第064話 悪魔のお酒
その後も情報集めをしていったが、夕方になったので1階の定食屋で夕食を食べた。
そして、各自が風呂に入った後も俺達の部屋に集まり、情報集めをしていく。
「徳島を人間が取り戻したっていうのはマジだな。喜びの声が多い」
ようやく家に帰れたとかそういうのだ。
「私も調べた。救世主っていうワードが気になる」
北浦さんも徳島のことを調べていたようだ。
「救世主?」
「何それ?」
高宮さんとアヤカが首を傾げた。
「なんか徳島で悪魔相手に1人で戦った人がいるらしい。それが救世主」
長門の温泉でインプが言っていたやつか。
「クラスメイトだろうな」
「多分、そうでしょうね」
「ヒナ、その救世主を見た人は?」
高宮さんが聞く。
「いないっぽいね。ただ、徳島の悪魔大将を倒したんだって。今、どこにいるかは不明。正体不明のヒーローっぽくなっている」
人間側からしたらそうだろうな。
まさしくヒーローだ。
「ただの与太話と切り捨てることはできないな」
「四国に行くけど、どうかな……危なくない?」
アヤカが聞いてくる。
できたら避けたいが……
「いや、行こう」
「そうだよ。確認は大事。それにその救世主はいなくなったんでしょ? 悪魔を倒していなくなったってことは次は香川か岡山っしょ」
いや、思いっきりルート上だよ、高宮さん……
「うーん……やっぱり避けた方が……」
アヤカが困った顔になった。
「まあ、それは保留でリクと合流できてから考えようよ。状況はどんどん変わるもんだし」
良いことを言うな、北浦さん。
「そうだな。アヤカ、例のつぶやきで何か反応はあったか?」
「全然。そもそもPVが10くらいだし、フォロワーのゾンビからいいねが1つ」
少ないな。
いや、こっちに戻ってきてから作ったアカウントだし、そんなものか。
検索で引っかかれば良いのだからバズる必要はないんだ。
というか、ゾンビのフォロワーがいるんだ……
「DMは解放しておけよ」
「それはしてる。変なのが来ないといいけど」
「フォロワーのゾンビってどんなのだ?」
ちょっと気になる。
「兵庫の女の子のゾンビ。なんかすごいフォロワー数がいる」
インフルエンサーゾンビか?
「ちょっと見せてくれ」
「これ」
アヤカがスマホを見せてくれる。
なんか10代くらいの青白い女子がパーリーピーポーな感じのポーズを取っていた。
「へー……なんでアヤカをフォローしてるんだ?」
「さあ? フォロワー数も多いけど、フォロー数も多いからそういう人なんじゃない?」
まあ、クラスメイトとかと関係なさそうだからいいけど。
「アカウント名が高高同盟になってるのは?」
なんで俺と高宮さん?
「さっきまでは適当な数字の羅列だったけど、私達しか知らないワードに変えた」
あ、そう。
高梨アヤカになったから高高同盟の意味合いが変わってるけどな。
俺達はその後もSNSで情報を探っていくと、22時を回ったところでノックの音が部屋に響いた。
『帰りましたよー。ラブってなかったら開けてくださーい』
リンダ姉さんだ。
ラブってないのですぐに立ち上がると、扉を開け、リンダ姉さんとエルヴィスを中に入れる。
「待たせたな」
「いやー、飲みましたよー。身体が火照っています」
そうですか……
「エルヴィス、下ネタ姉さん、お疲れ様。座りなよ」
高宮さんと北浦さんが立ち上がり、ベッドの方に腰かけると、代わりにエルヴィスと下ネタ姉さんがテーブルについた。
「はい、お水」
優しいウチの嫁さんが2人に水を渡す。
「わりーな」
「ありがとうございます。浜田は人が少ないと思っていましたが、結構、いましたよ。どうやら漁業が盛んのようですね。おかげで飲み屋街が賑わっていましたよ」
悪魔がいないと思ったが、漁に出てたのか。
「それで情報は?」
アヤカが俺の隣に腰かけ、2人に聞く。
「エルヴィスさんからどうぞ」
「そうだな。リクの情報を掴めた」
マジか。
「目撃者がいたの?」
「目撃者どころか今日の朝にリクを出雲の近くまで送ったゴブリンがいた。マナをくれたから連れていったんだとよ」
ピンポイント情報だ。
