして、そのまま降りていくと、ちょっとした集落に入る。
「俺ならこの辺で一泊する」
「距離的にもそんな感じですね。止めます」
リンダ姉さんが車を止めたので皆で降りた。
周りにはそこそこの数の家が建っているが、人の気配はない。
「ユウ、声をかけてみ」
「リクー!」
やはり俺もそんなに声は大きくない。
「んー……人の気配がないわよね?」
「っぽいね」
気配察知が使えるアヤカと高宮さんが顔を見合わせた。
「もう出雲方面に行っているかもしれませんね」
「ああ。もし、見落としがあったとしても出雲市街の手前で張っておけばいいし、先に進んだらどうだ?」
確かにそうだな。
「出雲に行こう」
「わかりました。エルヴィスさん、ここから先は小さくなってください」
「あいよ」
エルヴィスが頷くと、あっという間に小さくなった。
「おー……小型ゴブリン」
「ちょっと可愛い」
北浦さんがそう言って、エルヴィスを摘まみ上げ、肩に乗せる。
「では、私も変身です。くるりんぱ!」
リンダ姉さんはくるっとその場で1回転すると、ヤギの角がなくなった。
角がなくなったリンダ姉さんは本当に人間のお姉さんにしか見えない。
ぽよよんとして、エロいけど。
「よし、行きましょう」
俺達は車に乗り込むと、出発した。
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