「じゃあ、松永君は出雲で間違いないわね」
「ああ。近くまで連れていった後は歩いていくって言ってたんだと」
出雲か……
「どうします? 今から追いますか?」
リンダ姉さんが聞いてくる。
「いや、飲んでるじゃん」
「これくらいなら大丈夫ですよ」
いやいや。
「明日にしよう」
「そうね」
「姉さん、飲酒運転はダメ」
「死にたくない」
うんうん。
「そうですか。では、明日の朝一にしましょう」
そうしてくれ。
「リンダさんの情報は?」
アヤカが聞く。
「島根のことを聞いてきました。やはりここは人間と悪魔の争いがないようですね。出雲には簡単に侵入できそうです。その辺のルートも確認してきました」
それは朗報。
俺達が簡単に忍び込めることもだが、リクが自衛隊に捕まるということもない。
「明日は早めに出よう。できたらリクが市街地に入る前に追いつきたい」
人の多い市街地だと探すのが大変だ。
「わかりました。それでは明日は6時には出発しましょう」
6時か……
「わかった」
俺達は頷くと、解散となり、皆が部屋から出ていった。
「合流できそうね」
「ああ。まだ安心はできないが、ちょっとほっとした」
「ええ。明日よ。今日はもう寝ましょう」
そうするか。
俺達はベッドに入ると、電気を消す。
ただ、目を閉じたのだが、あまり眠れそうにないなって思った。
「ユウ君、大丈夫?」
「大丈夫。あまり眠気が来ないけど、そのうち眠れると思う」
「いっそお酒でも飲む?」
んー……
「ちょっとコンビニに行ってくる。1杯くらい飲めば良い感じに眠れるかもしれないし。アヤカは寝てていいぞ」
「いや、私も付き合うわよ」
アヤカが電気をつけ、起き上がったので俺も起き上がる。
そして、上着を羽織り、部屋を出ると、エレベーターで1階に下りた。
「んー? お客さん、どうしたんだ?」
受付にいるコボルトが聞いてくる。
「ちょっと酒を買いに行こうかと思って」
「あー、酒ね。売ってるぞ。何が良い? ビールか?」
受付で売っているらしい。
そういうものなのだろうか?
「飲みやすい酎ハイとかない? ビールは苦い」
「ちょっと待ってろ」
コボルトが奥のスペースに入っていったので待つ。
しばらく待っていると、コボルトがラベルのない瓶とコップ、それに氷が入ったボックスを持ってきた。
「酎ハイ?」
てっきり缶酎ハイが出てくるかと思った。
「隣の店のやつだよ。美味いんだぞ」
へー……
「じゃあ、もらう」
コボルトにマナを払うと、酒セットを受け取り、部屋に戻った。
そして、テーブルに置き、アヤカとベッドに腰かけると、乾杯をする。
「心高校生だから悪い気持ちになるわね」
「ちょっとな」
俺達は一口飲む。
すると、柑橘系で飲みやすく、酒独特の臭みもなかった。
「あ、美味しい」
「ホントだな。異世界で飲んだ酒は変な味がしたけど、こっちの酒は洗練されているのかもな」
ジュースと変わらん。
俺達はその後も話をしながら飲んでいく。
ただ、リンダ姉さんじゃないが、ちょっと火照ってきた。
「アルコールはアルコールね」
「そうだな。これなら眠れそう」
リクが心配なのは変わらないが、なんか良い感じに酔ってきた。
「なら良かったわ。ユウ君、そわそわしてる感じがしたもの」
「悪いな」
「仕方がないわよ。それに松永君が心配なのは私達も同じ」
仲間だもんな。
「アヤカと一緒で本当に良かったよ」
「そう?」
「一緒にいるだけで心が落ち着くんだ」
「ユウ君、私のことが好きねー……はい、手を繋いであげる」
アヤカが手を握ってきた。
「どぎまぎする」
「はいはい」
アヤカが酒を注いでくれたので注ぎ返し、2人でぐいーっと飲む。
「美味しいなー」
「なんだか楽しくなってきたわね」
俺は心も体もふわふわする。
ただ、何だろう?
自分が自分じゃない感覚になってきた。
「あとちょっと飲んだら寝よう」
「そうね」
俺達はその後も瓶に入っている酒がなくなるまで飲んでいった。
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